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世界にたったひとつだけ  作者: 猫依颯
蛇足たち
16/21

諸行無常

途中で視点が切り替わります。

 こっちに戻ってきてから、年に一度の健診は楓雅と日時を揃えて受けている。年齢の所為か、まだ採血もされない、検査っぽいのは採尿とレントゲンだけっていう内容になんの意味があるんだろうって思ったりもするけれど、それに対する旭井先輩の言葉はかなり重たかった。

「毎年きっちり検査してたって、突然死神が連れて行ったりもするんだから、最低限のことでもしておかないと拙いんじゃないの? もう独りじゃないんだし」

 ……この人は、大切なひとを突然の病魔によって喪っている。それを今でも引き摺っているのは、毎年ある時期に普段の穏やかな様子が一変することからも容易に判ったから、余計に。


 俺が突然居なくなったら、楓雅はどうなるだろう。

 楓雅が突然居なくなったら、俺はどうなるだろう。


(俺は半狂乱になって後追い、かな……)

 でも楓雅には、追いかけてきて欲しくはない。そんなことを考えながら、レントゲンの順番を待つ。隣で楓雅は退屈そうに壁に貼られたMRIの説明を眺めていた。


**


「――おい、連絡メール見たか」

「ん?」

 朝イチの健診は朝食抜き。その分少し早めの昼食だと健診センター近くのファミレスで食事をしていると、携帯端末を弄っていたナギの表情が険しくなった。

「訃報が入ってる。――現役教員の」

 ああ――明日は我が身、か。って。

「……え」

 自分の端末で開いたメール、そこに記された名前に俺は凍り付く。

「まさか、知り合いか?」

「――ああ、同僚だった期間は短いけどね」

「病気かね、まだ若いけど」

「どうだろう……今年の初めに会ったときは元気そうだったけど」

 暫く落ちる沈黙。ファミレス内の喧噪は、何処か遠く感じる。

「……考えてても仕方ない、食うか。この後仕事もあるんだし」

「そう、だね」

 実家に喪服を取りに帰らなければ。あとで電話しておこう。

取り敢えず此処ではこれだけ。

大まかな流れを頭の中で組み上げた後の連絡メールは、なかなかに衝撃を与えてくれました。

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