鞄
ナギは鞄にこだわる。
帆布を使ったものを学生時代から使っていたが、まさか今でも同じものを愛用しているとは思わなかった。まあ、同じメーカーの新しいものも使っているのだが。
「お前と選んだからな、これ。それもあって捨てられなかった」
そう云って愛おしげに使い込まれた鞄を撫でている瞳が優しくて。
まあ、かくいう自分も、この職に就いてから鞄はとあるメーカーのものを愛用しているのだが。この辺りの同業者は、不思議と同じメーカーの愛用者が多い。
とある動物のマスコットが付いているそのメーカーの鞄は、軽くて丈夫だ。デザインや大きさも様々で、男女どちらでも使える。
遠足のときはリュックに弁当などを詰め、携帯端末や筆記具、カメラなどはウエストポーチに納めるというのが自分のスタイルだが、そうすると2体のマスコットをぶら下げて歩くことになり、必ずと云っていい程子ども等の玩具になる。
勧めてくれたのは先輩だったから、それを知ったナギは大いに拗ねていた。
「ナギ、次の土曜空いてるか?」
「空いてるも何も、俺の休日はお前と過ごす為にあるんだけど?」
「……。嬉しい俺も俺か。
まあいい、だったら買い物に付き合ってくれないか? 流石に10年近く使っていたら随分草臥れてきたから、鞄を新調したいんだ」
「了解。それじゃ土曜は買い出しだな。タオルとかシーツとか、そろそろ新しくしないと」
「……」
妙にうきうきした恋人に、首を傾げる。
「何他人事って顔してんだよ。自分も使うものなんだし、お前も一緒に選ぶんだからな?」
「ッ」
素材とー、色とー……などと指折りぶつぶつ呟くナギ。男の二人連れは当然の如く悪目立ちするんだろうなと思いつつも、頬の熱さは長いことそのままだった。




