仲間
管理者が大広間から消え、何分過ぎたのだろうか…。周りのプレイヤーは、その場に立ち尽くし動こうとしなかった。が、俺はその中で一番先に動き大広間を後にした。
(「それにしても、管理者でも分からないバグか…。おそらく、今回のアップデートが原因だろうな。というか、それしか考えられない。」)
「あ、あの~、ちょっといいですか?」
「・・・」
「あの~、聞こえてますか?」
「・・・」
「・・・」
「・・・」
「・・・。おいこら!聞こえてんのかと聞いてるんじゃー!」
「イデッ!!」
この街の中では、ヒットポイントは減少しない。だが、減ったように思えるほどの強いド突きがみぞおちに命中した。
「ん˝あ!?」
「あの、聞こえてますぅ~?」
「あ、ああ失礼。…というか、今ド突かなかった?」
「?」
質問すると、彼女は頭の上に「?」を浮かべるような表情でこちらを見ていた。
「いや、俺の気のせいだった。気にしないでくれ。で、なんか用?」
「はい。さっき、管理者さんに協力を志願していたのでどういう人かな~って思って。」
「あ~、なるほど。」
納得したような顔で対応してみると、彼女は興味深そうな顔で理由を促すような顔で迫ってきた。
「えっとな、理由を簡単に説明すると確かにバグの発生などは管理者や管理会社に問題があるんだけどゲームの中にいる以上少なからず俺たちにも関係することだから、少しは手伝えることがないかと思ってな。」
「へぇ~、結構お人よしさんなんですね♪」
「えっとぉ…。」
「あっ、今のは聞かなかったことにしてくださいね♪言いふらしたりしたら、ヒットポイントを0―ゼロ―にしてみせます」
「・・・」
「返事はどうしましたか?」
「はいっ!」
「うん。」
(「この人に逆らうと、命の危険を感じる」)
「あっ、まだ挨拶がまだでしたね。私は・・・」
彼女が言い切る前に俺は答えを切りだした。
「ハルさんでしょ?」
「えっ、あ、はい。」
彼女は戸惑った顔を一瞬見せ、すぐいつもの顔―笑顔―に戻して見せた。
「俺は、カムルだ。ちなみに、剣士をしている。」
「私は、魔導士をしています。…というか、なんで私の名前知ってたの?」
俺は、彼女を正面に見て彼女の右側を指さした。
「ここに、君の名前とレベルが書いてある。俺の左側にも表記してるはずだけど…。」
彼女は、すぐさま俺の左側を凝視すると表記があったのか目を丸くして「あぁ、ここにあるんだな」という顔をしている。
「もしかして、MMORPG初めて?」
「うん、初めてかな。だから、いろいろ教えてねカムルさん。というわけで、フレンド登録とパーティーメンバーに加えてもらえませんか?」
「え?」
と言っている間に既にフレンド登録とパーティーへの参加希望のウィンドウが俺の視界に映し出されていた。
「もし、危険があった時どうするんだよ?」
「その時は、カムルさんが守ってください。その代わり、援護するんで♪」
「…。まぁ、手伝うって言ったからおそらくだけど管理者の人も攻略に参加するだろうし少なくとも同行するプレイヤーは安全だろうな。よし、OK。」
映し出されていたウィンドウに全てOKをだした。
「やた。これで、友達で仲間だね。改めてよろしく。」
「こちらこそ、よろしく。」
そうこう話しているうちに、メッセージが届いた。管理人からだった。
「先程質問を受け、調査したところヒットポイントが消失すると現実世界で死亡するということはないということが判明いたしました。しかし、脳神経回路を専門の機械で調査したところ少なからずの障害をきたすことも判明しました。なので、攻略を手伝ってくださる方はお気をつけて行動してくれると幸いです。引き続き、こちらでは協力者を募っています。希望者は、メッセージを送信してください。尚、街全域と転落エリアのバリアはこのメールの送信と共に解除いたしました。」
「どうやら、少なからず影響があるみたいだな。どうする?これでも俺に同行するのか?」
「もっちろん♪私だって、早くこの世界から出たいし…。」
「そうか。それとな、俺と一緒に来てほしいとこがあるんだ。」
「へぇ~、どこよ?」
「管理者エリア」
「えっ、もしかしてカムル君が管理人?」
「んなわけあるかよ。今、管理人から招待メールが届いた。」
俺は、その招待メールを彼女に見えるよう可視モードにした。
『カムルさん、一番最初に協力を求めてくれてありがとう。そこにいる彼女とパーティーを組んだようだね。良ければ、彼女と共に管理者エリアへと来てほしい。』
「これって…。」
「行ってみる?」
「もちろん♪」
「じゃあ、行こう。」
俺は、同意ウィンドウにOKをすると、すぐさま俺たち二人を包み込むように転位エフェクトが発生し辺りが真っ白になった。




