それいけ!マッチョマン
-某アメリカ合衆国
煌びやかなネオンが灯るラスベガスの夜。
そことは一転した狭く暗い路地裏で悲劇は起ころうとしていた。
「だ、誰か助けてー!」
ブロンドの髪をなびかせて駆けていくティンエイジャーのマリリンは友達とノリでベガスに来たらはぐれてしまい、道に迷ったあげく男たちに付きまとわれていた。
「へへへ待ちなよお嬢さん。」「どこに逃げるのさ~。」「・・・。」
マリリンはヒールの足下を絡ませ、ゴミ箱に向かってダイブした。
見上げるとそこは袋小路。三人の男たちはどんどん迫ってくる。
「一緒に遊ぼうぜ~」「げへへへ。」「・・・。」
三人の内、一人の男は寡黙であった。
「た、助けて・・・」
祈るようにマリリンは来るはずもない誰かに助けを乞うた。
「助けて!マッチョマンッー!」
「トーウ!!!」
目の前で誰かが落ちてきた、いや着地した。
「マッチョマンが来たからにはもう安心だ!!!」
マッチョマンと名乗る男はレスラーがしているようなマスクを被り、上はタンクトップ一枚で下は半ズボンだった。
足の毛が未処理な点を見るとオフシーズンだったかもしれない。
しかし、マッチョマンの登場により3人の男はたじろいでいた。
当然だ。その筋肉は一朝一夕で身につくものではないと一目で分かるからだ。
マッチョマンはこちらに向くと訪ねた
「今日はどんなトレーニングをするんだ!?」
「トレーニング?そんなことより私を助けてよマッチョマン!」
「ハハ!それは私の管轄外だ!」
マッチョマンは当然のように笑った。管轄外?
「ちょっと!助けに来てくれたんじゃないの!?」
マッチョマンは頬をかいた。
「君が呼んだから来たけど私は筋トレの補助しかできないんだ。」
「ええ・・・。」
マッチョマンは筋トレの補助しかできないらしい。その筋肉は筋トレの一点にのみに向けられていることに私は絶望した。
「こういうケースの場合は警察とか呼んでもらわないと・・・」
「なんとかマンが警察とか持ち出しちゃ駄目でしょ。」
「こんな時にマッチョマンとかいう変な名前の奴を呼ぶ方がどうかしてるよ。」
「確かに・・・。」
マッチョマンは正論を言って私を傷つけた。
「よりにもよってなんで私なんだい?」
「ネットの広告で見たから。」
「ネットの広告なんて信じちゃ駄目だよ。怪しいからね。」
お説教おじさんことマッチョマンは自分のことを棚に上げた。
「お前関係ないなら早く失せろよ!」「キヒヒヒ!」「・・・。」
追ってきていた男三人が野次る。
「でも女性が困っているところを見逃すのは男としても、マッチョマンとしても名が廃れるし・・・。」
「早く助けてよ!」
「こんな時に筋肉だけで決められるルーレットがあれば良いのに・・・。」
「あるわけないでしょそんな変なの。」
ピコンピコン、と電子音がマッチョマンのスマホから鳴り響いた。
「おっとすまない!タイマーがなってしまったからどうやら時間切れのようだ!」
どちらかというとネタ切れだった。
「私はどうすれば良いのよ!」
「さっきも言ったけど人を懲らしめるとか出来ないから・・・これから行こうとしていたウチのジムに来る?」
「ここよりマシそうだから行くわ!
「そうと決まれば!トーウ!!!」
マッチョマンが三人の男の脇を気を遣いながら通り抜けると大型バイクに跨がって帰ってきた。
「乗りなベイビー!」
ベガスの夜はまだ長い。しかし、明けない夜はないと今日マッチョマンが教えてくれた。
その後に私はジムでマッチョマンの補助の元筋トレに励み、次の日は全身が筋肉痛となった。
めでたしめでたし。




