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青春が最期  作者: 浜松
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第1章 入学式 第1節

 人間は生きるということに価値を見出した。そしてお金という存在が生まれた。働く対価としてお金がもらえる。この仕組みはよくできている。死なないために人は働きその対価を得る。他の動物と同じで人間は必死になって生きるための行動を知恵を持った今も続けている。



 僕の名前は氷室 賢理(ひむろ けんり)。人から好かれる性格ではなく、友達も多くはない。今までの人生は適当に過ごしてきた。ただ勉強は人よりできたし、よく取り組んでいた。

 

 今日は厚生双立高校の入学式の日だ。実は、この高校は自分が志望した高校ではない。母親がここに絶対に行かせたいと言ったので、受験したってわけで別に他に行きたい高校があったわけでもないし後悔はしていない。他の人は努力してきたんだろうが僕は違う。一つ、母親から伝言を預かった。

「              」

 この学校で必ずや皆勤賞を取ってやるさ。そういえば、ここへの移動方法が独特だったな。僕はそれに興味が湧き、正直この高校に入れてよかったと思ったりもした。普通の公立や私立よりよっぽどおもしろい生活が送れそうだ。


 二階から窓の外をみているとタクシーが一台家の前でとまる。インターホンの鳴る音が聞こえた。

「けんりちゃん、迎えがきてるから早く降りてきなさい。」

 もちろんのこと準備はすでに整っているので、すぐに階段をかけおりる。

「お母さんは後で行くからね。いってらっしゃい。」

 そう言った割には準備が全くできていないように感じる。化粧もしていないし、まだ寝起きといった感じだ。そしてなんといっても時間がない割に動きがゆっくりだ。

 タクシー運転手が僕にアイマスクみたいなものを渡してきた。タクシー運転手といえば、的な顔をしている。目に淀みはないがどこか無が混ざっているように感じる。

「つけろ。」

 命令形かよ。こんな言い方するのもそう感じる所以(ゆえん)だ。僕はタクシーの中に入るや否やすぐに渡されたものをみにつける。完全に固定されてしまい、闇が空間を支配する。こりゃ外せないなと悟った僕は深い眠りについた。思っている以上に中は快適で、僕が起きるともうそこは学校のグラウンドだった。そして周りにはたくさんのタクシーが綺麗な列を組んで止まっている。その異様な光景が目覚めてすぐの僕の瞳にうつしだされる。よく見たら全ての運転手が同じような顔つきをしている。周りは生徒しかいなく親のすがたは見当たらない。みんな困惑しながら辺りを見渡している。春を感じされるように僕の視界がピンクに染まっていく。

「入学式の会場はこちらです。押さないように気をつけて進んでください。」

 微かに聞こえた声の主を僕は探す。体育館の方をみると女性が声をかけていた。タクシー運転手に確認しようとしたがもうどこにもいなかった。好奇心がわいてきて消えたタクシー運転手とタクシーを探したかったがさすがに周りに合わせることにしよう。体育館に入ると、ぱっと見約半数くらいの人は座って静かに僕たちのことを待っていた。誰も微動だにしない。これが高校生といわれたら違和感のある光景。体育館内はまるで空気が固まっていて、真空のような状態だった。その中でも先生と思われる人たちはまだ終わっていない入学式の最後の準備をしているところだった。

「どこでもいいので赤色の席に座ってください。後ろの青の席は親御さんが座るので座らないでください。」

 僕が座るころにはもうほとんどの人が着席しており、ここで親と思われる人たちがゾロゾロと入ってきた。母親はどこにも見当たらないし、周りの生徒も自分の親を見つけれていないようにみえた。椅子の空き場所はど真ん中の一つしかなく、そこは通路の真横だった。

 僕は隣の女の子に話しかける。

「はじめまして、氷室です。これから3年間よろしく。」

急に話しかけると、びっくりした表情をしてそのまま固まってしまったが、その後すぐに笑顔になった。

「初めまして、小林だよ。よろしくね。」

 あまりかわいいとは思わない。だが決して、ブスと言いたいわけでもない。友達としてはうまくやっていけそうなタイプだな。そして僕は今になって今日のプログラムを確認する。


 目次

   校長挨拶    9時-9時10分

   休憩      9時10分-9時50分

   生徒代表挨拶  9時50分-10時

 

   クラス発表   10時-


   昼食配布あり



 休憩が長いのがすごく違和感だがそれ以外は普通だ。本来なら隣から聞こえてくる

「休憩ながすぎじゃ。」

 というツッコミが聞こえてこない。本当に母親はこの場に来ているのだろうか。来ていないならなぜ嘘をついたんだろう?それよりも問題は昼飯があることだ。早く帰りたいのに午後が確定しただけで憂鬱だな。

 

 そして、今に至る。

 少し周りが挨拶などでざわついてきたとき、

「黙りなさい。これではいつまで経っても始まらないわ。」

まるで猿にでも話しかけるように感情のこもってない声で生徒に呼びかける。生徒はその圧に負けて黙り始める。

「今から厚生双立高等学校第一期生の入学式を始める。礼。」

 先ほどの先生が進行を務めるのか。

「まずは、校長による挨拶。」

 なぜか見覚えのある顔の人が前に出ていく。記憶の中の引き出しを開けて今まで出会った人の顔写真付きのリストを確認する。半分くらいあけたところで見たことがないと脳が処理をした。僕は腕時計を確認すると、今は9時ちょうど。目次を見ると校長の挨拶が9時からとなっていた。予定通りというわけか。予定は10分まで、意外と話は短いのか。そして、僕はまた深い眠りにつく。次に目が覚めると、

「うわっ。眩しい。」

 つい声を出してしまうがみんな寝ているようで、誰も反応しない。別に聞こえても問題はなかったが少し安心した。

 

それにしても、校長の話が長すぎる。もう話し始めてから三十分ほど経っているのを、自分の腕時計をみて確認する。

「長すぎでしょー。私許せなーい。」

 これも聞こえない。予定より20分もずれていることに苛立ちを覚えながら目次を見直すと、この話のあと40分間の休憩があることを再認識した。ほんとうの休憩時間は多く見積もっても15分というところだろう。なので校長の話は最低でも35分が保証されてそうだ。

 「この目次を作った人の読み通りというわけか。」

 と心の中でつぶやくが、そこで一つ疑問に思ったことがある。なぜ、校長の話の時間をそのままにしなかったのか。一つ考えるとしたら校長の話を聞く必要がないと判断したから。つまり10分以降はふつうに休憩時間と考えていい。みんなが校長の話を聞いているだけなのだという謎の持論を展開し、勝手に納得する。起きてから聞いている内容でさえまったく意味のないことを話している。9時40分になるとようやく校長の話が結末を迎える。

「一同、礼。それでは今から10分の休憩とする。二分前には着席しておくように。」

 よっぽどムカついているのか、マイクがミシミシと音を立てていた。初めて先生が感情を出したように思えたが、声色は変わっていないし、表情も変わらない。人に感情がないだけで身震いするようなレベルの恐怖感が生まれる。腕を見ると毛が逆立っている。いわゆる鳥肌ってやつだ。僕の体は正直というわけか。

「あの先生こわーい。絶対担任にはなりたくないわね。懇談の時、地獄ジャーン。」

 脳内再生するがもう今は無視できる。

 重い空気の中、時間だけはいつもどおり進んでいく。寝ている人も大半で誰も動こうとはしない。隣を見ると小林はじっと手に紙をもってそれを見つめている。まとっている空気感が少し変わってように感じた。そしてまた僕も周りに合わせて眠りにつこうとする。最近はずっと家で勉強してたので寝不足だ。だが、それを邪魔された。

「45分となったが、今誰も席をあけていないので進行する。生徒代表の言葉。」

 司会を睨みつけ威嚇するが、心の奥までは届かない。

 そして、隣の小林が立ち上がる。こいつが首席なのか、僕は隣の通路へ彼女を出すために足を引く。本来は僕がいたとこに座ってすぐに通路にでる予定だったのに詰めるほかなかったと判断した。申し訳ないとは思いつつ、こうなってしまったら仕方がない。僕は心の中で応援もするが、流石に早く終わって欲しい気持ちの方が大きい。壇上に上がった彼女はさっきまでとはまったく雰囲気が異なる。これが本当の姿だと圧巻されている間に話が終わってしまう。そして、目次を見ると今からクラス発表が始まる。できれば平和なクラスで()()を過ごしたい。

「これからグラウンドに出て、クラス発表をおこなう。まずは親御さんから退出してもらう。退出してくれ。」

 一斉に親が立ちだした。そして、綺麗な列を組んで体育館から退出していく。様子を見ながら指示が出される。

「まずは後ろの半分の人はグラウンドへ出てください。そのほかの生徒は待っているように。」

 すると後ろの席の生徒が一斉に立ち、誰も押し合うことなく体育館の外へと出ていく。次は僕らが外に出る番だ。指示のあとみんなが一斉に動きだすと、椅子が少しずれたりする音が雑音として耳に入ってくる。先生たちだけが残った体育館は椅子だけが残っている。この空間を片付けるのが生徒でないことを僕は祈って、体育館から退出する。

一人の先生が生徒全員がグラウンドに出たことを確認してどこかに合図を送った。そして、校内放送がグラウンド中にも響き渡る。

「今からアイスブレイクをおこなう。理由はわかるだろ?クラスを決めるためだ。何も喋らずに誕生日順になって並んでもらう。先頭は1月1日で一列30人で並んでもらう。もし喋ることがあれば即停学とする。停学者はこれから起こることをすべて受け止めてもらいたい。制限時間は設けない。完了次第、一人が手を挙げてくれ。それではスタート。」

 一番前と一番後ろから並び出してくれる。自分が思っているように生徒は列を組む。僕は誕生日が九月と微妙な位置だから傍観する。制限時間は設けられていないのでゆっくりいこう。みんなスマホを取り出し連絡先を交換しあう。これだからスマホ脳は、と思いつつその発想を思いついたのは賞賛に値する。三人組が普通に話し始める。すると、すぐに先生が駆けつけて連行されていく。少しどうなってしまうのか好奇心が勝ろうとしたが、母親との約束を破るわけにはいかなかった。そして、なんと想像の二倍ほど早く並び終わった。僕は誕生日順に並んだ時に後ろの列なのだが、端っこをみると一つ場所が欠けている。さっきのやつらか。早くも出てしまったことをまずく思う。これが自分だったら母との約束が破綻し、もう一つの約束も果たされなくなってしまう。それだけは絶対避けないといけない。そして、放送が流れる。

「今から確認をおこなう。上空写真で位置は把握しているので、動いてもよいぞ。確認は5分程度で終了するが、クラス()()はもう少し時間がかかるので校内見学でもしてると良い。次の放送を聞き逃さないように。以上。」

 僕はみんなが校内へ行くのをグラウンドで待ち続けていた。そこにある少女が話しかけてくる。

「なぜあなたはみなと一緒に行動しないのですか。この高校に興味はないのですか。」

 こんな奴に話しかけてくるなんて相当曲者だなと思いつつも、まずは挨拶からだ。

「僕は氷室。3年間よろしく。君の名前はなんていうんだい。」

「確かに挨拶をしていなかったわね。私の名前は小早川。3年間よろしく。てなわけで質問に答えてくれる?」

 彼女の眼差しはすごく重い圧がある。僕はできるだけ答えないように仕向けようとするが、答えるまで終わらなさそうと感じ仕方なく、

「君はこんな学校の校内を見て興味が湧くのかい?僕はこの街の方がよっぽど気になるね。」

 これだから低脳はという意味も込めて毒入りの言葉をかける。だけど、素直な自分の考えだ。話終わった後、彼女を見るとグラウンドから見える街を眺めていた。ここに氷室なんていないように話しかけても無視をされた。少し経ったあと、また話を始めようとする彼女を遮るように放送が流れる。

「たった今クラスが決められた。直ちにグラウンドに集合し先ほどの列に並び直すように。」

 放送の終わりの音を聞くとすぐに彼女が先ほどの話を続けてくる。

「私ははっきり言って怖い。ここでの生活がどんなものになるかもまだ聞いてないし。不安がいっぱいだけど氷室くんがいたら安心する。君が私の最初の友達ね。」

 勝手に友達認定されたが僕はまだしていない。関係値が低すぎるな。そんなわけで、

「一回お互い元の位置に戻ろっか。遅くなったら迷惑だしね。」

 これで一旦距離を取ることにする。きっとこれだけの人数がいれば同じクラスになることなんてそうそうないだろう。そこには絶対に同じクラスにはなりたくないという思いも込められている。全員が集合したのを確認したのち、また放送が流れ出す。

「今から個別にクラスと出席番号を発表する。方法は支給される腕時計にメールが届く。そしてそれを確認したのち、地図も配られているのでそれをみてそれぞれの教室に行くように。」

 なるほど、今の腕時計はここまで進化しているのかと、感心もするがどうせつけたらさっきのアイマスクみたいに外せなくなるに決まってる。そして一人ずつ丁寧に説明をして腕時計を先生がつけていく。一つの列に一人ずつ先生がついているので、案外すぐに作業が進む。

「クラスに上とか下はありますか?あるなら教えて欲しい。」

 僕の番になったらすぐに質問を投げかけた。少し戸惑いつつも、

「『上のクラスは最高に楽しい青春を、下のクラスは堅苦しいが人によっては恋愛のクラスになるだろう。成績がすべてだ。』と校長はおっしゃっていた。」

 瞬時に理解した。校長とは意気投合できそうだ。Aが一番高いクラスではなく、最高に楽しい青春を送ったのが上のクラスと認定されるのだと。自分の腕時計を外す。成績が全てか。青春を謳歌する必要もあるってわけだな。

 そして、自分のクラスと地図で教室の位置を把握する。

「Aクラス、出席番号は31番。」

 このつぶやきはだれにも聞こえず、最後列の生徒はみな校舎の方へと歩き出していた。

 

 

 

 

 

 

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