月見
スーパームーンに寄せて。その弐。
今宵の月は年間でいちばん大きく見える満月だという。
季節にはまだ少し早いけれど、夕涼みついでに月見でも、と誘うと、楓雅はいいねと笑って頷いた。…俺が手に持つ酒瓶につられてかも知れないけれど。
父お気に入りのスペースだった縁側風の張り出しにふたりで座る。多少雲はかかるものの、なんとなく何時もより大きく見える気がする満月を見ながら、教育や時事を肴に酒を酌み交わす。
自分たちも勿論そうだが、子どもたちが苦しんだり辛い思いをすることのない未来であるようにと願うのは、恐らく殆どのこの職に就く者の想いだろう。少なくとも俺と楓雅、それから先輩はそう思っている。
ふと思い出した。とある文豪が「I love you」を「月が綺麗ですね」と訳したことを。
この月の下でなら、そんな台詞も嘘臭くはならないだろう。こいつも笑って、同じ言葉を返してくれるに違いない。
「…月が綺麗だな」
俺の言葉に楓雅はきょとんとして。
「そうだな。でも今年はもう一回くらい大きく見えるときがあるらしいぜ? 嘘かも知んないけど」
にっと笑って、酒を呷った。
「……」
駄目だ、意味が通じていない…!
そういえば、こいつは根っからの理系で、現代文の授業はよく居眠りしていたんだった。
もう二度と云ってやるもんかと、拗ねた気分でぐい呑みの中身を一気に呷る。旨い酒だというのがまた、虚しさを誘った。
汀の方がロマンチストです。楓雅は意外とサバサバしてます。情は深いが情緒はない、と。(笑)




