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Room008 捕虜が語る昔話。

お気に入り100件突破してるとか嬉しすぎます。

それのなのに遅れて申し訳ない限り、でもネタが尽きたわけではなく書く時間が無いだけなのでご安心を?


◇9/14 誤字等微修正。

◇1/11 句読点修正。

 頭の中でアラームが鳴り響く。


 誰も来なくなって早2週間、やっと誰かが来たようだ。願わくばギルド職員であって欲しいものだが、果たしてどうだろうか……。


 今思えば眠ることは出来るものの、基本眠る必要の無い俺達にとってこの2週間はあまりにも長すぎたといっていい。


 俺なんかは思わず水道を通してしまうほど、もちろんそれだけでは飽き足らずに火属性フロアへの道を斜めにしたり、小道具作ったり、罠の最終調整をPを使わず丁寧に行ってしまった。


 魔族たちは訓練のおかげもあってかなりの成長が見られ、しかもノイリが飽きもせずに勝敗に一喜一憂するものだから、無駄に張り切って丸3日戦闘するという荒業までやってのけていたりする。


 馬鹿すぎると思ったけれど、俺もノイリが喜ぶのならそれぐらいやってしまいそうだ。


 訓練といえば敵が来ないので今では霊族も参加してるのだが、まず魔族と運用方法が全く違うのでなかなか上手くいかなかった。


 特にゾンビは遅すぎて相手にならず、まずはランニングを重点的にすることにした。骨犬は攻撃を食らうと死にはしないものの、骨がバラけて集めるのが大変なので骨を自力で戻せるように訓練している。


 上達すれば体の一部の骨を自由自在に操れるようになるというのだから無駄ではないはずなのだが、一向に上達が見られないのは何かが足りていないのだろうか? このソースは勿論アリサだ。


 そのアリサといえば今は根っこをかじり終わってからずっと、インプの《夢》を使って幸せに浸っている。その際に寝っ転がってよだれを垂らしながら、もにゃもにゃと寝言を言いながらニヤニヤする姿は微笑ましくもある。


 [幻]でトリップして凄まじい顔をさらすよりも断然微笑ましいので反論は認めない。


 そんなこんなで一生懸命2週間を生き抜いてきたわけだ、当然遅れてやってきたギルド職員には怒りを抱いてた。けれど今はもう怒りを通り越して呆れすら抱いている。


 さすがに無能すぎやしないかと。


 おかげでやって来ただけで有難くて許してしまいそうになってしまう。ま、許す気なんて本当はさらさら無い。だから自作のバケツに入った粘着液を、最初のフロアに帰還陣を貼り付けると同時にぶちまけてあげた。


「随分と手荒い歓迎をしてくれますね」


 粘着液でほとんど見えないが人に近い容姿の様だ。粘着液から口を守ったってことは結構できる人らしい、といっても完璧に防げたわけではないらしくこもった声なので聞き取り辛い。


「今一驚いていないようだけど、ギルド職員はこんなの慣れっこなのか?」


「いえいえ、驚いてますよ」


 全くそうは聞こえないぞ、って顔がほとんど粘着液で隠れてるから声で判断するしかないから、本当は顔が変わっているのかもしれないけど。


「そんなことよりもだ。取引がしたい」


「……ほう」


 鋭い声で感心するのをやめてほしい。今一男か女か声で判断できないからイケメンっぽく聞こえて少しイラッとくる。


「そちらが出す物は何でしょうか?」


「侵入者の使わない防具一式」


「それだけではこちらのメリットが少なすぎますね。まず我々がダンジョンと取引をする際にはそれ相応の覚悟をしなければなりません」


「指定された相手の生還」


「確かに魅力的ではあります。ですが我々にとって一番魅力的な交渉材料はダンジョン攻略の情報です」


「それぐらいわかってるさ、第一今までのは冗談だ」


「……?」


 誰が馬鹿正直に取引なんてするかよと自分で提案しておきながら思う。


 こちらが圧倒的に不利なおかげで、吹っかけられること前提の取引なんてするだけ無駄だ。しかも一つ間違えれば確実に殺されてしまう。メリットの少ない取引なんてお互いにするべきではないのだ。


「こちらが提供するのはあんたの命。求める物はあんただ」


「なるほど、転移陣ですか」


 理解が早くて助かる。転移陣はかなり魅力的だ、例えそれで外に出られなかったとしても、ダンジョン内に張り巡らせることが出来れば色々な事が可能になる。


「それは無理ですね」


「命が惜しくないのか?」


「命は惜しいですがどうせ貴方の隷属下に置かれるのでしょう? 死んだ事と何が違うというのですか、しかも無理やり言う事を聞かせられてしまうのですから死んだ方がまだましと言えるでしょう」


「確かにそうだな」


 例え口約束で何もしないといった所で隷属してしまえばそんな物無いのと一緒である、ならどうするのが最善か?


 残念ながら蘇生奴隷化させるだけのPも今はない。どうすればいいだろう? なんてことはこの2週間のうちに嫌でも考え付く。


「なら了承するまで捕えておくわ」


 帰還陣が出来た事でこれから侵入者がそれこそ大量に来るはずだ。なら隷属化させるだけのPを貯めればいい。


 とりあえずギルド職員を手作りのフロアに放置する事にして担いで運ぶ。背中にふにゃふにゃした感触があるのはこれまで耐えてきた神様から俺への贈り物かもしれない。


 隠し通路を抜けて手作りフロアまで連れてきた後に顔を拭う。


 顔がいつまでもべたべたしたままだとさすがに辛いだろう、という配慮ではなく単純に顔が見たかっただけだ。


 なるほど、真面目な性格だと思ったらエルフメガネっ子(♀)だったわけだ。雰囲気も何だか出来る秘書みたいな感じだし、これは真面目だわ、うん。


「ノリト兄さん、このエロフとの交渉は失敗したのですか?」


 隠し部屋に様子を見に来たアリサがエルフを一瞥するとそういって訪ねてきた。エロフって何だよ。まぁ、真面目な人ほどムッツリっぽいし、否定はしない。


「ああ、誠心誠意やったんだけどな。見事に断られてしまったよ」


「私はエロフではありません。エルフです、そしてあれは交渉ではなく脅しというのです」


 冗談なのに凄い真面目な対応をされてしまった。こういった場合、どうフォローしたものだろうかと自問自答しても答えは出てこない。


「でも母さんが発見した父さんを誑かす本にはエロフと記載があったような……」


 普通なら気まずいはずなのに流石腹黒アリサといった所か、相手の話を無視して的確に致命傷をついて来るぜ。園田の旦那さん今居ないから俺の気まずさが上がっただけのようにも思えるけれど。


「どの様な本かはわかりませんが、エロフとはその本での呼称であって私の種族名ではありません、私たちはエルフと呼ばれる森に住まう民です」


「これからよろしくエロフ」


「よろしくねエロフ」


「私はエルフです!」


 ヒステリック気味に叫ぶのは秘書っぽい人の特技なのだろうか? どうでもいい事だがあんまり短気だと折角の美人も台無しである。本人に言ったらヒステリックな声でまた叫ばれそうなので言わないでおこうと思う。


「取引と聞いて感心してみれば中身は結局は無駄に偉ぶっている他の奴らと一緒なのですね」


「他だと?」


「明言は出来ません。ですが私は貴方と同じ立場の人間を知っていますし見て来ています」


 凄い、もしかしたらダンジョンに関しての情報を聞き出せるかもしれない。


「へえ、じゃあ私の事しってる?」


「知りません」


 さっきの前振りなんだったんだ、俺の期待を返せと言いたい。


「やっぱりただのエロフじゃないですか」


「エルフです。それと私が知っているのはここではない場所の同業者です」


「他? 他にもあるのか?」


「私が来る情報を知っていたからある程度情報収集するつてがあるのかと思いましたが……、どうやら思い違いだったようですね」


 ポンポン情報を出すから随分といい人だと思えばこっちの事計ってたわけね。正直捕まえた時点で別に何されようが構わんから警戒してないんだけどね。


「んじゃ失礼して」


 エロフの片手を取ってフロアに小さな穴を掘ってそこに埋め始める。


「何をしているのですか?」


「最強の拘束具にして最強の装備……になればいいな」


 これで上手くいけば本当に最強なんだけど、世の中そんなにうまくいくはずないよな……そう思いながら剣でエロフの腕を少し斬りつけてみる。


 ガキンッという音を立てて跳ね返されて驚く、何でも試してみる物だなと1人納得しながら驚くエロフに視線を戻す。


「どういう事ですか?」


「もうエロフは俺以外に傷つけられないって事だ」


「ノリト兄さんはこのエロフにエロエロ出来るってわけですね」


 何処か不機嫌そうに言われるが、特に不機嫌にさせる様な振る舞いをした覚えが無い為に少し困惑する。


「そりゃそうだが俺は何もするつもりないぞ」


「尋問しないのですか?」


「エロフのお前が聞くな、尋問されたい様に聞こえるぞ」


「エルフです。尋問されたいわけではありませんが本来尋問するものでは無いのですか? 第一私が貴方方に有用な情報を提供できるのは先程の問答でわかったのでは?」


「確かに魅力的だ。だけど将来部下にする奴にあまり手荒なことはしたくなくてな」


「さっき斬りつけたのにそう言えるノリト兄さんは凄いです」


「よせやい、照れるだろ」


 何故か2人からジト目で見られてしまう。何か変な事を言っただろうか……?


「ノリト兄さんは良しとして、私もエロフを隷属化させるのは賛成です。有用な情報は隷属化させてから聞いた方が引き出せますしね」


「だから私はエルフです。第一私にはアナスタシア・フォレストアという立派な名前があります」


「アが多いな、アが三つあるからアミさんてのはどうだ?」


「それは何だか色々際どい名前なのでダメですね」


「そうか、ならストア・アシタアナフォレ・スなんてどうだ?」


「勝手に私の名前を変えないでください」


「ノリト兄さん、スなんて余りをだしてしまったらエロフが可哀そうです」


 確かに、無理やりだったな。そこに気付けるとはさすがアリサだと言える。


「エルフ言ってます! そして名前はアナスタシア・フォレストア。それ以外の名前などありません!」


「フォアアア・ナスレストシタッスとか可愛いんじゃありません?」


「ツはどっから持ってきたんだよ。それじゃダメだろ、いい案も出ないしエロフさんでいいんじゃないか?」


 それにしても果たして最初のフォアアアは嘆いているのだろうか? ナスが休んで嘆いているのか? そしてナスが休んだってどういう状況なんだ、誰か教えてくれ。


「それもそうですね」


 質問する間もなくあっさり却下されてしまった。自分で却下しておきながら少し惜しい気もしたが仕方がないだろう、さすがにツは無理やりすぎだった。


「だからわ・た・し・は!」


「欲しい情報をくれたらちゃんとした名前で呼んでもいいよ?」


「ノリト兄さんがデレました!? 男を誘惑するだけのエロフは燃やした方がいいと母さんが良く言ってましたけど、本当かも知れません。もう燃やしましょう」


「はぁ……、ここの方は他の方とは違うと思ってましたけど大いに違いますね。別の意味で疲れます」


 エロフが疲れてしまった。そろそろ2週間の鬱憤を晴らすのをやめておいた方がいいかもしれない。


「仲間になる件考えといてくれよ」


「断ります」


「だが断る」


「はあ……」


 溜息をついて疲れているエロフを置いて、俺とアリサはとりあえずマゼンダの花があるフロア中に赴き、エロフを捕まえた旨を伝えた。


 ノイリが新しいお友達が出来たと喜んでいたけれど遊んでもらえるかどうか。そうだ、ちゃんとした名前を呼ぶ条件として遊んでもらえばいいか。


 そう考えてノイリにきっと優しくしてくれるぞと言って、会うのはもうちょっと待つように言い含める。


「わかった!」


 元気いっぱいで楽しみで仕方ないといった様に体をうずうずさせ、時折マゼンダの花の周りを駆け回っていく。


 見ていて微笑ましい、この笑顔を絶やさぬためにも後でまた苛めに……違った、頼みに行こう。




◇◇◇◇




 頼み込むとあっさりと了承されてしまった。まさかこれが噂に聞くデレというやつだろうか?


「デレた?」


「デレてません! 貴方に無暗に反抗しても弄られるだけとわかってるのですから子供の相手ぐらい素直に引き受けます」


「エロフがデレた」


「だ・か・ら、デレてませんと言ってます!」


 いかん、2週間の鬱憤が貯まり過ぎていてなかなか気が晴れないからつい弄ってしまう。別に反応が面白いからとかきっとそういう事ではないはずだ。


「ノイリと遊んでくれるならかなり有難い。けど忘れるなよ? 何かしたらただじゃおかない。死んだ方がましだと思える事を思いつく限りすべてやる。お前が途中で壊れたとしても必ずやり遂げる」


「そんな事言われなくともわかっています。これから来る仲間が貴方たちをあっさり倒してくれることを願ってやみませんよ」


「それは難しいだろうな……」


「何故です? このダンジョンに既に侵入した者がいる事は事前に調べましたので分かってますが、それも微々たるもの、さして脅威に成りえないと思っていますが」


「誰が侵入してきたのかまではわかってるのか?」


「そんなの知りませんよ。野営の跡が近くで発見されたのでそうなのだろうと見当をつけただけなのですから」


「エロフ随分ぺらぺら喋るよな」


「子どもと遊ぶ代わりに名前を呼んでくれると言ってましたのに……」


「ああ、すまん。シアは随分口が軽いな」


「いきなり愛称で呼ぶ辺り最悪ですね。私も無駄に痛めつけられる趣味はありません、喋っても貴方が殺されるならそれでよし、殺されなくても私が何れ無理やり隷属化させられるなら大して違いはないでしょう」


 そんなことを言うならエロフに戻そうかとも思ったが、話が進まなくなりそうなのでやめる事にする。


「ギルドへの忠誠は?」


「そういえばギルド職員と勘違いしているようですが、私はただの派遣エルフです。世代交代された場所(ダンジョン)が思いのほか多いせいでギルドは今人手不足なんですよね。本当貧乏くじもいい所です」


 不憫だな……、といっても逃がさないけどね。


「少し疑問なんだが、シアは何でダンジョンの事を話せるんだ?」


「呪いの効果が薄いんです」


 この世界の人間は神様にでも呪われたのだろうか、馬鹿な奴らだ。


「何を考えてるかわかりませんが多分そういうことではありません。このダンジョンもそうですが遥か古には高度な魔法文明が存在したとされています」


 遥か古と聞いて嫌な予感しかしないのは何でだろうか……。さすがに予想はつくよ? 有りがちなのがもうその技術は失われてしまったのだーとか。でも技術失って欲しく無いんだよね……帰りたいし。


「けれど高度なのは魔法文明だけで精神は未成熟だったと言われています。そのおかげで古の王達がこんな場所を作り上げ、そこの主(王達の子孫)に世界を支配させようという馬鹿な考えが思い浮かぶほどには酷いものです」


 この流れは……ああ、避けられないのか。てか迷宮の主より上の階級があったのか、それになれば元の世界に戻る事も可能かもしれないな。


「しかも最低な事に公平性を規すとし、古の王達はこの場所の事を話せば死ぬ呪いを全ての民にかけました。その当時交流を絶っていたエルフは難を逃れましたが交流して他種族と交流し、子をなしていくうちに今ではその影響を少なからず受ける様になっています」


「他に難を逃れた種族はいないのか?」


「竜族も難を逃れたと聞きますが、竜族の方々はまずこちらに接触してきません。一度この場所を壊そうと躍起になっていた時期もあったようですが、古の人々にとって今では最強と目される竜も敵ではなかったようですね」


 そこまで強いのなら滅びる理由が分からないな、内乱? 戦争とかが真っ先に浮かぶがそれならダンジョンを作った意味も無いだろう。なら何故滅びたのかが気になる。


「そこまで強い古の人々が何で滅びたんだ?」


「最初に誕生した主のせいだと言われています。彼が初めにしたことは世界の主に対抗できない様に高度な魔法文明をすべて消し去り、自分が楽しめるシステムに作り替える事だったと言われてるからなんです」


 そいつが今のシステムを作ったんだとしたら相当に性質が悪いとしか思えない。それにしても何処か雑な部分があるのは遺伝なのか? 呪いがすべてに掛かってないという雑な仕事をした王族、あまりにも雑なダンジョンシステム……、間違いなく家族だろうという事はわかるな。


「その際に自分の8人の子供たち、今では8王と呼ばれる者と競争意識を持たせる為、異世界の者を1人召喚してここと同じ場所を与えたと言われていますね」


「ダンジョンシステムの概要は?」


「それは王族付のエルフしか知りませんし、知っていてもシステムまでは呪いでさすがに話せません」


 話せないと言っても他にやりようはいくらでもあるだろうに……。ということは他の王に比べてこちらは情報弱者って訳だ。競争相手にもならない事は明白だろうに、どうしてこうなった。


 ああ、雑な仕事しかしない奴らだからか……。


 しかし他の競争相手が王族ってのが気になる、世代交代があったってことは王族が取り仕切っているダンジョンがあるのではないだろうか?


「他のダンジョンは今でも王族が取り仕切っているのか?」


「そうですね。今回は先ほど言った様に世代交代が頻繁に起こりまして、今はすべての場所に王族が居ますね」


「そいつらが死んだらどうなる?」


「王城に戻り、自分の王国を繁栄させる為に公務に勤しみますね。もう世界の主への挑戦権はありませんから」


 なんだその「おお勇者よ、死んでしまうとは情けない。仕方ないから王様にしてやろう」って感じのシステムは……美味しいじゃないか。不味い所が無いじゃないか。最低なチートじゃないか。


「幸いなことにこの場所で人の使い方を学べますし、多くの種族の趣味趣向や欲望等も見えますから、良き王が生まれる事が多いのでこのシステムも好意的に受け止められてますね」


 殺意しかわかないけれどどうしたものか、気になる事も増える一方だし事情が分かった方がより不利な立場を理解するしかないって嫌だな。


「最初の王以外で世界の主になった者はいないのか?」


「いませんね。全ての子供が足を引っ張り合ってますし、引き継ぎは王の子供が大きくなってからでも出来ますので」


 なるほど、こちらは死んだらすぐに世代交代、あちらはいつでもか……胸糞悪くて仕方がない。責任者を呼びたまえ!


「他に聞きたいことはありますか?」


「どうせ話すなら俺の仲間になっちゃえよ」


「それはお断りです」


「だが断る」


 ぺらぺら喋るくせに何故仲間にならないのか理解できないのは俺だけだろうか?


「私は奴隷にはなりたくありません」


「捕まって拷問されるなら一緒じゃないか?」


「私は自分の心をなくしたくないんです」


「奴隷にしなくても人の心ぐらいすぐに壊せるぞ」


「……」


「部下になればある程度思うがままに行動できるしいいと思うぞ」


「隷属化すればあなたには逆らえないのでしょう?」


 そこまで知ってるの可笑しくないか? さっきダンジョンのシステムなんて分からないなんて言ってたけど、命惜しさに言い渋ってたのか?


「システム分からないって言った割に詳しいじゃないか」


「隷属化は奴隷商人の固有能力でもありますから、この場所で味方だった人が敵になってるなんて聞けば、誰だって想像はつきます」


 奴隷商人いるんだ……。てか奴隷の譲渡なんてできるのか? ああ、情報を聞けば聞くほどいらない考えで頭が埋め尽くされていく。


「なんにせよ時間はあるし考えておいてくれ」


「はあ……、森の民たる私が何でこんなことに……」


 返事をしないシアを放っておいて俺は1人ノイリの元へと戻る。ノイリを差し向ければ考えも変わるかもしれないし、遊ばせようと思う。


 ノイリの元へと戻って皆で遊んでいる彼女に、シアが遊んでくれるとノイリに伝えると「やった!」と喜び顔を輝かせて、トテトテと走って行ってしまった。


 一緒に遊びたくなってしまうが、俺が居れば純粋にシアが楽しめないだろうと考え直し、ノイリがいない間訓練に精を出す事にした。


 敵はどうせシアが帰ってこないから一度は偵察に来るだろうと見切りをつけ、敵に関してはもうしばらく待ちの体制を貫くことにした。


 どうでもいいことだけれど、俺剣の才能無いわ……。

ノイリ「はじめまして!」

シア「はじめまして御嬢さん」

ノイリ「おおー、ノイリ御嬢さん!」

シア「ええ、とっても可愛らしい御嬢さんですよ」

ノイリ「えへへー、お姉ちゃんもとっても綺麗だよ!」

シア「ありがとうございます。あの人の仲間とは思えないぐらい素直な子ですね」

ノイリ「どうしたの?」

シア「いえ、約束しましたし、一緒に遊びましょうか」

ノイリ「やったあ! 何して遊ぶ? じゃんけんぽん? けんけんぱ?」

シア「わからないので御嬢さんが教えてくれますか?」

ノイリ「わかった! ノイリが教えてあげるね」

シア「お願いしますね」

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