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Room013 悲しきエルフの矜持。

休みにある程度かけていたので早めの投稿です。


誤字脱字、不自然な点などありましたらご指摘いただけるとありがたいです。


◇1/12 句読点修正。

 とりあえず片手間で新しいフロアを掘りながら、自分のステータスを考察してみることにしたのだが、やはり自分のステータスだと周りのLvを上げるよりも慎重になってしまう。


 もう何も出来ることなど無いというのに、悪あがきに穴掘りしているあたりどうしようもないな、と自分でも思うが止められないのだから仕方が無い。


 Lv1上げるぞ、上げるぞと自分に言い聞かせながら何とかLv1だけ上げることに成功する。たかがLv1上げるだけで汗が凄いことになってしまった。


 この状態でステータスを見るのは中々に過酷だが見なければ話が進まない。


―――――――――――――――――――

名前:大沢ノリト

種族:人族

職業:迷宮の主

Lv:2 NEXTLv:20P

HP:200/200 ↑100

SP:100/100 ↑50

P:930


STR :15(+100)↑5

INT :15(+5)  ↑5

DEX :15(+50) ↑5

DEF :15(+5)  ↑5

MDEF:15    ↑5

AGI :15    ↑5

LUK :15(-2)  ↑5


固有能力:《迷宮創造》《罠作成》《魔族召喚》《隷属化:階級操作》《職業変更》

戦闘技能:《集中》《超加速》《直感》《光魔術》《拳闘術》

称号:《生命の冒涜者》《隷属者の主》《迷宮の破壊者》《罠師》《採掘師》《農夫》《細工師》《建築士》《鬼畜》

―――――――――――――――――――


 ぉお、平均的にではあるけど合計35UPとか中々高いじゃないかと目を見開いて驚愕する。


 期待してなかったから余計に嬉しいこの状況。これこのままLv上げていけば最強に成れるんじゃ? と思うけれどここはぐっと堪える。


 少ない経験値でここまで上がるならステータス上昇補正の称号が手に入らなくても納得できる。でもこれだけ能力値が上がるからといって調子に乗ってLvを上げてしまえば何も出来なくなってしまう。


 それこそ自分のステータスを上回る相手に来られたら死んでしまうのは免れないだろう。大体他のやつらみたいに進化だの、コレから試してみる《職業変更》だの、何にも強くなれそうな要素が無いのだから後々周りよりも弱くなることは確実だろう。


 アリサに限って言えば闇を駆使した戦闘でそれなりにもっていたらしいが、俺にはそんな戦闘技術ありはしない。


 そんな戦闘はベテランであるアリサに任せて置けばいいのだ。俺はあくまで一撃で死なない程度にステータスを上げるべきだろう。


 とはいってももし急所に当たればステータス補正がかかっていても即死する可能性も高いのではないかと今は考えている。実際敵を殺す際に色々試してみたが攻撃回数に多少の変化があった。


 拳だけで即死はさせられるわけもないし、何処が急所かも良く分からない状況なので嬲り殺しにしてしまったが、中々に有意義な試みであったと思う。


 アリサはもしかしたら油断したときに急所を攻撃されたのかもしれない。


 でなければステータスの低い現状でも危なげなく戦えているアリサが、ただの戦闘で死ぬ想像なんて出来はしない。実際はアリサのみが真実を知っているわけだから単なる妄想でしかないのだが。


 結局のところLvを上げるよりも戦闘経験をつんだ方が死ににくくなるのではないだろうか。


 なんて考えてもLvを上げないと避ける、受け流すといった行動も満足に取れないのでLvも重要なわけで……とてつもなく面倒だ。


 しばらくはアリサ辺りから戦闘技術を習いながらフロアの拡張&増設。Lvを上げて様子見すればいいだろう。捕虜の敵と俺も戦闘して経験を稼げば何か変化があるかもしれないしな。




◇◇◇◇




 Lv上げと自分に合った戦いについて考えて掘っているうちにフロア小程の広さを掘り終えていた。少し水を飲もうとフロア中に入ると、戦闘で疲れたらしい皆が風呂上りに精霊大樹の下で輪になって眠っていた。


 気持ちよさそうに眠る姿を見ていると心が暖かくなる。身内って、仲間っていいもんだよなと改めて思いつつ水を飲み、作業場へと戻る。


 今回はフロア中程度、時間があればもっと掘ってみようかと思っている。


 その際無駄に駆使したシミュレート能力を使って家を建設してみようかなと考え中なのだが、資材が足りないのが目下の悩みだ。


 なので今はとりあえず広く掘っていくことにしている。その間に《職業変更》を試すわけだが、ちょっと緊張している。


 異世界であるからして俺の想像している職業があるとは限らない、それどころか変な職業があっても全く不思議ではないわけだ。


 そこら辺心の準備をしていないと衝撃を受けてしまいそうで怖いのだ。


 いったん掘る手を止めて深呼吸して《職業変更》と唱える。


 するとステータスを見るのと同じような画面が現れそこに名前が連ねてあった。恐らく変更できる人物なのだろうが……。


―――――――――――――――――――

園田アリサ

ノイリ

マゼンダ

―――――――――――――――――――


 たった三名、しかも俺が入ってない。


 何故とは言わない、この名前を見て他の選ばれなかったやつの相違点といえばやはり召喚、隷属といった違いだろうか。大体俺は迷宮の主から職業が変更できるとは思えないしな。


 正直これについては少し予測できていたのでショックも少ない。


 ステータスに表示されている職業が召喚されたもの達と隷属者では全く違う。


 召喚されたものたちは職業と書いてあるものの、実際は召喚主をどう見ているかといった視点でしかない。


 それに比べて隷属者は~の部下と付いている。


 恐らくコレは何も職を持っていないときに付けられる物ではないかと考えられる。部下なのは表示されなくても分かるわけだし、このダンジョンにいる限り誰の配下であろうと結局は俺の部下になるのだ。


 だとするとコレは職業ではなく単なるその場しのぎのものでしかないわけだ。


 だから隷属者しか《職業変更》が出来ないのだ。でもそういう考えからいくと召喚した者を隷属させれば召喚した者も《職業変更》は可能なのだ。


 不思議に思うのは何故召喚された者が《職業変更》出来ないのかという点だがそれは調べようが無い。


 とりあえず出来ないことを気にしていても仕方が無いので早速《職業変更》を試してみる。


 我らがアリサ先生をまず選択してみる。


―変更可能職業―

・迷宮の主補佐Lv1

・暗殺者Lv1

・狂喰者Lv1

・魔術師Lv1

――――――――


 見なかったことにしよう。


 それじゃあまずはじめにノイリを見るとしよう。


―変更可能職業―

・迷宮の主補佐Lv1

・巫女Lv1

・姫Lv1

――――――――


 姫って成れるんだ……。なんだかめちゃめちゃ興味を惹かれるが無難に巫女にした方がいいよね?


 後で考えよう、今考えると後で変えられるからと勢いで何かしかねない。


 そんなことよりもとりあえず全員見てみよう。マゼンダはかなり期待しているんだけれど、さてどうなのか。


―変更可能職業―

・守護者Lv1

・狂喰者Lv1

・森の主Lv1

――――――――


 ノイリと組ませたら良さげな守護者職、興味を惹くのが森の主……、詳細わかんないから名前から判断するしかないのが痛い。


 情報の信頼性も含めて考えるならさっさと仲間にしたいけれど、まだうんと言ってくれないんだよな……。


 ノイリ達と仲良くなってるし、こっちのことはある程度理解してもらえてると思うけど、精霊大樹含め色々興味津々みたいだし、こちらのわかってる情報を出して勧誘しないといけないな。


 とりあえず興味を引きそうな持ってる情報を整理してから交渉してみるか……。




◇◇◇◇




 情報をまとめるだけで結構時間がかかってしまった。


 おかげでフロア中程度の大きさのフロアを掘り終えてしまった……、我ながら恐ろしい穴掘り能力である。


 精霊大樹の下に拘束されたままのシアに近づいていくと、近づいてきたことで起こしてしまったのか、目を擦りながら近くで寝息を立てているノイリとマゼンダをどかしてこちらを見据えてきた。


 いつになく真剣な表情に後退りそうになるのを堪える。


 これから交渉をしようというのに呑まれてどうするんだと己を叱咤して平静を装い近づいていく。


「お話があります」


「いきなりどうした?」


 シアは今までに無い強い意思を灯した瞳でこちらをじっと見て、一拍おいてから口を開いた。


「私がエルフだというのはお教えしましたが、私が派遣された理由は話していませんでしたね」


 なんでいきなりそんなことはなすんだよと思わずにはいられないが、そんな事を突っ込むほど野暮な性格ではないのでそのまま聞く体勢に移る。


「それもそうだな」


「私達エルフは排他的な種族です。生まれてくる子は少ないけれど長命種である私達は何の脅威も無く過ごして来た為に増えすぎ、他の種族に頼らねば生きていけなくなりました」


 異世界の物語とかで語られる内容そのままの様な種族だな、ほんと。


「……ですが私達は余りにもプライドが高すぎました。エルフは頭を下げることを良しとはしませんし、他種族に嫌悪感を抱いています。もちろんそんな者達が商売も良好な人付き合いも出来るはずも無く、限られた選択肢の中で、私達はエルフという種族が王族と同等の存在として取り扱われるように呪いを利用しました」


「なるほど、王族付きのエルフはそういう……。食料などはそれを条件に?」


「そうです。私達にしか出来ない事を利用し、大量の生活用品や食料を貰っています。今回私が来たのも本当は転移陣のみではなくダンジョン内の情報を探り、渡す為でした」


「それだと一人出来たのは可笑しくないか?」


「それは残念ながら私もエルフだという事です。野蛮な者が多い冒険者を護衛にして、味方を疑いながらの調査などする趣味はありません」


 教育のたまものか、種族としての特性なのかは分からないが危険を冒して一人で潜入するのを見ると、他種族を忌み嫌っているというのは十分に分かった。


 でも国には申請しなかったのだろうか? 派遣されたというのだから相手から申請してきたはずだが、そこら辺はどうなのだろう。


「頼んできた国から護衛は付かなかったのか?」


「それは長老が断りました」


「なんでまた」


「エルフは至高の種族だから護衛など必要ない、それが長老の判断だったからです」


「呪いのことがあるとはいえ良く滅びないな」


「里の考えも嫌うエルフもいますから……。里から出て他の種族と交流するのは主にこういった人なので、余り悪い印象は無いようです。国から保護も受けてますし、犯罪に巻き込まれない限りは長命種なので数も中々減りません。今回は里に直接来たのでこうなってしまいました」


 プライドが高い割には他種族と交わっている人もいるみたいだけど、一体どうなってるんだろうか? 以前の説明では呪いの影響も出始めていると聞いた様な……。


 言ってる事が二転三転している気がする。


「プライドが高い割には他種族の血を入れてるみたいだが」


「エルフは他と接触せずに長年生きながらえてきましたが、血が濃すぎる為か、極端に体に異常を持った子供が生まれるようになったのです。かつての長老達は悩みましたが、解決の糸口は中々見つからなかったようです」


 詳しくはないけれど遺伝子学的に身内だとまずいんだったかな、エルフがそうなのかは分からないけれどそこら辺が原因だろうか。


「ですがある時里を出て行った者が他種族と共に子供をつれて帰ってきたのですが、その子はエルフの血が強かったようで、姿かたちはエルフそのままでした。しかも驚いたことに力は衰えておらず、異常も見当たりませんでした」


「それで他種族との交流を推奨したのか?」


「いえ、残念ながらそうではありません。長老達は他種族に寛容なエルフをすべて追い出し交流させました。そしてあえて寛容でない嫌がるエルフを里の外に出し、人身御供として働かせることもしましたが、決して里全体での交流はしませんでした」


「なのに血が混ざったのか?」


「人身御供として出した者に里に戻る条件として、エルフの外見を持った者子供を連れて来させたんです。悩んだ末になるべくエルフの血が濃く受け継がれるようにと考え出したものです」


 勝手に追い出された挙句戻るにはエルフの外見を持った子供を生むか、奪うかしないといけない。それこそ他種族に嫌悪感がある者は里に戻りたくて仕方ないだろう。一時の苦痛だと思えば体も許せるということか?


 許せない者はやはり奪うのだろうか、幸せなエルフの家庭から。


「私は母が人身御供でした。本来なら私は里から出られませんが、人と共に生活した時に身に付けた転移陣のおかげで外に出られたんです」


 言葉が出ないとはこの事だろうか、エルフは至高の種族……、一体どういう理屈で考えたらこんな事がまかり通るんだろうか。


 だからといってココでシアに哀れみを覚え、同情の言葉を口に出すのは間違っている気がする。


「だからシアは然程俺達に嫌悪感を持っていないのか?」


「そうですね。兄弟が他種族であると母に聞いたのもありますし、その影響で私が他種族について正しい知識を学んでいるからというのもあります。子供も好きですし、ノイリちゃんとマゼンダちゃんについては驚くことに好いてさえいます」


「なら何で仲間にならない」


 話は長かったが核心をつけたという事だろうか、淡々と喋っていたシアが苦笑を浮かべて震えはじめる体を抑える。何かを必死に押さえつけながら喋ろうとする姿は少し痛々しく感じてしまう。


「残念ながら私はどんなに境遇が良かろうと自ら隷属者にはなりたくないのです。私にもやはりエルフの血が流れ、あの里で教育を受けてきたということでしょう。他種族に嫌悪感が少ないといってもただそれだけです。だから隷属者に成りたいなんて自分から言うなんてとてもではないですが絶対に無理です」


「……」


「アリサさんと話して興味を惹かれる提案もありましたし、正直あなた方の話をもっと聞いてみたいとも思いました。それでも私が隷属者に絶対にならないといった時、彼女は死んでも隷属者には出来ると言っていました」


 唇をかみ締めるほど必死に、搾り出すように喋るシアを見ながら、教育ってのは大切なんだと思わされる。


「…………私を殺してくれませんか?」


 どんな気持ちで今の言葉を紡いだのだろうか、どれほど自分の湧き上がる感情を殺して言ってるのだろうか。


 普通の人でさえ隷属者なんぞになりたい人なんて皆無だろう。だというのにエルフに懇願させるなんてのはさすがに無理があるといわれれば納得してしまう。


 ……だというのにここまで言われたのだ。


 それに答えない道理なんてあるだろうか? 例えやっと貯まって来たPを使うことになったとしても親しくなった奴を俺が捨てられるだろうか?


 無理だ。


 シアと同じように俺も身内を守るものだと教わっている。尚且つ俺はそれを肯定しているし、自ら望んでそれをやり遂げたいとも思っている。


 ならやることは一つだけだ。


 シアを新しく掘ったフロアへと移動させて一言口にする。


「目を閉じろ、一瞬で終わらせる」


 静かに目を閉じるシアに痛みを感じる間もない様に光球の雨を降らせる。


 そして時間を置かずに隷属化を発動させる。


「《隷属化:階級操作》ターゲット:アナスタシア・フォレストア」


 発言すると同時にステータス画面を開き文字を見るまでも無くYESを選択する。


 すると光りと共に陣が現れ、その上に見慣れたシアの姿が浮かび上がる。


 遺体だったものはいつの間にか消え去っており、とてもこの部屋で凄惨な出来事があったとは思えない。


 ゆっくりと地面に降り立ったシアを見て俺は新たな仲間を迎えるべく笑顔を向けた。


「おかえり」


「ありがとうございます」


 あえてお礼の言葉と流れる涙をなかったことにして、俺はシアの手を引いて精霊大樹の元へと向かう。聞きたいことは多いが、もう少し時間を置いても誰もとがめないはしないだろう。


 そんな事よりみんなに伝えない方が怖そうだ、やっとシアが仲間になったことを……。

-ノリトとシアの話し合いの裏で-


アリサ(お、起きてるとはいえませんよね……この状況)

アリサ(仲間になるみたいだし、仲間になったら思いっきり祝ってあげよう)

アリサ(……しかしPたりますかね?)

アリサ(いえ、そんなことよりライバルが増える事を重要視したほうがいい気がします)

アリサ(でも仲間、もとい身内になったからノリト兄さんは恋愛対象としてみないかも……ってそれは私にも当てはまるから困ります)

アリサ(どうにかでしかにものですね……)

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