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  作者: korudo
和解と出会い
4/18

春 4月12日 夕

 時間は瞬く間に過ぎ去り、午後の授業はベルと共に終わった。


 なぜか分からないけど、SNSやメールで久しぶりに会う人と待ち合わせをすると、ネット友達とオフ会するような感じがする。


 中庭を抜け、特別棟の非常階段出口へ回り込むと、学校の裏門に向かう不思議な空間がある。裏門は普段閉ざされているため、ほとんど人が近づくことなく、ここを昼食時の独り占めの聖地としている。


 では、璃茉(りま)はいったいどうやってこの場所を知ったのだろう?僕はいくら考えても、来たばかりの彼女がどうやって僕の行動を把握したのか、さっぱりわからなかった。


 日没までまだ少し時間がある。風も止み、特別棟と学校の柵の間に響くのは僕の足音だけだ。目的地がすぐそこに見える中、携帯を取り出して璃茉に「着いたよ」とメールを送る。すると角を曲がった先の静かな空間から、聞き慣れない着信音が響いてきた。


 肩にかかるほどの黒いショートヘアは、先端だけが軽く跳ねており、整った前髪が眉を隠して目の上までかかっている。小さな銀色のヘアアクセサリーが、なめらかな髪の毛の間にさりげなく留められている。


 細長く切れ上がった薄灰色の瞳には、記憶の中と同じ、かすかな距離感が漂っていた。足音に気付いて、こちらの方をちらりと見たのは —— 璃茉だった。


「こんにちは、璃茉。久しぶりだな」

「…うん、こんにちは。兄」


 その呼び方も久しぶりだ。このあとは璃茉に帰り道を教えて、引越し後のあれこれを手伝うつもりだった。そう考えていたのに、璃茉はなぜか少し硬くなったようにその場に立ち尽くしていた。


 以前一緒に過ごした経験が教えてくれる —— これは何かを言い出しにくがっている時の彼女のサインだ。


 女性と会う時、場を和ませるには大抵二つの選択肢がある。一つは軽いボディタッチ、例えば握手やハグといったものだ、もう一つは相手の服装を褒めることだ。ならば、すべきことはおのずと明らかだろう。


 彼女の服装を褒めろう。


「ハグしましょう」

「ハグ…?」


 璃茉は首をかしげ、少し戸惑ったような視線を投げかけてきた。間違った。言い直そうとしたその時、彼女は足を動かし、ゆっくりと僕に向かって歩き出した。


 目の前まで歩いてきた彼女は、両腕を広げるにつれて、二人の距離は一からゼロへと縮まった。他人の体温と柔らかな感触が胸の中で広がり、璃茉の小さな体は僕の肩までしか届かず、かすかに漂う独特の香りがゆっくりと鼻腔に染み込んでいった。


 少し躊躇ってから、僕もそっと両腕を彼女の背中に回し、その抱擁に応えた。温かな鼓動が、ゆるやかな夕風の中で一つに響き合っている。


 体温が僕の懐から離れ、二人の手が申し合わせたようにお互いの身体から引き上げられた。懐には、ただ残された感触だけがゆらめいている。


「兄、一つ聞いてもいい?」

「うん、何?」


 距離を置き直した璃茉の表情は平静そのものだが、先ほどまでの硬さは跡形もなく消えていた。おそらく質問の内容は僕の想像と同じだろう。


 そうだよな、彼女が気づかないはずがないし、黙って見過ごすはずがない。


「兄と信子姉さんの間…何かあったの?」

「ああ…些細なこと…かな…」


 第三者に説明するのは思った以上に難しかった。()()()()について、僕はもうほとんど何も感じていなかったから。


 これは自分を騙しているのでも、強がりなのでもない。たとえ思い返してみても、心に浮かぶのは微妙な不快感だけだ。僕が遺憾に思っているのは、間違いなく()()()()()()そのものであって、()()()()自体ではない。


「とにかく、機会があれば説明する。心配しなくていい、すぐ終わりするから」

「そうか…」

「終わり」という言葉が口を離れた瞬間、僕の心はかすかに痛んだ。


 適当に扱われた不满なのか、仲間外れにされた寂しさなのか —— 璃茉がわずかに伏せた瞳は数秒私を見つめた後、空へと移った。


 これは彼女が何かを考える時の癖だ。その距離感に感謝しながら、僕も彼女の視線を追って空を見上げた。


 校舎の一角から運動部の掛け声が遠く聞こえてくる。静寂が二人の間に広がっていった。


「では行きましょか。やることは山積みだから、時間を稼がないと」


 そう言って僕はくるりと背を向け、正門の方へ歩き出した。一拍遅れてついてくる璃茉は階段に置いた鞄をさっと取り上げ、鞄を持たない僕の右側に並んだ。


 璃茉と僕はスーパーへ続く住宅街の坂道を並んで歩いていた。いつしか同じ構図の中で、沈黙に取って代わられた三人目が存在していたのだ。


 璃茉の突然の問いかけが、深淵に投げ込まれた石のように、この薄氷のような静寂を打ち破った。


「兄、あの後で信子姉さんと連絡取った?」

「いいえ、連絡どころか直接話すことさえなかった」


 僕は顔を上げた。


 四時過ぎの空は、なんとも不思議な色をしていた。昼間の紺碧が夕焼けの暖かい橙色に少しずつ浸食され、薄められていく。まるで未完成の水彩画のようだ。


 陽光はすでに真昼の鋭さを失い、柔らかく傾きながら、咲き始めた枝垂れ桜を半透明の桜色に染め上げている。


 木漏れ日が花葉の隙間から僕たちの足元のアスファルトに躍り、揺れる金色の小銭のように砕け散った。


「だっよね、メールアドレスまで変えたんだね」

「ハハ…」


 なぜだか、こっちを見つめる璃茉の瞳には、少しばかり怨めしげな色が浮かんでいた。


 僕と信子の間の隔たりも、メールアドレスを変えた理由も、結局のところどうでもよい些細なことだった。


 こんなどうでもよい些細なことさえ素直に向き合えないのは、僕が本当に変われなかった証拠だ。


「起きたことでも、結末のあり方でも、二人だけのもの。だからこの言葉しか言えない」


 璃茉は僕のそば、一歩後ろの位置を並んで歩いていた。


「どんなことになっても、わたしが二人を応援してるから」

「そうか、ありがとう」


 角を曲がると、スーパーの見慣れた青看板が目に入った。生活はいつだって続いていく。今夜の食材を買いに行かねばならないように。

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