01:入学式の朝
初心者です。軽い気持ちで見てください。
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朝だ、朝ということは起きなければならないということだ。
春の朝は肌寒く、布団から出たくなくなるのも仕方ないと思う。
しかし、 世間には寝起きのいい人もいるらしいが、私はそんなことは全くない。
寝起きのいい人はひょっとして、今日も頑張ろうとか思うのだろうか? 謎だ。
あぁ、ナマケモノになりたい。……そういえば、今日は入学式だったっけ……。
それに、母さんたちは出張だから朝食も作らなきゃいけないしなぁ……。
よし、起きるか……ひっ、さむ。
やっぱり、運動しただけで死んでしまうナマケモノにはなりたくない。
とりあえず顔でも洗って目を覚まさそうかなぁ。
隣の部屋の姉さんはまだ寝てるようだ。料理は私の担当とはいえ、私だけ早く起きなければならないのはなんだかなぁと思う。まぁ料理は好きだし、いいんだけどさ。
二階の部屋から一階の洗面台に行って顔を洗う。サッパリと目が覚めた。
うん、朝に顔を洗うと感じる爽快感は格別だ……。この水の冷たさは素晴らしい。 寝ぼけた私を冷静にそれでいて、優しく起こしてくれる (気がする)……。理想の相手はこんなところにいたのか! 付き合ってくれ水道水娘!
…… ごめんなさい。あなたの気持ちには応えられないわ……。だってあなたが意識してくれるのは朝一番のわたしだけじゃない……。
そ、そんな! って、馬鹿な事してないで朝食を作らなきゃ……。
ふと鏡をみると、そこには胡散臭い笑みを浮かべた悪役風の優男が。
何を隠そう私の事である。いや、全然隠れてないけどね……いつも目立ちまくってるけどね。もっといえば変に隠れたら悪事を疑われるレベルだし……。
ともかく、私こと一紙 氷野は鈍色のストレートヘアーで、気味悪く微笑み、目つきは細められている、という明らかに悪役風の男なのだ。
表情を変えればいい、と思うかもしれない。実は……できないんだ。
事の始まりは小学2年の頃。まだ親父ギャグで笑えていた頃の私は、ある言葉に影響された、それは『君が笑顔になれば皆幸せ』みたいな内容だったと思う。確かに人が笑っていると僕も楽しくなるよなぁ、なんて思った昔の私。いつも笑顔でいればいつも幸せ、と思った私はその日からいつも笑顔でいようと頑張った。毎日無邪気な笑顔でニコニコしてた。実際、私の周囲は明るくなったので嬉しかった。そのうち他の表情になりにくくなっていたけどあまり困る事もないので、まあいいやとか考えていた。
成長し顔から子供っぽさが抜けるにつれ段々、漫画に出てきた悪い事を企んでそうな悪役みたいな表情になっていった。心配した姉さんが普通の表情できる?と言った頃にはもう他の表情にはできなくなっていたし、人も私に関わろうとはしてこなくなっていた。そんなだったから、中学では本が友達だった。まぁいいかと開き直って、姉さんと悪役ごっこをして遊んだりしたが。
そういったわけで中学時代、恐れられてた私は表情がアレなだけである。
高校でまずは一人友達をつくってみせるという決意を胸に、朝食を作りに台所へ向かう。
朝食の食パンを焼いて、サラダやベーコン、コーンスープを机に並べていると、二階から姉さんが長い髪に寝グセをつけて眠そうに降りてきた。
「おはよー氷野。ふぁあ……」
「おはよう姉さん。顔洗ってきなよ」
「うん……そーだね。ちょっと冷たいけど行ってくるよ」
姉さんは私よりさらに朝が弱い。
普段は頼りになる人だけど頭が冴えるまでは、かわいいと思う。
ずっとこんなだったら、シスコンになってたかもしれない……。
あ、サッパリして戻ってきた。
「さて、朝食をいただこうかな。どうした氷野?」
「いや、何でもないよ。食べよっか」
『いただきます』
ぱくぱく、 もぐもぐ。
「ところで氷野」
「ん? どうかした姉さん? 」
「今日からお前も高校生だったよな」
「うん、そうだね。姉さんの後輩にもなるし、よろしく」
姉さんは私の一つ上の二年生だ。
そういえば姉さんは中学のとき、弟である私の抑止力 (ということ)になって英雄視されてたなぁ。姉さんが卒業してからのみんなの怯え様には泣きたくなる。ちなみに中学では何一つ悪いことはしていません。
「あぁ……しっかし、私は氷野に友達が出来るか心配だよ」
「中学では一人もできなかったしなぁ……」
「うーん、むしろ元はいいからこそ余計にその表情がそれっぽいのかもな」
「"ぽい"って、どう"ぽい"のさ?」
「……聞きたいの?」
「やめとくよ……」
「あえて言うなら、氷野の一人称が私なのもそれっぽいんだよ?」
「父さんの真似なんだけどねぇ……」
「父さんはサラリーマンぽいから普通に見えるんだよ」
「まぁ、ともかく一人くらい友達が欲しいな……」
その後、今日の事をぐだぐだと話しながら朝食を済ませた。
読んでくれて、ありがとうございます。