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拳聖スケルトンの成り上がり ~俺を裏切った元仲間達をぶん殴る~  作者: 結城 からく


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3/3

後編

 あれから何年が経過しただろうか。

 途方もない鍛錬の果てに、俺は迷宮最下層のさらに先まで潜っていた。

 光源のない下り坂を進んでいくと、金属製の大扉が見えてくる。

 俺は助走をつけて大扉をぶん殴って破壊し、広々とした空間に足を踏み入れた。


 そこには数十体のエルダーゴーレムが待ち構えていた。

 ゴーレム達は規則的な動きで一か所に集結し、複雑な変形と合体を繰り返す。

 出来上がったのは一体の巨大なゴーレムだった。

 纏う魔力は膨大で、対峙するだけでぴりぴりと骨の身体が痺れる。

 同じ魔物として、圧倒的な格の違いを感じた。


「おお、感謝するぜ。図体がデカいと殴りやすいんだ」


 蓄えた魔力で疑似的な声帯を形成した俺は、喜びを声に出した。

 全身を巡る魔力の出力を一気に上げて戦闘態勢に入る。


 巨大なゴーレムは右手をゆっくりと掲げた。

 そこから無造作に腕を振り下ろしてくる。

 単純明快な攻撃……それで俺を叩き潰すつもりらしい。


「俺と拳の勝負か! 上等だァッ!」


 拳が衝突し、凄まじい衝撃波が発生する。

 一瞬の拮抗を経て砕け散ったのはゴーレムの拳だった。

 派手な金属音と共に肘の辺りまでバラバラになって崩れていく。


「脆いな! もっと鍛えろ!」


 俺は大笑いして疾走し、追撃の拳をゴーレムの胸部に叩き込んだ。

 内部の核が割れたエルダーゴーレムは機能を停止し、地響きを立てて倒れる。


 着地した俺は自らの拳を確かめる。

 倒したばかりのゴーレムの力が流れ込んでくるのを感じた。

 祝福の効果でまた拳が強化されたのだ。


「……生きてた頃の二割弱ってところか」


 全盛期に比べればまだまだ弱い。

 それでも蘇った当初よりはマシになった。

 ただのスケルトンにしては規格外の強さと言えるだろう。


 さて、この迷宮で最強の魔物を倒した以上、長居する意味もない。

 鍛錬するならまた別の迷宮へ向かう必要がある。

 何より騙し討ちで俺を殺して力を奪った元仲間達……あいつらに痛い目を見せないと気が済まない。

 最低限の実力を取り戻したので、そろそろ復讐を視野に入れた行動も取るべきだろう。


(スケルトンの身体で外に出たら騒ぎになりそうだが……まあ、なんとかなるだろ)


 俺は細かいことを考えるのが苦手だ。

 頭より体を動かしたい。

 今後の方針を定めた俺は踵を返して地上を目指す。


 ――これは、俺が"拳聖スケルトン"と呼ばれるまでの物語である。

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