Room019 ノリトという男。
楽しんでいただければ幸いです。
ねばねばとした液体の中にいきなり飛び込まされるなんて、しょっぱなから嫌な展開だ。
転生迷宮なんだからもうちょっと時間が経って報酬がでかくなってから来たかったが……、精霊大樹の果実の噂、エルフ捜索の依頼金額、どちらも低レベルのダンジョンでありながら大変魅力的な話だった。
だから迷わず来ることを決意し、最近知り合ったやつらと協力して攻略する事にしたのだが少し早まったかもしれない。
初見は質素な部屋で出来たばかりのダンジョンと思えたのにこのトラップは何だ。ギルドで貰った情報と扉の開閉方法が真逆ではないか。
他の王族が継承し、運営している迷宮と違って転生迷宮はダンジョンマスターの個性が現れる為か、中身が面白いほど変質すると耳にした事がある。
以前のダンジョンとその前は武闘派でかなり慣らしていたはずだが、こうまで変わるものなのだろうか。
歴代転生迷宮のダンジョンマスターの中には何もやらずに殺された者もいたというのに……、何だか貧乏くじを引かされた気分だ。
これならまだ他の王候補達が運営しているダンジョンのほうが敵が狩れる分、幾分かましというものだ。
ま、このネバネバだけなら対応は出来るので然したる問題は無い。
最初は誰か居た様だがこちらにネバネバをかけまくった後、すぐに撤退して言ったところを見ると、こちらを必要十分に十分警戒している様だ。なかなかいい判断だと素直に思う。
何せこちらはかなり格下の敵を襲っていると自覚出来る程実力の差がある。
「アクネラ、いけるか?」
「任せな、《開放》」
体についていたネバネバが流れ落ちていく。
アクネラと呼んだ仲間が持つ《開放》という能力は拘束道具を無効化する働きがある。つまり俺達には手錠や粘着液といったものが一切きかない。
とはいっても口を塞がれたら終わりなので少しヒヤッとさせられたが。
「全くどうやったらこんな陰険な罠を考えられるだケロ」
小太りのカエル顔、森族でありPTの盾役であるミゲロが煩わしそうに泣き声をあげる。綺麗な水でなければ飲まない! と常日頃から豪語している彼はこの粘着液が不快で仕方が無いのだろう、ただでさえ酷いと言われがちな顔をさらに酷く歪めて呟いている。
「いや、罠はいたって普通だった。ただ単に俺達が事前に手に入れた情報に踊らされていただけだ」
そう、扉に罠を仕掛ける事自体何の不思議も無い。問題なのは攻略したはずの罠がおかしくなっているということだ。
攻略された罠を変えるのは理に適ってはいるが、それでもまさかあんなあからさまに設置されている[ボタン]で扉が開く様にするとは思わなかった。
しかも対応が早い。他のダンジョンでは新たな罠を設置するのは時間がかかっているのに……この速さは圧巻である。
まさか悩む要素が無かったのだろうか? 元々攻略される事を前提に作ったのだとしたら恐ろしいものである。
何せ自分が死に近づく未来を疑わずに受け入れ、それを前提として策を練っているのだから並大抵の神経ではあるまい。
扉を上に上げる際に取っ手を使ったのが悪手だったわけだが、取っ手を使わないと中々あけられない重さの扉だった。
恐らくそこまで計算されていたものなのだろう。
道具持ちの為に雇った他PTの奴等が上に残ることに成功していたのは本当に羨ましい。これなら戦闘力が多少落ちるのも仕方なしに軽いものは持っておけばよかった。
「これから上に登る為の方法を探さないといけないの? それはちょっと嫌だな~」
「そんな事言わないのっ! いつもあんたは……」
天獣族には珍しく無気力なミルホが羽耳を垂らしながら呟き、姉であるアクネラに叱られている。相変わらずな姉妹の緊張感の無さは美徳と言えよう。
だからといってそのままのんびり過ごす訳にもいかない。食料にも限りがあることだしさっさとここを脱出したほうがいいだろう。
「兎に角まずは仕掛けがないかどうか辺りを探そう。この広い空間は俺達のようなやつを殺すためにあるはずだからな、少なくとも敵が出入りする場所はあるはずだ」
「さっき何人かいたものね」
アクネラの言うとおり先ほど何かがこの場所に居たのだ。
他の臨時メンバーも揃って頷くぐらいピチャピチャと音を鳴らしていたのだから確かに居たはずだ。
「そのとおりだ。各自細心の注意を払いながら行動を開始してくれ」
「その必要は無い」
◇◇◇◇
「手間はこちらで省いてやる」
隠し扉から飛び出して粘着沼へと着地する。
パッと見強そうなのは後衛と思わしきの軽装の天獣族(?)2人と良く分からんカエル1人、リーダーっぽい鎧纏った犬の人だろうか。
他のやつは装備が劣ってるし、他の4人と違い少し緊張している。もしかしたら臨時で集めた輩なのかもしれない。
《投影》で見た限り喋っている感じもしなかったしまず間違いないだろうとは思う。
ま、あの荷物もちは驚きの弱さだったわけだが所詮荷物もち、強さは然して気にしていなかっただろうしこいつらが本命と思ってまず間違いないだろうな。
「おーちゃん、後ろ2人狙い目だ」
「わかりましたぞ」
俺があの4人を抑える役割を担うわけだが果たして上手くいくだろうか? いや上手くいってもらわないと困る。
はちみつリンゴを投入した段階でそれなりに強い奴等が来るのは分かっていた。何も対策を練らずに行うなら子ブリン並みの馬鹿だろうが生憎と俺はそんな馬鹿ではない。
対策、いや今までの努力が少しずつ実ってようやく実行できると確信に至ったのだ。まず間違いなく勝てる。
「あんたはダンジョンマスターなのか?」
犬の人が喋りかけてくる辺り本当にリーダーだったらしい。単純に後ろに翼が生えてたからリーダーっぽいなとは思ったのだけれど、外見だけの判断って思ってた以上に侮れないものなのかもしれない。
「赤の他人だ」
「一人で来るとはそれほどまでに自信があるのか……。まあいい、俺達は別にアンタを殺しにきたわけじゃない。エルフの情報が知りたいだけなんだ」
確信しているからか、それとも質問したけどうでもいいのか、俺の言葉を完全に無視して話を進めている辺り完全になめられていないだろうか? いや、別にいいんだけどね。
それにしてもエルフ? 精霊大樹のことではなくエルフか……全くの想定外だ。ギルド派遣で来たエルフなんて相当稀だろうし陵辱目的なら、まあ不思議じゃないか? でもそれだと質問してくる意図がわからん。
情報を引き出すために揺さぶりをかけるのは普通だろうが、生憎と俺は普通ではない。冷静な相手は馬鹿を扱うよりも苦手だがやれることはやろうか……。
「エロフならいるが」
「……エロフ?」
「知らないのか? エルフが淫乱になるとエロフと呼ばれる。それがさらにエロくなると褐色の肌に生まれ変わるんだぞ? 堕落したエルフの髪は金色が落ちて銀色になるから分かり易いしな。うちにはそのエロフがいるんだ」
ゴクリと喉を鳴らす辺り臨時人員さん(仮)達も所詮は男だという事か。悲しき定めよ。
「ま、嘘なんだけどな」
「何っ! 俺の純情を弄びやがったのか! 返しやがれ!」
「なんて非道なやつなんだ! エロフ出せ!」
「陰険な性格だと罠から推察していたが本当に酷い性格だケロ」
臨時人員2人はやっと喋ったと思ったらかなり下らない事をわめき始めた。それに便乗して文句を言ってくるカエルも相当に性格が悪い。
女性1人は完全にこちらと臨時メンバーを軽蔑した視線で見て、もう1人は頬を染めて俯いている。肝心の犬さんは冷静にこちらをじっと観察しているだけで何のリアクションも起こしてくれない。
少しは精神乱すぐらいのサービスが欲しい……。
「緊張感のない奴らだな」
「お前に言われたくはない」
犬さん冗談ってのを勉強したほうがいいと思うんだ。そんな容赦ないツッコミを俺は欲していた気もするが敵にして欲しい訳じゃないんだよな……。
「結局いるのか?」
「なんでエルフなんかを気にする?」
精神攻撃が効かないのなら長引かせても時間の無駄だろうと思って直接聞いてみたのだけれど、黙り込んでしまった。
もっと慎重に尋ねるべきだっただろうか?
「教えたら引き渡してくれるのか?」
「だが断る」
あ、折角反応してくれたのについ癖で断ってしまった……。
「……」
「というのは冗談で教えてくれたらエルフの現状を教えてあげようか」
ナイスフォロー俺。
「……」
ナイス……フォロー?
「埒が明かんな、力づくでも聞かせてもらおうか」
ああ、犬さんが諦めてしまった。でもまあ仕方ない、どの道相手せざるを得ないと思っていたのだから遅いか早いかの違いでしかない。
「一応言っておくけどこのフロア罠結構仕掛けてるから無闇に動いたら死ぬよ?」
「ミルホ」
「この部屋の中には[糸]と[針]が粘着液の中に隠れているぐらい……。敵もこの男と通路の女以外はいないみたい。面倒だから早く倒しちゃって」
やる気ない子を装って見事罠を看破するとは侮りがたし。……コレって結構ピンチだったりするんだろうか?
「いやいや、まてまてそれって卑怯じゃないか? 罠と敵の数がわかるなんてルール違反だろう? ちょっと待ってくれ、作戦会議させてくれ」
「待つわけないだろう」
1歩踏み込んだかと思えばすぐ目の前に現れる犬さんに驚嘆しつつパックステップで犬さんの大剣を避けて光球を飛ばす。
残念ながらスピードだけは自信があるんだな、これが。
「ほう……、一人で来るだけのことはあるな」
格好いい事を呟きながら光球を大剣で打ち払い、こちらに歩いてくる犬さんから逃げるように後ずさる。
「速すぎ、ほとんど勘で避けたようなもんだぞ」
額を拭い、乱した息を整える。それをみてマグレだと思ったのか、興味をなくした様に一気に距離をつめてくる犬さん。
「もうコレで終わりだ」
犬さんの大剣が俺を正確に捕らえて逃げることを許さない。
隠し扉で未だにじっとしているオーちゃんをみられながら俺は肩を掠めるように一撃貰う羽目になった。
「ック……」
垂れ流される赤い血が粘着液の上にたまっていく。
「話せ」
「……」
「話さなければあの獣族を殺す」
何も喋らず肩を手で押さえる俺を見つめながら大剣でおーちゃんの方を指す。おーちゃんが何かに耐えるように震えながら俯いている。
俺はそれを見ても何も発言せずに目を伏せる。
「仕方がない、ミゲロ来い」
「人使いが荒いケロな」
愚痴を言いつつやってくるカエル顔には満面の笑みが張り付いていた。恐らくこれから何かするであろうカエルを見て後ろの姉妹が顔を顰める。
「こいつは人をいたぶるのが事の外好きでな、特にお前のように反抗的な奴と女は大好きだそうだ」
「人聞きが悪いことを言うなケロ。我輩は命令されて仕方なくやるんだケロ、でも粘着液はイラついたからまずこの男の爪でも剥いでからにするケロ」
何処が強制されてるんだよとツッコミ待ちかと思うほどにニヤニヤした顔のまま近づいてくるカエルに生理的嫌悪を覚えてしまう。
「い、いやだ……。いやだいやだいやだいやだいやだ!!」
体を小さくして震えながら声を絞り出す。
……運が悪かったとしか思えない。強い敵が来ることは予想していたしその為の準備もしていたのに、なのに罠がこうもあっさり突破されるなんて……、しかもふざけても冷静さを保ったまま一方的にこちらを追い込んでい来るほど強いなんて……。
酷い……。
……酷すぎるほど全て想定内だ。
近寄って手に触れようとしたカエルの体からグシャっという音と共に手が飛び出す。そしてその手に握られている物がドクドクと脈動を打っているのが彼らの目には良く映った。
「っな……」
心臓を握り潰し、意味が分からないといった顔のカエルを投げ捨てる。
敵の急所を探していて気づいたことだが敵の防具が厚い場所は大抵急所だ。ただその範囲が広すぎて困るのだが、一つだけ分かり易い場所があった。
それこそ心臓であり、今潰してみせたのが探しやすいという何よりの証拠である。
―――――――――――――――――――
名前:大沢ノリト
種族:人族
職業:迷宮の主
Lv:17 NEXTLv:20P
HP:1700/1700 ↑1500
SP:850/850 ↑750
P:150
STR :90(+190)↑75
INT :90(+25) ↑75
DEX :90(+50) ↑75
DEF :90(+15) ↑75
MDEF:90(+10) ↑75
AGI :90 ↑75
LUK :90(-2) ↑75
固有能力:《迷宮創造》《罠作成》《魔族召喚》《隷属化:階級操作》《職業変更》
戦闘技能:《集中》《超加速》《直感》《光魔術》《拳闘術》《姿勢制御》《四肢強化》
称号:《生命の冒涜者》《隷属者の主》《迷宮の破壊者》《罠師》《採掘師》《農夫》《細工師》《建築士》《鬼畜》《解体者》《探究者》《狂人》《変人》《策を弄する者》
―――――――――――――――――――
《姿勢制御》…どんな場所にいても姿勢を自分の好きなように正すことが出来る。
《四肢強化》…手足を強化する。発動時STR+50
《探求者》…追い求める者に与えられる称号。STR+10、INT+10
《解体者》…肉を加工する者に与えられる称号。STR+30
《狂人》…常識から逸脱した狂った人間に与えられる称号。STR+50
《変人》…可笑しな行動をする人間に与えられる称号。DEF+10、MDEF+10
《策を弄する者》…策を考え出す者に与えられる称号。INT+10
まぁそれもこれも俺のステータスがこんなになってしまったからこそ出来る芸当なのだが。
「キサマァアア!!」
怒りに打ち震える犬さんを放っておーちゃんの方へと笑顔で振り向く。
「おーちゃん、やっていいよ」
許可が出たおーちゃんは痺れを切らせて大声で叫ぶ。
「食い千切れ! 野郎共!」
犬さんが今どう考えているのか手に取るように分かる。残念ながら俺の本命はもとより罠などではない、今この瞬間こそが俺の本命。
そもそも俺とおーちゃんはリーダーと思われるこの犬さんがPTから一人離れるこの瞬間を待っていた。罠を看破させて一人でもやれると思わせる状況を作り出すことによってひたすら待っていたのだ。
この手が届くリーチに敵が入り、尚且つ何時でも俺を殺せると敵が確信するこの瞬間が。
それにしても怒っているとはいえあくまでも冷静な犬さんに思わず笑ってしまう。いくら速いとはいっても、軽装とはいえ装備を容易く貫通してカエルを殺した俺から離れる事など出来ない。
何のために斬撃を避けられるだけのスピードを見せたのか、犬さんは此処に来てやっと理解したのだ。
その冷静さが仇となって犬さんは俺から離れられない。
気軽に俺の傍から離れれば仲間がさらに殺されると確信しているから。
俺達が現れたのとは別の隠し扉から突然現れた魔狼が臨時メンバーに喰らい付いていく。おーちゃんはそれを見守りつつ《咆哮》でフォローを入れる。
「アクネラ、ホルン、フォローしろっ!」
一瞬で魔狼に襲われたことから立ち直り、俺へと向かってくる。冷静に判断して俺を殺すことでも優先したのだろう。
実際そのほうが効果的だしエルフがもし捕まっているだけなら俺を殺せば取り戻せると考えているのかもしれない。
どの道俺の隷属下にあると知れば死ぬことには代わりがないのだし。
考えているとしたらそんなことだろうか? もしかしたら戦闘に集中しているだけかもしれないが……。
「俺だけを見ていていいのか? あの姉妹に新しく喰らい付く奴らがいるかもしれないぞ?」
一瞬姉妹を見て舌打ちし、姉妹の下へと素早く後退する。最初にあえて派手に立てた足音と突然現れた魔狼を警戒しているのだろう。
いい判断だと素直に思う、けれど俺と相対している以上それだけの対処ではとても足りない。犬さんに追従するように迫り、地面に足を突き刺して拳を繰り出す。
背後から迫った拳に犬が反応し、咄嗟に出した大剣と真っ向からぶち当たる。
俺の拳は斬られる事無く大剣を抑え、いや、それどころか逆大剣にヒビを入れ、それでもなお止まる事無く犬に迫り続ける。
慌てて飛びのき、大剣とこちらの拳を見てくる犬に対して呆れた様に笑いかける。
「あんた等程度じゃ俺は斬れないぞ?」
出来る限り綺麗な笑顔を作ってさも当たり前の様に軽く言ってみせる。
これで絶望してくれれば楽だったのだけれどアクネラと呼ばれた女性がフッと笑みをこぼす。俺何か作戦以外に馬鹿げたことやったっけと思わず考えてしまったのはご愛嬌だ。
「魔法は効くんじゃないのかい?」
そう言葉を漏らすのと同時にいくつもの火球を作り出してこちらに放ってくる。
俺の体にぶち当たって服に引火し、轟々と燃え盛り始める中俺は冷静に上着を脱いで投げ捨てる。
幸い下まで被害が及んでいなかったので裸にならずにすんだのはありがたい。いやはや、恐ろしい攻撃をしてくる女である。
「っ!?」
それでも上半身が露出し、火球で血が蒸発してしまったことで敵が気づいてしまった。
「なんで効かないの!? どうしてさっき付けた筈の傷がないの!!」
「本当に気づいてないの?」
笑いながら告げる。
「俺が演技してたってわかってるんじゃないの?」
冷静な奴ってのは厄介だ。何せ馬鹿な振りをしてもそれを振りだと考える力がある。実際俺が馬鹿を演じたもこちらをずっと警戒していてやり辛いったらなかった。おかげで俺は醜態をさらに晒さないといけなくなったわけだ。
結構ノリノリだったのは否めないがそれでも結構精神的に辛かったと弁明しておく。
「それとも俺が遊んでただけだって理解してない?」
一歩一歩ゆっくりと迫る俺に対して下がることしかできない3人は何時しか壁際まで追いやられる。
「いやー、楽しいな。
ほんと、楽しかったな……。
でも飽きたし、そろそろ死のうか?」
「お断り」
「だが断る。なんかこのセリフ飽きてきたけどそれでも断らせてもらうわ」
勇気を振り絞ってあげた声を無慈悲に切り捨てる俺に対して憤りを感じる余裕がまだあるらしい。
諦めない瞳は大変好ましいとさえ思う。俺の、俺達の平穏を脅かさなければいたって平穏に生きていけただろうに。
少し哀れに思いながら拳を握る。犬さんが前に立ちはだかるが大して意味などない、止まっている限り俺に敵の攻撃は効かない。
切りかかってくる犬の大剣を無視してそのまま犬本体を殴り飛ばす。
本当に思惑通りに動いてくれる犬さんだなーとしみじみ思う。
殺すと思えばまず仲のよさそうな姉妹を守るために出てくると思っていた。
面白いほど想像してくれたとおりに動く犬さんに心の中で感謝しつつ姉妹に近づき、ヤル気がなさそうだった、けれど今に至っては怯え、震えて動けなくなっている妹に歩みより、腕を掴んで壁に埋め込む。
「なにするの!」
姉が怒り、襲い掛かって来たけれど殴って犬と同じように吹き飛ばす。
「妹を助けたいか? 助けるためなら何でも出来るか? 体を売れるか? 命を差し出せるか?
アンタの妹の価値はいかほどだ? 俺の質問には答えてくれるのか?」
「いくらでも……、何でも応えるからさっさと妹を放しな!」
「そうか……、それじゃあ取引を始めようか。楽しい楽しい取引を」
勤めてにこやかに笑う。俺の後ろでは臨時メンバーを食い漁る魔狼が見えているはずだ。果たしてこの人たちは俺の願いを聞き入れられるかな?
おーちゃんに命じて動きを封じさせながら思い描く。
これから始める俺にとって最高の、そして全ての基礎となる計画が始まる。
聞き入れてもらわなくては困る。
望みを叶える為にこいつらは必要なのだ。
楽しみだ。
……本当に楽しみだ。
ノイリ「ノイリ達は行かないの?」
インプ「僕達は今回必要ないそうです。僕も手伝いたかったのですが敵が思ったよりも少ないということなので……」
ノイリ「そっかー。じゃあ勉強する!」
インプ「そうですね。僕達は勉強しましょう」
マゼンダ(コクリ)
シア「何か不穏な発言があったような気がするのですが……」
インプ「気のせいじゃないですか?」
ノイリ「はーやーくー。勉強しよ!」
シア「……それならいいのですが。それじゃあ9ページを開いて……」
こうしてノリトの命は保たれた。らしい。
◇真・あとがき◇
毎度読んでいただき感謝感謝です。
敵の攻撃が効かない理由は後々説明するのでツッコミはまだなしで、とはいっても気づいている人もいるかと思います。
かなりあからさまだったのでまず間違いなく気づいてます?
ま、気にしない気にしない。
今回の話はノリトらしいバトルだと感じていただければ思惑通りなのですが……。
今回私の文章力、国語力の低さが露呈しそうで(※もう露呈してます)恐々しながら投稿しております。
私としてはもっと知略全開だZEEEE! という感じにしたかったのですが語彙も文章力も、私には何もかも足りなかったのDESU。orz
ご都合主義の色が濃いですが次話辺りでその辺説明しようかと思っていますので暫しお待ちを。
それにしてももっと文章書いて本読めばスキルアップできるかなぁ……?