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4章 稲光

 光りたる闇の謂れある裂傷。

 イカヅチは密に闇を脅威し。



 /炸裂の群象が烈しく雷電し/慄きと閃色/惨痕を励起し/稲光ごと闇を劈く。


 ああ、白瞬光が破れ落ちつづく。だが轟きは陸地から彼方だ。地上の人間たちは、遠く内海に天空神ウッコが振り下すイカヅチの連打を畏怖して見つめているに違いない。ウコンバサラ。稲光を発するハンマー。天空神ウッコの武器である。恐らくは悪魔ピルが懲りずにまた悪だくみをしウッコの怒りをかったのだろう。

 リンドゥの父はウッコである。エストニアの神々の主神で、精霊である母アッカと共に内海の遥か上空にある王宮に暮らしている。だがウッコが王宮入りしたのはさほど昔のことではない。そもそも王宮は天地創造の神イルマリネンのものだった。イルマリネンは根っからの技術屋で、天地創造のための道具やら部品やらをせっせと造り現地で組み立てると、あとの管理は他の神々に任せっきり。挙句に仕事が一段落すると‘偉大なる鍛冶屋’の称号をもってお気軽にさっさと地上に降下してしまった。極楽トンボ、とイルマリネンを揶揄していた神々だったが、いざ王宮の主が居なくなると困り果てた。ここぞとばかりに悪魔ピルがいざこざを仕掛け始めたからだ。その悪知恵ときたら、全く抜け目ない。人間の心の脆弱さを知り尽くし、急所をつんつん突くような小賢しさと先回りして引っ掻き回す狡賢さは、ピルの得意とするところだ。人間を唆しては、火事を起こさせたり、土留めを壊させたり、水浸しにさせたり。家の守り神の性格のいいトンットゥや、庭の神の小まめなピハントンットゥや、サウナの神の辛抱強いサウナトントゥなどは、ピルのからかいに煩わされて仕事がさっぱり進まず弱り果ててしまった。その頃、管理統括のようなことを引き受けていたウッコは、出向いて行ってウコンバサラの威力を見せつけた。そうしたことが度重なり、王宮暮らしを余儀なくされ今日に至っている。つまりピル曰く、「忌々しい王宮の主」、になったのだ。

 王宮は人間の想像を遥かに超え巨大だ。イリアは父に代わりリンドゥを診るようになって頻繁に王宮を訪れてきたが未だに全貌はつかめない。‘生長する樹’、そんな感じなのだ。


 ふっと視界が開け雷雲の上に飛び抜ける。虹彩の中に輝く雲上の巨樹、エストニア神の王宮だ。


          辿るべき途を辿れば 道半ばに至る

          辿るべき途を辿らねば 道半ばを超える


              炎の龍の出迎え‥


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