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恋愛四季 ~夏~

作者: 貴妃
掲載日:2011/10/01

思い出せなくなっただけで、忘れた訳じゃない。



君と出会った俺の心は何処へ向かうのだろうか。

〜夏〜


君と出会ってから季節が1つ過ぎた。


満開だった桜はやがて散り、葉桜に変わった。そして今は青々とした茂みになっている。


時折、その茂みから季節外れの花びらが飛んできて俺の頬を掠めた。その度に君の幻影が俺の脳裏をよぎった。切なさを感じながらも思い出すことすら叶わない。刹那さというべきであろうか。


俺は悶々と過ごしていた。


朝起きて朝飯も早々に家を飛び出す。いつもと変わらず退屈な授業を受け、仲間と他愛のない話をして盛り上がり、放課後は部活に直行。日増しに増してくる陽射しが俺の体を焦がしていく。身体の内側から熱い炎が上がる。そして、燃焼しきった抜け殻のような格好で家路に着く。何をどうしたのかも覚えておらず、気が付いたら夢の中。宿題なんかはその場しのぎで取りあえず提出。そんな日々の中に地獄のテスト週間も当然のように盛り込まれている。


そんな中、新しいカップルが次々と出来はじめていた。俺もとある悪友に「あてつけのナンパごっこ」に誘われた。でも君の幻影がまたもや俺の脳裏をよぎるため、寸前で思い止まった。意気地無し呼ばわりされて理由を話したら笑われた。


彼曰く、男女交際なんてお互い好きで付き合うのはほんの一握り、大抵は面子のため、「リア充」になりたいためとかいう不純な動機の上に成り立っているらしい。そこらへんに居るカップルも所詮そんなもんだぜ?





これじゃ、一昔前の不純異性交遊と同じじゃねーか。そんなんで付き合って楽しいのかよ。聞いてて呆れた。


俺は今にも消えてしまいそうな君の幻影に心の声を向けた。


君はどうなのかな?あてつけに男達からナンパされたら付き合ってしまうのか?


そんなどうにもならないことを考えながら心の中で泣いた。






そんな中、一筋の光が俺を射した。文化祭だ。俺達が通う学校は普通高校であり、大した見せ物になるような特典もないため夏に行われる。悶々とした日々から一時的に脱却できる。


文化祭の話し合いでクラスの壁を取っ払って全体で集まった。君に会える!そう単純に思ったのだが、この人だかりの中で幻影に変わり果てた君を探すのは困難だった。


しかし、傍らで何かの作業に勤しんでいる女子生徒に目が吸い寄せられた。目が合うと彼女も微笑んでくれるではないか!俺は思いきって声を掛けた。


「「あの」」


二人の声がハモった。


俺は彼女と少々話した。彼女に入学式直前の出来事について話し掛けられて、俺はまた有頂天になった。今目の前に居る彼女があの時の君だったなんて!


心の中で焦がれ続けた幻影と現実が合わさって1つになった。


現実を幻影に戻さないために俺は君に名乗った。すると君も名前を教えてくれた。


君との距離が心なしか縮まった。


文化祭の準備活動の度に君と顔を合わせるようになった。それとなく携帯のアドレス交換もし、すれ違えば微笑んで軽く挨拶するようになった。


そうして、俺の生活は少しだけ弾んできた。君ともっと仲良くなりたい、君の事をもっと知りたいと思うようになった。


偶然が偶然を呼び、君と一緒に放課後帰れるようになった。でも、お互い照れてしまって上手く話せなかった。





そうやって迎えた文化祭。一緒に校内を回ることは叶わなかったが、文化祭を陰で支える立場として君と過ごせたことは俺の誇りだった。


もちろん、お互いそれぞれの友達と回る事にしてたのもあるが、一緒に居なくとも心が繋がっていると感じていた為、幸せだった。


君があのような幻影に戻ることなく、今この瞬間が続くことを祈った。






文化祭もあっと言う間に終わり夏休みに突入した。


俺は来る日も来る日も部活に明け暮れた。君も趣味に熱中してたみたいだね。予定が合わず、熱い夏の一時を共に過ごすことは出来なかったが、メールのやり取りは続いた。


悪友からは「じれったい」と言われるが俺は俺だ。


このまま穏やかな日々が続く事を願うだけだ。


この幸せな時間が続くことを願っていたはずなのに……



この物語は作中で四季が一巡するまで続きます。

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