解明
転位エフェクトが消失し始め、大広間に来る前の管理者エリアへと移動した俺は、先程質問があったヒットポイントがゼロになったらどうなるのかという調査を早速開始した。
「エル、早速で悪いのだが…」
「はい、HPがゼロになった場合の二つの世界への影響ですね。今から調査を開始しますので、レイクさんは外部と連絡をとり、他の問題の件に関しても調査をお願いします。」
「あぁ、そのつもりだ。」
そこで、エルとの通信が切れた。どうやら、彼女も調査に取り掛かったようだ。というか…
「プログラムだよな…、どうやって調査するつもりだ?」
俺は、首を傾げ彼女に言われた通り外部と連絡をし、先程の説明を外部にいる者たちがどのように捉えたかも確認するつもりでいた。
「それは、もう大反感でしたよ…。」
「やはりな。それで?あれから、何か解明したことはありましたか?」
「いや、外からゲームを監視しただけでは内部状況までは解析できない。どうやら、バグといってもプログラム上のただのバグではないようなんだ。」
「プログラム上で起きた問題なのに、プログラムでは何も進展できない…か。」
「やはり、そちらの方でバグの解決法を探ってもらわなければいけないようです。」
「ま~た、めんどくさいことになったもんだ。こちらも先程の説明の時言ったと思うのですが、プレイヤーの中から勇士を募って敵モンスターへの対抗やダンジョンの攻略などを手伝ってもらうつもりです。また、プレイヤーに解決できないことに関しては私が直接介入するつもりです。」
「それは、管理者という権限をプレイヤーに知られてもですか?」
「もちろんだ。」
「知られるということは、暴動も起きるでしょう。」
「それも、承知だ。しかし、いつまでも管理者という権限を隠したままというのは問題解決に繋がるわけではないからな。それに、そんなことは説明の時にこちらの世界に管理者として出現したときに分かっていたことです。管理者というプログラムがこの世界に生じたということは、こちらの世界にスタッフがいるということを明かしているようなものですから。」
「了解しました。そちらがその気であるなら、こちらも最大限のバックアップをさせていただきます。そういえば、説明の時に質問がありましたがHPがゼロになるとどうなるかという答えは判明しましたか?」
「いえ、それは今管理者専用プログラムに任せてあります。」
「彼女また、バグによって生じた『現象』なのですよね」
「ええ、ゲームシステムから分離させたスキャニングシステムで計測しましたがこれ以上バグを発生させるということはないという結果でした。」
ピピピ…
「レイクさん、任されていた問題が解決いたしました。」
「それで、どうだった?」
「はい、現実世界ではどうなったかは分かりませんがとりあえずこちらの世界でHPが尽きたとしても現実世界でいう『ゲームオーバー』という訳ではないようです。」
「そうか、とりあえず安心だ。それで、そちらの方では今回の実験で分かったことはありましたか?」
外部にいるイレーヌスの社員に問いかける。
「はい、今回の実験では確かに現実世界では死亡するというケースは確認されませんでした、しかし脳になんらかのダメージを受けることが確認されました。」
「それは、どの程度のダメージなのか判明したのでしょうか?」
「いえ、そこまでは分かりません。詳しい検査をしたいのですが、ログインしている状態ですと正確な検査ができませんので…。」
「分かりました。では、プレイヤーの皆様方には柔らかい説明で通したいと思います。」
「分かりました。では引き続きこちらでは、外部で何かできないか検討をしてみようと思います。また、なにかありましたらそちらも忙しいでしょうからメッセージにて通知したいと思います。」
「OK.」
「では、御武運を…。」
そこで、外部との通信が切れた。
「エル、先程バグ修正に協力してくれると言ってくれたプレイヤー名を検索してくれ」
「そう仰ると思いましてお調べいたしました。プレイヤー名『カルム』という男性プレイヤーです。」
「カルムか…。メッセージコマンド、オープン」
彼の意向は、分からないが説明してみても大丈夫だろう。少なくともプレイヤーの中に一人でも多く全てを知ったうえで協力してくれる者がいなければ、もし管理者権限を狙う者が現れたとき戦闘以外で解決する方法を模索することができなくなってしまう。
そう考えながら、俺は管理者エリアへの招待メールを転位魔法付で構築し、そのプレイヤーをモニターで検索すると、質問をしてくれた女性プレイヤーも一緒にいた。
「どうやら、協力してくれる人は一人ではないようだ…。」
構築したメッセージに、彼女も来るようにとも付け加え、彼ら宛にメッセージを飛ばした。