春 4月12日 朝と昼
起きて洗顔し終わるまで、朝食の準備から食べ終わるまで、家から学校まで、それぞれ完了する魔法のような15分。
僕の人生で 15 分の登場率はなぜこんなに高いんだろう。
さって、15分にメールで璃茉との連絡付けろ。こう思う、スマホを取り出し、昨日鈴さんからもらったアドレスを宛先にしたメールを編集していた。
『お久しぶりです。こちら八鳥海月です、予定している例の場所で合流しますが、間違いはありませんか?』
「送信」ボタンの上で指先が固まった。親戚同士だとしても、女の子にメールを送ると寸步も動けなくなるこの呪い、僕にまで効いてるのか!?
頭の中にだけ存在する冗談は、どうしても笑いが出ない。これくらいも何度も経験したながら、今更緊張はしない。
送信後、一生返事が来ないかもしれないと思い、悲しみに飲まれた。
『うん』
思いがけないことに、返事がすぐに来た。相手も HR の前のこの時間、適当で過ごしていたのかもしれない。本人の印象に合った簡潔な返事を確認した後、スマホをしまい、文庫本を取り出して読み始めた。
メールのやり取り、前回やったのは随分前のことだ。鈴さんとは基本的に面談で、両親に至っては、僕をほったらかしにしてくれて、定期的に「生きてる?」ってメールを送ってくるだけだ。ひどい。
自分で自分を定義するなら、陽キャでも陰キャでもない。誰とでも普通に交流できる自信はあるが、それに興味がない。
人間という社会性生物にとって、“他人”の存在は必要不可欠だ。社会における分業であれ、単に社交行為からエネルギーを得る場合であれ。
学生にとって、会話の構成は基本的に変化や進歩への欲求から成り立っている —— つまり、日常と学習だ。
だがその反面、僕と他人との交点はだんだん消えつつある。
変わることのない日常、学べることももうない。きっと、会話が僕を成長させなくなったその瞬間から、他人は僕にとって必要ではなくなったのだろう。
自ら他人を捨て去ったのは僕だから、今のこの局面になっても、何の文句もない。
ただ、やはり欲しいんだ —— 変化。
再び後悔という遺憾を残したくなく、「もしも」と何度も自分に問いかけることを悔やみたくないから、成長は僕にとって必要不可欠だ。
だから、中三の転校以来、様々な人々との交流を重ね、経験を積むことを繰り返してきた。当初は色んな不確定要素に直面し、これらの関係を維持するために壁にぶつかったが、それでも多くのことを学び、大いに裨益した。
他人の視線を分析し、表情を読み取り、自分を傷つけず、他人も傷つけない境界線の上を行ったり来たりしている。
人間関係において僕が投げ込んでいるのは、いつの間にか理性だけになっていた。気がつけば変化は停滞し、他人に対する僕の必要性ももうなくなっていた。
誰の顔色を窺い、誰の機嫌を取り、繋がりを保ち、話題に合わせる —— 僕はただこの関係を製造し維持することを繰り返しているに過ぎない。
これでいい —— そんなことで自分を欺くことはできない。何しろ、欺瞞を最も厳しく憎むのは僕自身だからだ。
心を打ち問いかければ、僕が本当に欲しいのは何だ?後悔と遺憾しかいないこの関係を変わるという能力。
本の内容が頭に入ってこなくて、うんざりして首をほぐすために上を向いた。頭を動かすと共に移る視線の先に、教室の片隅が映り込み —— そこには僕の遺憾がいた。
信子も同じように頭を下げて読書をしていた。視線を感じ取った彼女は顔を上げ、こちらを見つめた。おそらく視線の主が思いがけない人だったのだろう、今回は信子が視線をそらさず、茫然と僕の目と合った。
読書のために前髪をかき分けたその顔は、メガネ越しの瞳がはっきりと見えた。思わず苦笑いしてしまい、彼女はこの笑みに困惑し、当惑する視線を送ってきた。この関係に句点を打とう —— 僕は心の中でそう決めた。
こうすれば、ついに変化を迎えられるだろう。
ベルが何度も鳴り響き、時間は瞬く間に過ぎ去り、今日もまた変わることのない朝だった。
……
昼食を食べる気がしなくて、気分を切り替えるため図書室に向かった。本ってすばらしいな、本は心を潤すんだ。
一冊ずつ読みたい本を選び、放課後にまとめて借り出す —— この怪盗のような行動の前の偵察時間も、僕の宝物だ。
だが今日の放課後は既に約束があるので、行動は明日に延ばさざるを得ない。
本棚の間を通り抜けると、視界の片隅に女生の姿が現れた。黒いセーラー服と、後ろで束ねた美しい黒髪が非常に調和しており、白いリボンは三年生の象徴だった。
目標の本棚は同じく哲学分野で、近づくと同時に彼女の横顔をぼんやりと見ることができ —— 白い大きなヘアクリップで前髪と側髪を留めている、読書好き特有のヘアスタイルだった。
髪の色、肌の色、瞳の色、服の色、彼女の身上には、黒と白だけが存在していた。
綺麗な人だな。
話しかけするつもりのない相手には、視線を 5 秒以上停めないのが僕の原則だ。続けて本を選ぼう。
先輩も僕と同じように本棚を見下ろしているが、一冊も本を取り出さない。先輩も「予告状派」なのか?
《朝焼け》《吾輩は貓である》《野草》《実妹生活》《ラブレター》
本のタイトルと置かれている本棚の位置を頭に覚え込ませる間に、この先輩が影のようについてきている。読みたいジャンルが意外にも全部一致 —— 超雑食派の同士はそうそういない。
思わず先輩に対して自然と親近感がわくが、相手がどんな本を選んだのか好奇心はあっても、会話はやめておこう。
僕は図書室の入り口に向かい、当番の図書委員にそっと会釈をした後、残り半分の昼休みを過ごすため、あの場所へ向かう。




