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Room016 忘れてた何某との約束。

まともな性格の子を出そうと性格考えてなかったインプで頑張ったらこうなった。


あれ?


◇1/12 句読点修正。

 爪先立ち、それは往々しく立ち人々を睥睨するかの様な尊大な立ち方。


 爪先立ち、それは産まれたばかりのカモシカが震えながらに立っているかの様な感動的な立ち方。


 爪先立ち、それは傍から見ればこの上も無くプルプル震えていて、突付いて倒したい欲求を掻き立てる蠱惑的な立ち方である。


 つまり何が言いたいのかというと、爪先立ちをする上で大事なことは如何に無心であり続けられるかという事だ。でないとこの様な馬鹿なことを考えてしまう。


 全く中身のない、意味の分からない話を考えてしまったが、さっきからプルプルする足が俺にもうやめるんだ! と訴え続けているのだから、その事から目を逸らす為に、意味の分からない思考をしたくなっても仕方がないといえる。


 第一、本当は爪先立ちだけではなく足の運動もするはずだったのに、何故か気味が悪いといわれて引けなくなってしまった自分がいる。


 今いる場所が闇フロアなので誰にも見えないはずだから止めてもいいとは思うのだが、逆に止め時がわからない。


 どの道爪先立ちになれないといけないというのには変わりないので、今はこの苦行に耐えようと思う。ついでに無心になるために穴を掘ろうと思う。


 先が見えない闇の中でモゾモゾと爪先立ちで動き、体の柔らかさを無駄に駆使して地面を掘る俺は殊更気持ち悪く映ることだろう。本当、人がいなくて良かったと思う。


 黙々と作業を続けていると、どんどんプルプルする足が気になって仕方がなくなるので、もう無心とかどうでもいいので建設的な考えに集中する。


 シアのステータスを見たときに気になった点があったが、あの時は転移陣のことで頭がいっぱいだったから十二分に考えをめぐらせていなかったし、丁度いいだろう。


 気になった点といえば《斧術》だ。あれは戦闘技能だが補助的役割で技とかはなかったな。俺の持っている《格闘術》と似ている。というよりはもしかしたら戦闘技能で得られる武器、あるいは素手を用いた技術には技が存在しないのかもしれない。


 《斧術》や《格闘術》同様、その武術を極めるための補助的要因がつくだけではないだろうか? もしそうだとするなら剣の経験も才能もない分、剣術を習得しなくて逆に良かったのかもしれない。


 たった2つで結論を出すのは早計だろうから、敵がもし技をつかったなら拷問して問い詰めるのもいいかもしれない。後でアリサたちに伝えておこう。


 とそこで戦ってる連中のことを考えていたら何かが頭に引っかかる様な感覚を覚え、一人頭を傾げる。


 何か忘れている気がして一体なんだったか、と思い出そうと試みてみるが一向に思い出せない。何か約束したようなしてないような曖昧な感じだ。


 っと気をそらしている間に結構掘れてしまっている。そろそろ掘るのをやめないと掘りすぎてしまう。


 今回は人2人分の大きさの穴をいくつか仕掛けて骨を床にばら撒くだけでいいので作業が少ない。


 骨は虫族以外の死骸から抜き取ったものだ。それを満遍なく地面にまいていき、地肌があまり見えなくなるまでそれを続ける。


 見えなくなった所で今度は迷路のように入り組んだ通路をいくつか闇フロアに張り巡らせる。これは敵を迷わせるためのものではないが、もしかしたら迷ってくれるかもしれないので時間を稼ぐ為の粘着液を通路にばら撒いておく。


 とりあえず闇フロアでの作業はこれで終わりだ。罠部屋というよりはアリサと霊族の為の戦闘フロアなのだが何時活用できるか分からない。


 捕まえて戦わせるのもいいがいまいち緊張感に欠けるので、きちんとした戦闘をつめるように――とはいっても有利な状況でだが――作り変えたので、出来るなら敵には来てほしい。


 いつまでも敵が最初のトラップに引っかかっているようでは困るのだが、あれから一向に前に進めていないところを見ると、先にダンジョンに入った者たちが死んでいないと思っているのかもしれない。


 元々あったPを使えばそれこそ無数のフロアが作れたわけだし、攻略に時間がかかっていると思っていればそれも無理な考えではないと思う。


 ただそろそろ変化があってもよさそうなものだが、そこらへんどうなのだろう。


 すでに三時間たっているはずなのに敵が現れないあたりそうなのか? でも時間帯的には深夜になりつつあるのでそれが関係あるのかも知れないしなんとも言えないな……。


 と思った矢先にこれまたタイミング良くアラームが頭に鳴り響く。いつもジャストってわけじゃなかったとは思うがここまで遅れたのは初めてだ。


 少し不安になったので戦闘の様子を見るために爪先立ちでちょこちょこ歩きながら狩場へと赴く。


 狩場に行く途中シア達の様子を見ようと精霊大樹のあるフロアを覗いて見ると、おーちゃんが顔を地面に当てて尻を天に突き出し、ネットで良く用いられているorzという姿勢よりも深い絶望を如実に現していた。


 敵も来ていないのに深く沈んでいるのは何故だろう、と疑問に思いつつ近づいてみると何か呟いているのが聞こえてきた。


「私はもう駄目なんだ。主に忘れ去られた存在なんだ。私達の晴れ姿を見て貰おうと思ったのにぜんぜん構ってもらえないなんて……。しかも敵も来てくれないし、きっと私っていらない子なんだ。そんなの嫌だー、主ー、主ー、捨てないで……」


 ああ、すっかり忘れていた。そういえばおーちゃん含めた魔狼の戦い方を見せてくれるといっていた。


 いやはや考えることが多い上にイベント盛り沢山だったからついね……。それにしても見事な落ち込みっぷりである。

 好かれているというのは職業を見れば一目瞭然だったわけだが、実際目にしてみるとそれが実感できる。何せ、周りの明るさが一段階暗くなったかの様な錯覚すら見える雰囲気を出せるのだから相当なものだ。実感できないほうがおかしい。


「おーちゃん、今度敵来たら戦い方見せてくれよ」


 急に声をかけられてビックリしたのか、全身の毛を逆立てたと思ったらバク転を連続して最後にバク宙を決めて着地して見せた。


「おー」


 思わず感嘆をあげて拍手をする。とそこでようやく俺が来たことに気づいたのか慌てて取り繕って、何もなかったように口笛を吹きながらいかにも奇遇ですね主、なんていいそうな感じで近づいてきた。


「こんな所で会うとは奇遇だな、主」


 俺の知り合いは反応に困ることばっかりやってくれちゃって困ったものである。誰か助けになるような人物はいないだろうかと周りに視線を巡らせれば、シアが精霊大樹の葉を敷いて座っている子ブリンとマゼンダ、ノイリに授業しているのが見えた。


 片手に本を持っているがあれは何処から出したのだろうか? 確かあんなものなかったはず……、そんな疑念を抱きながら注視していたら、こちらに気づいたシアが邪魔しないでと鋭い視線を送ってきた。


 それを無視して見ていると、シアが目を放した隙に子ブリン達が夢の世界へと船を漕ぎ始めているがわかった。シアもなかなか苦労しているのだと分かり今は気にしない事にした。


 周りには他に誰もいないので、どうやらこの状況を打破してくれる人物の登場には期待できないらしい。


「お前さっきそこで(うずくま)ってたろ」


 助けは期待できないのでとりあえず真実を突きつけてみた。


「ななんあなな、あああ主が何を言っているのかわからないっぺろ。くぁwせdrftgyふじこlp」


「ちょっと落ち着け」


「おおお、落ち着いているぞ。主が変なことばかり言うからおかしくて」


 面白かったら語尾が可笑しくなって、尚且つ呼吸困難に陥りそうな顔して、言葉を詰まらせて、顔を赤くするお前のほうが絶対おかしいと言いたい。


「とにかく落ち込んでたみたいだけど敵が来たらちゃんと戦い方見てやるから」


「ほ、本当ですっ……コホンッ。別に主が見たいというのなら吝かではないが何しろ疲れてるのでな」


「じゃあいいや」


「いやああああああああああああああ」


「やっぱり見たいかな」


「あわわわわわわわわ、どうしようどうしよう。どうやって謝れば……、これではあいつら(魔狼達)になんといっていいかわからんぞ。どうすれば? あああああ」


 翻弄してみようかと思ったけど、最初のダメージがでか過ぎて言葉が届いていないみたいだ。ちょっと遊び心が過ぎたかな?


「おーい、大丈夫だから、見てやるから」


「ほほほほ本当でしょうなっ!?」


「本当だから落ち着けって」


「私は最初から落ち着いていましたぞ。あえて言うならちょっと風邪を引きまして、あ! ですがそろそろ治るので戦うのに心配はないぞ。うん、全く平気、へっちゃらだ!」


 俺としてはおーちゃんの精神がもろ過ぎて心配なのだが本当に平気だろうか? あと1回からかっても大丈夫だろうか? やっても……いいかな?


「私はそろそろ狩場に戻るので主は私達の勇士をしかと目に焼きつけるんですぞ」


 何か俺が言いかける前におーちゃんはそう言って狩場に戻っていってしまった。これで敵が来なかったらかわいそうだなと思いつつ、それはないかと久々に畑でも見ようと足を向けるのだった。




◇◇◇◇




 残念ながら敵はまだ来ていない。


 《投影》で狩場を見てみたが、おーちゃんが一人で緊張しているところをアリサがからかって緊張を解そうとしていた。これなら俺が行かなくても大丈夫だろうと安心して畑へと赴く。


 アリサがまた食い荒らしていないかのチェックする為、定期的に見に行かないといけないのはなかなか気が重い。


 畑を整備するのは臭いし手間がかかるしで大変なのだ。とてもじゃないが一人でずっと続けるのは骨が折れる。猫の手でも借りたいが生憎と畑をいじれるのは俺だけしかいない。


 ノイリとマゼンダは手伝ってくれそうだが流石に忍びないし、シアは教職についてしまって子ブリンを賢くする事にせいを出してる手前頼めない。

 しかしマゼンダは森の主なのだし協力してもらったほうがいいのだろうか? いやしかしそうするとノイリも自然についてくる。


 もし手伝ってもらうのならもっと芋とか収穫の喜びを感じる事の出来るものがいい。薬草は雑草に近い感覚ですぐ生えるので最初は良いがどんどん喜びも少なくなっていく、それはあまりに面白くない。


 努力して成果を出す喜びを教えてあげたい。それがシアの授業ぐらいしかそういったのが実感できる機会がないので参加してもらっているわけだし、やはり手伝ってもらうわけにはいかない。


 今日も一人で頑張るかと思って畑のフロアに入ると、驚いた事にアリサではない先客が存在していた。


 ――インプその人(?)である。


「何してるんだ?」


「薬草のお世話を……」


 何かか細い声が聞こえてきたので誰か後ろから来たのかと振り返ってみたけれど、そこには誰もいなかった。


 はて? 気のせいかと思いつつインプの方を見て首をかしげる。どうしてインプがいつも俺がやっている株分け作業をやっているんだろうか。


「あ、あの。僕が株分けとかやっちゃ駄目でした……?」


 か細い声が今度はハッキリとインプから聞こえてきた為に目を剥いて凝視する。え? 何喋れたの? どういうこと? あれ?


「おかしいな、最近眠ってないから白昼夢見てるのか? いや今は深夜だからそうは言わないのか?」


「疲れてるの? マスターに倒れられると困るから眠ってくれないと……、畑仕事は僕がやるから」


 か細く高い声でこちらをいたわってくるインプ。姿かたちは醜悪な悪魔をデフォルメした感じなので、なんとか可愛いと言えなくもないが、ギャップがありすぎて流石に唖然としてしまう。


 というか主に戦闘とか任せていたけれど、任せた時返事すらなかったし、雑務――某戦闘でのスタッフ役――を頼んだときも頷くだけだったのに喋れたのかこいつ。


 性別としてはどうなのか分からないが声の質から判断するに女なのだろうか?


「大丈夫だ。インプは何で畑仕事なんてやってたんだ?」


「それは……。日頃吸精(きゅうせい)させてもらってるので、僕も育てるのに参加したほうが良いのかと思って」


「そうか。吸精ってのが何か良く分からんが今までどうして喋らなかったんだ? それにどうして今更手伝う?」


「えっとそれは、その。僕生まれたばかりだったのに此処に呼ばれたおかげで、どうやってマスターに仕えていいのか良くわかんなくて……。それに話す言葉もわからなくて、いつもこっそりマスター達の言葉を聴いてても良く出来なくて、ようやくシア様の授業を盗み聞きして覚えられんたんです」


 デフォルメ悪魔がここまで純真だとどういったらいいのか。外見なんて人種の違いなんだろうけど、前の世界で見聞きした悪魔とはギャップがありすぎるんじゃなかろうか。


 それにしてもシアが授業を始めてから然程たっていないはずだが、吸収効率が良すぎないだろうか? シアが言っていた何でも器用にこなすとはこのことなのか?


「吸精は僕達インプが行う食事です。他の生き物から生きる力を分けてもらうんですが、僕は主から貰った薬草から吸精をさせてもらってました。ただ最近マスターが大変そうにしていたので薬草の世話ぐらい僕も手伝おうと思って」


 なるほど。つまり良い子だ。


「歓迎する。畑仕事は辛いが頑張ってくれるとありがたい」


「はいっ。僕頑張ります」


「手伝ってくれるからな。収穫が多くなったらこっそり薬草から吸精してもいいぞ」


「あ、えと。その、ありがとうございます?」


「なんで疑問系なんだよ」


「すみません。僕ちょっとビックリしちゃって……、マスター何時も短く命令くれるだけだったので、その何というか……。僕みたいな下々にも気を配ってくれる事に驚いて」


 俺ってそんなに何時も冷たかっただろうか? 確かに訓練は厳しくしたし命令するときも短く的確に伝えるだけだったから冷たい印象はあったかもしれないが、何時も気にかけているつもりだったんだけどな……。

 やっぱりそういうのって伝わらないもんなのかな。


「あっ、でもでもノイリ様達にも優しいのでマスターが優しいというのは良く分かってます! 僕マスターに召喚されて良かったって本当に思ってるんです!」


 こうも純粋な子がいるとジーンときてしまう。ノイリとは違った清涼剤になりそうだし将来有望である。


「ありがとう。それじゃあ畑弄ろうか」


「はいっ!」


 少し弾んだ声で返事をしたインプと一緒に畑に埋まっている根っこを取り出し刻み、株分けしていく。


 部屋は広くないが地味な作業をずっとしないといけないので、退屈という名の苦痛がいつもは襲ってくるのだが、今回に限ってはインプが話し相手になってくれたので退屈を感じる間もなかった。


 インプは吸精するせいか命の輝きというものには敏感らしい。その為この畑に生えている薬草のよさが良く分かるという。

 なんでもインプが生まれた森ではここまで凄い薬草はなかったとか、とはいっても、生まれたばかりで記憶も定かではないのですみませんと謝ってきたので、本当に比較できたわけではない。


 本当の作物なら根腐れしてもおかしくない様なもの――敵の遺体等――をやっているわけだし、他と違うというのは間違いないだろう。


 インプとちょっとした交流が出来た今回は大きな収穫といっていい。シアの授業をもっと受けさせて出来る事を増やしていけば色々任せられそうな事実が殊更嬉しい。


 子ブリンほど時間はかからないだろうし優秀な生徒が増えればシアも嬉しいだろう。


 畑の仕事が終わり次第連れて行こうと思い、インプとともにラストスパートをかけていく。


 作業が終わりに近づいたころ俺とインプの仲は他の仲間と変わらない距離まで縮まっていた。




◇◇◇◇




「驚きです」


「えっと、駄目ですか?」


 シアの話を少し聞いただけで語学をある程度習得したインプに驚きを隠せないでいるシアに、何かドジをしてしまったのかと心配そうにしているインプの図は見ていてなかなか面白い。


「いえそんなことはありませんよ。ただ他の子はまだ語学の勉強中なので貴方には違う課題を与えないといけませんね……」


 シアがそういって徐に目を瞑り、片手を前に出すとあら不思議。突然何も無い空間から本が現れました。


「「ぉおー」」


 思わず2人揃って感嘆したけれどいったいどういう仕組みなんだろうか?


「それ何?」


「知りません。教本がほしいと思ったら勝手に出てきたのでそのまま使ってます」


 つまりは俺にステータス画面で確認しろってことか……。


 どこか納得いかないものの結局見るしか方法が無いので素直にステータス画面を開く。


―――――――――――――――――――

名前:アナスタシア・フォレストア

種族:森族

職業:教職

Lv:1 NEXTLv:10

HP:50/50

SP:200/200

Ex:0


STR :5(+15)

INT :25(+50)

DEX :10

DEF :5(+5)

MDEF:20

AGI :14

LUK :1


固有能力:《転移陣》《教本》《浸透声》

戦闘技能:《斧術》

称号:《知識の宝庫》《知識を渇望せし者》《樵》《変わり者》《子供好き》

―――――――――――――――――――

 《教本》…知識を本として出す事が出来る。

 《浸透声》…特定の相手に声を届ける。


 なんという授業能力だろうか。試しに《浸透声》を使ってみてもらったが頭の中から声が聞こえるという不思議なものだった。

 生徒が増えても《浸透声》さえあれば声を届かせるのは苦じゃないし、これで目を強化する能力でも手に入れば完璧ではないだろうか?


 それにしても《教本》とは……恐らく教職についた事が大きく影響を与えているのだと思うが、ここまで早く新しい能力を手に入れるとは思わなかった。


「この《教本》を使ったら知識を忘れてしまったりしないのか?」


 シアはステータスを覗きこんで一人嬉しそうな微笑を浮かべながら説明する。


「特に忘れるといった事はありませんね。生徒の数だけ教本を準備しましたが私が忘れる事はありませんね」


 それはかなり有用な能力ではないだろうか? 勉学にも使えるがシアがわざわざ説明しなくても情報がもらえるというのがいい。


 いつも説明させてばかりで若干罪悪感があったような気もするし、後でダンジョンに関する本でも出してもらおう。


「それでは私は授業の続きをするので、インプさんも来て下さいね」


「はいっ」


 やる事があって充実している為かシアは授業がしたくて仕方が無いようだ。早々に話を打ち切って2人でノイリ達の下に歩いていく。その先では子ブリンが性懲りも無く舟をこぎ始めている。


 シアが恐らく《浸透声》で怒鳴ったのだろう。舟をこいでいた子ブリンがビクッとなって起き上がり、あたりをキョロキョロ見回してシアを見つけたかと思うと子羊のように震え始めた。


 黒板も無く、かくものも無い授業は基本的にシアの説明に耳を傾ける事しかやる事がない。俺でも眠ってしまいそうだ。


 だが子ブリンは日頃の行いも悪いので決して助けはしない。なによりノイリとマゼンダは楽しそうに授業を受けているのできっと大丈夫だろう。


 いまだに来ない敵を狩場で待とうと足を向ける。その道中シアの教職に変化が無かったかどうか《職業変更》を行使して見てみれば……。


―変更可能職業―

・迷宮の主補佐Lv1

・教職Lv2

・学者Lv1

――――――――


 教職がLv2、しかも点滅していたので押してみたら詳細が見れるようになっていた。


【教職】…人に知識を教える者達を指す。人に物事を教える事に特化し、また己が知識を深める力を所有する事が出来る職業。


 他の連中は見れなかったのでLv2にあがる事が条件なのだろうか? ここのシステムは適当すぎて困るとつくづく思う。

 まるで誰かから聞き及んだものを自分なりに弄って変えた素人臭さがある。


 無意味に考えたところで意味も無いか、どうせこのまま生きていければそのうち謎も解けるだろう。


 そう結論し、思考を敵の事に切り替えて足を速めて狩場へと向かう。


 とにかくアリサと話し合おう……。

インプ「僕って一人称は変なんですか?」

シア「僕というのは主に男の子が使う言葉ですから」

インプ「うーん、でも一番しっくり来るのがこれなので……」

シア「別に良いと思いますよ? パパさんも気にしてなかったみたいですし」

インプ「良かった。僕他のだとちょっと恥ずかしくて」

シア(女性なのに恥ずかしがるとは、男っぽい人に囲まれすぎたせいでしょうか、何れにせよ将来を考えるなら時間をかけてでも克服してもらいましょうか)


◇真・後書き◇

更新遅いのに物語の進行ペースも遅いですが平にご容赦を。


何か今回主人公が馬鹿になりすぎてしまいましたが主に爪先立ちのせいなので、慣れたら元通りです。きっと。

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