始まりは小さなギルドから
日付は変わり現在は明け方、偵察の依頼の準備はあらかた完了しており残るは移動手段用の馬と、我らが団長ミユのみである。
「絶対寝坊だぜこりゃ」
ソウマはヤレヤレといった感じでため息を吐きながら、本当に団長の自覚あるのかと呟く。前日に遅刻厳禁と発表したのは団長であるミユ自身だっただけにこの反応は当たり前である。
「ごめんごめーん!依頼された馬お届けにあがりましたー!」
元気な声と共に人数分の馬を引き連れて現れたのはシェリーであった、良い馬選ぶのに時間かかっちゃってさ今回はサービスさせてもらうよと時間に遅れたことに申し訳なさそうにするシェリー
「いや気にするな、まだ出立の時間が来ているわけではない」
珍しくルウシスが口を開き今現在の状況をシェリーに簡単に説明する、それを聞いたシェリーはなんとなくそんな感じはしていたと団長であるミユのだらし無さを再確認した。
「でもルウシスはミユを怒らないよね」
長身であるルウシスを見上げるようにレーンは普段から思っていた疑問を投げかける、しかしその疑問はごもっともで普段ルウシスがミユに対して叱るという行為をしているのを見たことがないというのが事実だ。
「…気のせいだ」
「でも確かにそうですよね?ミユさんに対して少し私たちとは違う感じがします」
姉であるカンナも普段から思っていたようでレーンの疑問に乗っかり、適当な返答では終われないような雰囲気を醸し出し始める
「あれ?みんな早いじゃんおはよー」
その声にルウシス以外が振り向きやっとおでましかと全員が声の主であるミユに冷ややかな視線を送る、当然の結果だ。
「まっ、まぁ私以外全員遅刻はないみたいだしよかったよかった」
はははと申し訳なさそうに笑い全員の顔を見渡してから小さくすいませんとあやまり、シェリーに移動用の馬の料金を支払う。
「よしじゃあ昨日の打ち合わせ通りにこれから事を運んでいくよ、くれぐれも獣人に危害を加えることはしないことこれだけは絶対に守るように…さてでは森に向けて出立!」
そう言って全員は馬にまたがり、ゆっくりと薄暗い街から動き始める
「はぁー、朝早くから人使いが荒いんだからやんなっちゃうよ」
ちょっと寝坊しちゃったのバレてなかったしいっか、シェリーは寝坊して整える暇のなかったボサボサの髪を見ながら、これから結婚する予定である未来の旦那にだらしない姿を見られたことに少し落ち込みを感じ、眠いまぶたを擦りながら家に向かって歩き始めた…