story2.
『仁奈、起きて。仁奈』
聞いたことのない優しい男の子の声が頭の中に響いてきた。仁奈はゆっくりと目を開けると真っ白い部屋に赤い豪華な椅子が置いてあった。仁奈は呼びかけた声の主がいないことに気がつき周りをきょろきょろと見渡した。
『ここだよ。』
声のする方を見るとさっきまで誰も座っていなかった椅子に、小学三年生くらいの男の子が座っていた。男の子は椅子から飛び降りてゆっくりと仁奈のところへ歩み寄ってきた。
「君は?」
『僕?僕は…なんていうんだろう。ちょっと頭のいい小学生…かな』
仁奈は男の子の行っていることが全く理解できずただただ首をかしげた。男の子はくすくすと笑ってくるくると回った。
仁奈が立ち上がろうと足に力をいると、床に固定されている手錠の鎖によってもう一度床に勢いよく転んでしまった。男の子ははっとして仁奈の腕に手を駆け息を吹きかけると鎖が軽く取れてしまった。
「…?ね、ねぇ…ここどこ?あたしなんでこんなところにいるの?」
男の子はすこしにがそうな顔をして視線を落とし、言葉を話し始めた。
『ここは…閉鎖空間だよ。ここには僕しかいない。……仁奈は……ホームから落とされて…死んじゃったんだ』
「へ?」
仁奈は唐突に変なことを言われ間抜けな声で首をかしげた。
『あわわっ!でも大丈夫だよ!これは必然なんだ、君の人生の。エラーじゃない。君はチャンスを与えられる』
「…チャンス?」
男の子はまっすぐな綺麗な瞳を仁奈に向け頷いた。
『そう。君は選ばれた』
「なにに?」
『それは今から教えるよ。…仁奈、目をつぶって』
仁奈は男の子に言われたとおりゆっくりと目を閉じた。目を閉じると男の子は仁奈の閉じた目の上に手をかざしてその手からは青い光が発せられた。
『有栖院仁奈…そなたに名を授けよう。…そうだね…有栖院だから、インド語でアーデルハイト…そなたの名はニーナ・アーデルハイトだ。
いい?仁奈。君はこれからある世界を旅をして変えていくんだ。大丈夫。君のことを支えてくれる人がきっとたくさん現れるよ」
男の子はそっと手を話して仁奈の背中に手を置いて押し出そうとした。
『あーん?まだやってるのかァ、ミロク!YOUがこの世界の王になる!ってことでぇぇいってらァ!!』
「えっ?…わわわわわ!!!」
仁奈が目を開けると同時に男の子じゃない別な男に背中を蹴られ、大空へ落とされた。悲鳴をあげながら落ちていく仁奈は空中で平泳ぎやら何やらをしながら真っ逆さまに落ちてく。
『あっ、言い忘れてたけどォ、ニーナちゃんの記憶は帰ってくるまで消しとくぜ!
……いきましょう。ミロク様。』
男はミロクと呼ばれる男の子に跪いて手を差し出し、ミロクは仁奈を心配しながらも彼の手を持ち小さく「がんばれ、仁奈」とつぶやき部屋へと消えていった。
「なにそれぇぇぇぇぇえぇえええええ」
次話から仁奈はニーナに変わります。