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02:高校までの道

よろしくです

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 朝食の片付けもほどほどに済ませた私は、自室に戻ってきた。

 さて、制服を着ようかな。ところで、私の通う高校の制服は男子は学ラン、女子はセーラー服を着ている。私は中学がブレザーだったので、学ランは新鮮な気持ちになる。……ちなみに、セーラー服は悲惨な気持ちになるだけだった。(ことわ)っておくけど女装趣味はない。姉さんに、一日八個限定のケーキをやるからと言われて着せられたのだ。今でも後悔している……。

 ちなみに姉さん(いわく)く、悪くはないが悪そうに見える、らしい。しらんがな。


 嫌なことを思い出した……。さて! 無駄な事を考えているうちに学ランに着替えることができた。新しい制服を着ると、今日から高校生なんだという実感が湧いて、柄にもなくテンションが上がってくる。

 さてと、そろそろ出ようかな。ちなみに姉さんは剣道部の朝練だとかで「なにも入学式の日までやらんでも……」と、愛用の竹刀を(かつ)いで家を出て行った。

 今日必要な、新入生用の宿題と筆記用具を通学用カバンに入れる。上履きを袋にいれて必要な物は揃った。あとは個人的に必要な携帯電話やメモ帳。

 それと……ボイスレコーダーと痴漢撃退用スタンガン……。……ち、ちがうよ!? 悪いことするわけじゃないよ! ただ、私を悪人だと思い込んだアホどもの牽制(けんせい)のために今では必須になりつつあるだけだよ! 我ながら悪循環だと思うけど、一番手っ取り早いんだよなぁ。問題を起こされても相手に非がある証拠にもなるし……。それにどっちにしろ勘違いされるなら、という開き直りの気持ちもある。



 さて、出発だ。戸締りをして玄関先に止めてあるロードバイクに(またが)る。父さんが出張で使えないからと、私にくれたものだ。

 時間もあるし、ゆっくり行こうかな。


 ところで、私が今日から通うことになる私立福余(しりつふくよ)高校は、我が家から自転車で八分。姉さんも私も、家が近いことと、私立にしては学費が安いことで入学を決めた。なんでも、金持ち達が将来自分達の会社に就職する人材を育てようと、金を出し合ってつくった高校だそうだ。それほど学力が高いということはないが、入学試験に試験官との雑談という変わったものがある。これは、受験生の人柄をみて合否を判断するという目的があるとか。

 実は私はこの試験で落とされるのではないかと危惧していたのだが、試験官の小太りのおじさんとの雑談 (本当に雑談だった)で、表情が変わらない事を説明できた。小太りのおじさんはなんだか大雑把(おおざっぱ)な人だったけど、とても話しやすくていい人だった。ありがとうございます。


 駅が近付くにつれて人通りが多くなる。

 私が学校に向かう途中にある駅からだと、歩いても高校まで5分程度だし、駅の周辺には大きな商店街もある。福余(ふくよ)高校の立地の優秀さを改めて感じた。

 駅からは、学ランやセーラー服を着て歩く学生がたくさん目に付くようになる。型の崩れていない制服を着て、そわそわしているのは、おそらく新入生だろう。各学年5クラスだから、彼らの5人に一人はクラスメイトになる計算である。などと、同級生らしき人を眺めつつ信号待ちをしていると、黒髪が少し跳ねた男子と目が合った。気まずかったので思わずニコッと微笑みかける。つまり、いつも通りの顔です。

 すると、彼はあからさまに目を逸らして、「やばいよ……なんだあの悪そうな人……」と呟いた。おそらく彼は嘘がつけないタイプの人間なのだろうな…… (泣)


 信号が青になったので、私はそこから逃げるようにペダルを()いだ。



 学校が目前になると、道は緩やかな登り坂になる。道の両側は竹林へと変わり、さっきまでそれなりの街にいたのが嘘のような清々(すがすが)しさを感じる。なんだか(さわ)やかな気持ちになってきた……。

 ん? 校門の横に人が、いや、"(おとこ)"が立ってる……。2メートルもありそうな体躯に、色黒の肌、角刈りで暑苦しく笑う、まさに体育教師……。彼は二カッと笑うと、「おはよう!」と、肺に響く声で言った。


 私は「お、おはようございます……」と、返事をするのが精一杯だったし、私の中にあった爽やかな空気は綺麗さっぱり吹き飛んでしまった。 くそぅ……



 

 

 

次は今週中に。

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