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「代人人」

人は生きなければならない

物を食べ

又寝

そして仕事をしなければいけない

しかしそれをしなかった時代がある

いやしなかったのではなく

それがある程度許された時代

それを江戸時代と呼ぶ


「先生仕事をお願いします」

寂れたガラクタが置き放題の路地裏からそんな声が聞こえる

その枯れた植木やら、使い物にならないそれこそ元が何か分からないもの

そんな物が路地に連なるが

そこは人知れず

誰も行きたがらない

いわゆる貧乏長屋と言うもので

その一角に果たして先生なんていい物が居るのか

はたはた怪しいのであるが

しかし、たしかにそんな声がする


その長屋の一番奥

清らかな風も、ここまでくる間にどこかどんよりとなまあたたかく

さらにはその声がする場所に来たときにはもはやなにか、わから無いものとなっている

正直ここまで来ると

こんな場所にそんな先生なんて呼ばれる人間居ないんじゃないかと思うが

しかし確かに聞こえる

「先生ここは一つ」

もしかしたら暇人の遊びかもしれない

どこまで貧乏でも、人に見下げられるなんて言うのは良いものではない

そこでここは一つ先生なんて言い合って

歩いている奴を驚かすとは言わなくても

「ふーーん、こんなとこに先生なんて言う人が居るのかい」

みたいなことを思わそうとしている

私はそう睨んだ

「先生」

「・・お前はもう帰りなさい」

「そうなこと言われましても・・・小僧の使いではないんですから」

「お前いくつになった」

「へえ、今年三十六になります」

「・・・本当かい、えらく老けたねー・・・・私は又番頭が来たのかと」

「・・・手前も今年から番頭です」

「・・・そうかい・・へえ・・・世も末だ」

「そんな酷いことを言わずに・・・どうですここは私が番頭になった祝いに一つ」

「・・・・馬鹿言っちゃいけないよ、何で番頭の祝いに書かなきゃいけないんだ、だいたい私は暖簾分け一つでも書かない・・お前は昔から知っているだろ、私が気分が乗らないと書かない人間だって」

「・・・・そうですがそこを・・」

番頭に今年なったという男の声は

どこかしわがれた、四十近くの老けた声に思われ

その丁寧ながらもどこか親しい間柄なのか

崩れた声が印象的だ

たぶん店なんかでは絶対こんなことは言わないだろう

対するもう1人は

ひょっとすると女何じゃあないかと思うような細く

そして又透き通ったいい声で

ひょっとしなくてもそれを聞いているだけで寒くなってくるような

涼しげである声である

これが男だと分かるのは

わずかではあるが低音が絡み

やはりその所々に男の声がでる

そんな物に加えて仕草の音が男なのである

「・・・・・そこをどうか」

「・・・・・・・・・・けえんねえ」

良く分からないのが、この先生と呼ばれている人は

どうやら書き物の先生のようだが

果たしてそれは、絵の先生なのか、文字の先生なのか、はたまたまだ知らない書き物なのか・・・どちらにしてもさらにおかしなところは

どこか上品だなーと思う反面ふとすると、庶民言葉が出たりする

果たしてどういう経緯でこういうことになったのかは知らないが

元は良いとこの生まれで分け合ってこんな長屋にいるのかもしれないが

しかし先生と呼ばれながらにこんなとこにいることを考えたとき

よほどの変人か、訳あり人のようなきもしないではない

しかしこんなとこに好き好んでいるとしたら変人に違いはない


「ところで最近、鬼切りという物がはやっているとか」

「・・・・・」

「先生の好きそうな内容ではないですか」

「・・・・・」

「どうですこれを一つネタに」

「・・・・おまえ確信犯だな」

「先生にそう言われると面目ない」

「なにが面目ないだこの馬鹿野郎・・本当におまえは隙がない」

「またまた」

「・・・・・」

「では書いていただけると」

「・・ああ・・・」

「そうですか、では今日からわたくしめが、頼りないにしてもお供して夜の町に・・」

「・・」

「何です・・話をとぎって・・」

「そこで立ち聞きしている奴・・・そうお前だ・・そこで聞くなら中に入りなさい」

「・・・・・居るんですか誰か」

僕は実に居心地が悪い

果たして本当にばれたというのか

こう見えてもそれなりに人に気づかれないように

気配を消すことは出来ると自負している

しかしそれを見破るとなると

果たしてこの先生なる人物は

ただの書き物師ではないのかもしれない

もしかすると密偵のような

そしてこの会話も、暗号だらけの

「いつまでそこにいる」

いよいよ不味くなってきた

(逃げるか)

そんなことが頭をよぎるが

なぜか僕の足は一歩また一歩とその汚らしい障子戸に向かってしまう

どうしてなのかと僕は考えたが

やはりそのへんてこりんな会話の内容が気になったのかもしれない

今にして思えば


僕は緊張で良く動かない手でその障子戸を開ける

「・・・まだ若いな・・・・しの・・いや、泥棒か・・そうなると根号とこのガキか」

そのとき僕はその男がなにを言ったのか分からなかったが

すぐにその言葉が信じられなかった

それは理解した後にいやそんなことはと思ってしまうのだ

「・・・根号さんのお知り合いですか」

(根号とは、ここいらの泥棒の元締めで、いわゆるお頭とか親分という感じの人間だ)しかし、しかしだ、少なくとも堅気の人間がその名前を知っているとは思えない・・となるとこの男も

そこで僕は改めて男をみたが

しかし今まで緊張からそれを見ていなかったせいで驚く

なかなかの美貌だった

男にそんなことを言うのはどうかと思うのだが

その着流しを軽く肩に引っかけるように着て

その色も薄い青と渋い灰色が混ざった

一見ボロい様に思える代物だが

この男が着るとどこか威圧的である

しかし顔に傷があるわけでも

又、体がすごい盛り上がっているような人間でもない

まず顔からなのだが

その狐のような・・見たことはないが・・いやその見たと言っても実際の狐の目は細くはないと言う意味でだが

その男の目は切れ長で

一見すると猫が目を細めたような気がするが

しかし、それは狐なのだ

その異様にでかい

まるで鶴がそこに座っているような細さ

そして大きさがある

あると言っても高さだけで横にはあまりない

また言ってしまえば夜になびく柳に思える

そんな男がこちらを見た

(魔の物)

僕はそんな言葉が浮かんだ

顔の割に大きな体

それがこちらを見て

「お前話を聞いたのだから覚悟は出来てるね」

と言ってきた

さっき聞いた声だ

その寒いくらい涼しげな声が僕の胸を通る

「・・・・」

僕は男を見ることしかできない

「おい坊主答えたらどうだ」

別段坊主というとしでもないが・・その番頭という男が言った

その先生と比べるといよいよその差が分かるが

この番頭異様に小さい

まるで赤子が大人の皮を被るか、または

豆の妖怪にも思える

・・・・・

「何をする」

ことによっては僕は後ろにすぐに逃げる気でいたが

しかし親方のことを知っているとなるとそう言うことは出来ないかもしれない

もし親方が自分を破門すれば

それはここで食っていけないことになる

一回二回の盗みなら何とかなるが

暮らしていくとなるとどこかに属さなければ生きてはいけない

余程腕が利く人間ほどそう言う組にはいっていたりする

・・・・

「いやただ情報を集めるだけだ」

「・・情報・・・そんな物盗んでどうするんだ」

今は戦国の時代じゃない

だからそれほど重要な情報を買う人間があるとは思えない

「・・・・盗むのではない聞きに行くのだ」

「・・・すいませんがあなたは誰なのですか」

「・・・私か、私は雨簾 柳男だ」

「あますだれ、やなお・・・ところで師匠とお知り合いと言うには」

「・・・ああ、根号君のことか、彼は昔私が京都から拾って芸を教えたのだよ」

「・・・・・」

根号

それは泥棒の中の泥棒と言っても如何せん仕様がないくらいの手足れだ

盗ませればまるでテズマのように何でも盗み

ことあるごとに戦いになる役人との戦いも

ヘタレに変わって立ち向かう

そんな人間だ

その師匠に師匠がいたとは

「・・それは・・失礼しました・・僕は稲妻の幸着と言います・・以後」

「ああ・・いいいいそう言う堅苦しいの、とにかく今日来てくれるか」

「行かなくては、いけないのでしょうか」

「・・・・もし出来ないなら」

そのとき男は脇にいた番頭に顎でしゃくった

それと同時のいつの間にか僕の横に番頭がいた

その脂ぎるような濃い顔が間近で僕を見上げ

「動くな・・」

と言う

しかし問題はその男が自分の身長より長い刀で僕の原にそのはを押し当てているある

こんな間近からやるなら首かどこかをねらった方が

服の上からねらうよりも確かだとは思うが

よほどの自信なのか

・・・しかし問題は僕としてもその男に一部の隙も見いだせず

ただただ暗い光景が見える

それがしという色だと気がついたとき

いつの間にか男は居なくて

それで安心してしまった僕はしりもちをついた

「・・・・今日夜の鼠の刻だ」

「・・・先生それではまた夜」

「ああ・・行きたくないなー」

「・・ではよろしく」

男はそう言って何処かに行ってしまう

かく言うその雨だれとかいうおとこは

身支度を始めていた

「・・・・お前もう帰れ」

「・・・・・ここによるで良いんだな」

「・・別段口の効き方どうこう言うつもりはないが

この年でためぐちはないだろ・・少しショックだぞ」

「・・・・・・失礼」

「ただ、ここじゃない欄干橋に集合だ・・遅れるなよ・・鼠の刻だからな」

男はそう言うと障子に手をかけたそのときだった

「・・・」

男が障子に手をかけるかかけないかのその瞬間

勝手に障子が開く

「・・・あら、柳さん・・こんなところで何やってんだい」

「いやそれはどうも・・・ではさいなら・・」

「ちょっとお待ちよ」

「・・・」

男は見事にその女将さん風の女に袖をひっつかまれてうごけていない

「・・・・・・・」

「・・・・そろそろ放してくれないかい」

「・・・あんたって人は、今日という今日は」

「・・ああ・・分かった・・分かったか・・・しかしなんだ

きみは客人を待たして何をしているんだい

「・・客人・・・こんな長屋に・・・誰だい」

その女は僕の存在に今頃気がついたようだ

「私はたまたまここに通りかかったのだが

それが君のいないるすに彼がここで立ち往生

このまま待たせるのもいけないだろうと

今まで君の代わりにばんをしていたのだよ」

「・・あら・・そう・・ところでどちら様」

「では君も来たところだ僕はこれで」

「ちょっとお待ち」

男はその女が袖を放した隙をついて逃げようとする

その早さはこの前見た打ち上げはなびよりも速いように思われ

僕としてはこの隙にと二人がでた隙にその戸に走って外に出たのである


夜、鼠の刻

僕はあのへんてこな人間が居た場所から何とか逃げ出すと

自分の親方の家に向かった

その家はどこにでもあるような長屋で

一見するとどこにでも居そうな人間が住んでいそうだが

まさしく住んでいた

ここの住人にして一家の主

根号さんは、それこそ大工の棟梁のようながたいの良い体をしているが

しかし、師匠は豆腐屋の亭主でもある

どちらが本業かと聞いたら

豆腐屋が遊びで、泥棒が本業だという

本末転倒な答えをしたが

事実実に豆腐を作る師匠の顔は楽しそうではある

「・・・師匠」

ここでは僕が昼間に来たときはここの弟子と言うことになってる

なってはいるが苦汁をどう使うのかもわからない

「なんだ最近来ないと思ったら」

どうやらお昼時もあってか師匠は畳に座って煙草をふかしている

「実は、柳男という人にあったんですが」

「・・・・・先生に会ったのか」

「・・やはり本当でしたか」

「良く生きていたな」

「それほど怖い人なのですか」

「・・・怖いというか危ない」

「・・・危ない」

「ああ、あの人は事実何かやっているのをほとんどみない

見ないがあの人はやっかいだ」

「言っている意味が」

「世の中で一番やっかいな人間はないか分かるか」

「・・・同心でしょうか」

「・・・うむ、童心か、それもいちりあるが違う

ようは無心・・悪く言えば無自覚」

「師匠、同心のどこが無自覚なのですか・・あれは何時に姑息に我々を」

「・・・ん・・ああそう言うことか、なら違う、俺の言ったことは

子供心と書いて「童心」だ、お前の言う役人とは違う

とにかくあの人とは二度とか変わらない方が良い」

「・・それが」

「・・・・何かあったのか」

「実は情報集めを」

「・・遺書を書け・・いちお預かっておいてやる」

「そんな大変なことなのですか」

「・・ああ、十中八九死んだと思った方がいいだろう」

「・・・・・」

「おいなくことはないだろう・・・死ぬのが分からないより知っていた方が良い」

「慰めですか」

「いや見物だ」

「・・・」

「しかし何が起こるというのですか」

「そんなこと知らん」

「ならなぜ死ぬと」

「あの人の周りには不幸が渦巻いている」

「・・不幸」

「そうだ、しかもやっかいなことにあの人はその不幸を飯に

人を食うようなおひとでな・・さらに逃げ足だけは速い」

「・・・・格好悪いですね」

「・・・うむ・・まあ逃げるだけで済む相手しかいないというのが現状かもしれんがな」

「強いんですか」

「そりゃあもお・・・俺が百人居ても勝てるかどうか」

「・・・そんなに」

師匠は嘘を言うような人間ではあるが

このときばかりは言うような雰囲気ではない

少なくともそう思える

なぜならその目に力が無く

さらには頬を汗が伝っていた

「まあとにかく最小限には手伝ってやるが・・後は勝手にしに晒せ」

「・・・はあ・・それはどうも」

「気にするな」

「・・してません」

かくして頼りにならない師匠を後に

僕は今度こそ自分の家に向かうべく

早めに風呂に入ろうと風呂屋に向かってた

どうせ帰るならひとっぷろ浴びておいた方が良い

もし死ぬなんてことが万が一にでもあるようなら

綺麗なことに越したことはない

少なくとも盗人だから汚いなんて言うのはあまりそう言うことも思わない

僕でも少し思うことがある

「それでは行きますか」

僕はルンルン気分とはいえないのが何んとも惜しいが

それでも風呂屋の暖簾をくぐって中に入る

中にはいると番台があり

そこに金を払いさらに中にはいると

手早く着物を脱いで

風呂場に向かう

中は時間時のせいか人が多く

みなしごと終わりの連中のようである

(はあ、この風呂とも今日でおしまいか)

そんなことが心を過ぎる

・・・・・・嫌だなー

もしも武家屋敷にはいろうものなら

それこそ否応無くこの師匠のふざけた言動とも思える物が現実味を帯び始める

・・・・・・

少し長湯をしてしまったらしく

大分ふらつきながら僕は外に出た

あたりは皆夕飯に向けて露天を見回るかみさん連中や

小さいガキを連れた子供連中が走り回っている

こんな光景を見るとまるで自分だけ別の次元を生きているようで切なくなるが

こういう生き方に誇りさえなけれど

しかし後悔はしていない

しかしどうも寂しく思うことはある

自分の同期の半分くらいは

足を洗うかもしくは捕まって死んでしまった

十両盗めば首が飛ぶ

これはがきでも知っていることだ

どうもこの仕事というのは腕が言うことを言う

それがない奴は否応無く食って行くことは無理だ

そして問題なのは、ふつうに仕事が出来ないからこの職業に就いているわけで

これがだめだという人間は実に危ない

無理なのに

それでも無理矢理泥棒に入り・・・

僕はぽっかりと浮かぶ雲を空を見て眺める

それがどういうことと言うこともないのだが

しかしどうもこんなことをしているときが一番生物なんだなー

と、その大きさと自然にそんなことを思うのだ



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