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拳聖スケルトンの成り上がり ~俺を裏切った元仲間達をぶん殴る~  作者: 結城 からく


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1/3

前編

 Sランク迷宮の最下層。

 立ちはだかるエルダーゴーレムに対し、俺は正面突破を選択した。

 拳を構え、雄叫びを上げながら疾走する。


「オオオッ!」


 全身全霊の魔力を乗せた一撃が、古代魔法金属で構成された巨体を捉えた。

 七色の光を迸らせる拳がエルダーゴーレムにめり込み、一気に打ち砕く。

 大穴の開いたエルダーゴーレムは立ち上がることなく沈黙した。


 巨体から滲み出した魔力が拳に吸い込まれてる様を見て、俺は満足して微笑む。


「ハハッ、悪くねえな」


 その時、胸に鋭い痛みを覚えた。

 見れば血みどろの矢が生えている。

 俺は堪らず倒れた。

 少し遠くから声が聞こえてくる。


「敵の力を吸収する瞬間、あなたは油断し、攻撃が通りやすくなる。仲間の不意打ちなら尚更ですよね」


「お、お前ら……一体何を……ッ!?」


 霞む視界に映ったのは、三人の仲間達だった。

 リーダーの魔剣士ユージンはクロスボウを持って言う。


「矢にニーズヘッグの麻痺毒を仕込みました。いくらあなたでも動けないはずです」


「畜生が……」


 俺は地面を掻いて立ち上がろうとする。

 しかし毒のせいで力が入らない。

 クソが、確かに俺は油断していた。

 いつもなら察知できていたはずの矢を避けられなかったのは、ボスモンスターの討伐で気が緩んでいたからだった。

 まさしくユージンの指摘通りである。


「拳聖ロドン。僕達はあなたの能力が羨ましかった。戦いを重ねるほど力を増すその拳……その素晴らしい祝福を独占するなど、あまりに傲慢だとは思いませんか?」


「そうよそうよ。戦闘以外は役立たずのオッサンのくせに」


「汗臭いし汚い……声もうるさい……」


 残る二人の仲間、リンとセレーナが蔑んでくる。

 彼らの言葉に俺は激しい怒りを覚えた。


(実力差があるのは、お前らが鍛錬をサボってるせいだろうが! 戦闘だって何かと理由をつけて俺任せだ! そんなんだからいつまで経っても強くなれねえんだよッ!)


 思い切り怒鳴ってやりたいが、舌が上手く動かない。

 頭のボンヤリしてきた。

 これは、本当に不味いぞ。


(腰の袋に解毒薬を入れておいたはずだ。あれを……どうにか……飲まないと……)


 ユージンがゆっくりと近付いてくる。

 クロスボウを捨てた手には、代わりに禍々しい黒い短剣が握られていた。


「先日、祝福を奪う呪具を手に入れました。これであなたの力をいただきます」


「ま……て……」


「安心してください。拳聖の能力が僕達が有効活用しますから」


 振り下ろされた短剣が、俺の眉間を突き立てられた。

 俺の視界は闇に染まった。

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