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心と成績の試練

廊下での噂話がまだ止まない中、結人ゆうたまい、エリカ、ゆき天音あまね出雲いずみは教室へと入った。


注目する視線が彼らを追い、席についてもざわつきは止まらなかった。


ほどなくしてチャイムが鳴り、教師が入室。教室に秩序が戻る。


「みんな、静かに。今日は二つ、お知らせがあります。一つ目は、今週金曜日に数学の週テストを行います。もう一つは……先月の月例試験の結果が出ました」


成績表を取り出した教師が、少し意味深な笑みを浮かべて言った。


「そして驚くべきことに……高校に入って以来、初めて雪さんをすべての科目で上回った生徒が現れました」


「えぇ!?」「嘘でしょ?」「そんなのアリ?」


驚きの声が飛び交う中、教師は静かに一人の生徒を見た。


「その生徒は……鎌戸結人くんです」


「え? 結人?」「去年は影の薄かったあの子が!?」「雪さんに勝ったなんて…」


雪本人も目を丸くして結人を見た。彼は気まずそうに頭をかいている。


全科目満点。それが鎌戸結人の成績だった。


雪も90〜98点という好成績だったが、今回初めて誰かに抜かれたのだ。


(すごい……彼って、優しいだけじゃなくて、こんなに頭も良かったんだ)と雪は微笑む。


一方で、エリカは机に突っ伏していた。「また……落ちた……」


教師の声が響く。「エリカさん、天音さん、舞さん、出雲さん——もっと注意しなさい。特にエリカさん。次の週テストで不合格なら、二週間後の修学旅行には参加できません」


「えっ……旅行行けないの……?」


ショックを受けたエリカは結人を見つめる。「ゆうた……お願い、勉強教えて。もう失敗したくないの」


教室が一瞬で静まり返る。


みんなの視線が結人に集中する中、彼は優しく微笑んで言った。「大丈夫、エリカ。僕がついてる。絶対合格させる」


その一言に、また教室がどよめく。


「今の……告白みたいだったよね?」

「まるで少女漫画の主人公じゃん…」


赤くなるエリカ。


(どうしてこんなにかっこいいの……?)


(なんで毎回、こうなるんだ……)結人は困惑していた。


——そして、また一つ、彼に注目が集まった。


***


放課後。


生徒たちが帰り支度をしていると、教室の入口が影に覆われた。


背の高い三年生数人が立っている。


「生徒会の連中……?」「えっ、結人に何の用?」


天音と出雲が立ち上がり、舞は顔をこわばらせ、雪は鋭い視線を向ける。エリカも警戒して立ち上がる。


だが——


三年生たちは深く頭を下げた。


「か、鎌戸結人さん。お願いがあります」


「は……はい?」


「我々のグループから、生徒会副会長に立候補していただけませんか」


「えっ……?」


「あなたは二年生なので、会長には立候補できません。しかし副会長であれば可能です。そして、あなたの存在は今や学園全体に影響を与えるほどです」


教室が再び静まりかえる。


「我々には対抗勢力もいますが、あなたがいれば勝てる。そう確信しています」


結人は頭をかきながら言った。「すみません……興味ないです」


「えっ、断るの!?」


「注目されるのは苦手なんです。静かな学園生活がしたいだけなので」


三年生たちは戸惑いながらも頭を下げ、立ち去っていった。


結人はため息をつき、友人たちに向かって言った。「夕食の買い物、行ってくる」


***


帰宅後。


家にはおいしい匂いが広がっていた。皆が食卓に集まり、料理に舌鼓を打つ。


「うまっ!」「でしょ、シェフくん最強」「この料理と結婚したい」


「結人、料理引退禁止ね」「いつもありがとう……」


「今日は手伝えなくてごめんね」と雪。


「試験の答案、採点ミスないか確認してたの」と真面目に答える。


「さすが雪」と笑う天音。


「結人、お前は見直した?」


「必要ない。満点だったから」と得意げな笑み。


「ちょっ……ムカつく……次は勝つから」と頬をふくらませる雪。


「じゃあ、楽しみにしてる」


笑い声が家に広がる。


***


食後。


「エリカ、約束したよね。勉強始めよう」


「はいっ、先生!」


二人はテーブルで勉強を始める。真剣な空気が流れる。


それを見ていた天音は、少し寂しそうに笑う。


(あいつ……変わったな。本当に成長した)


「我が親友、成長中だな……」と小声で呟く。


***


数時間後。


エリカは勉強に手応えを感じていた。だが——


パジャマ姿の彼女が美しすぎて、結人は集中を失いかけていた。


(ダメだ、集中しろ……!)


「今日はここまで。よく頑張ったね」


「うん……」とエリカは眠そうに頷き、そのまま——結人の肩に寄りかかって寝てしまった。


(な、なにこれ!?)


選択肢を考える。


1. このまま寝かせる→風邪ひきそう

2. 部屋に運ぶ→指紋ロックで無理

3. 誰かを起こす→迷惑


最終手段:自分の部屋で寝かせ、自分はソファへ


そっと彼女を抱き上げ、ベッドに寝かせる。毛布をかけて部屋を出ようとした瞬間——


エリカが無意識に彼の服を掴む。


「おやすみ、エリカ」


彼は優しく微笑み、そっと部屋を出てソファで眠った。


***


翌朝。


目を覚ましたエリカは自分が結人の部屋にいることに気づき、赤面する。


ドアを開けた瞬間——


「えっ!? エリカ!? 結人の部屋で寝たの!?」と舞の声が家中に響く。


雪、天音、出雲が集まってくる。


「何があったの!?」「マジ!?」「信じられない…」


朝ランから帰ってきた結人。「何の騒ぎ?」


彼は冷静に昨晩の経緯を説明する。


皆が納得し、空気が落ち着いた。


エリカは俯いて言う。「ありがとう、結人」


彼は微笑んで答える。「気にしないで」


その様子を見ていた雪は、そっと胸に思いを秘めた。


(私も……結人と夜勉強したい)


***


一週間後。


週テストの結果が返ってきた。


結人はまたもや満点。


「さて、トップの雪さんは?」と挑発する。


「なによ……生意気」


「その顔じゃ点数伸びないよ?」


そしてエリカに視線を向ける。


「エリカはどうだった?」


彼女は照れながら答案を見せる——天音、舞、出雲より高得点だった。


「すごい!」「マジで合格した!」「結人すごっ!」


エリカは満面の笑み。


そこに教師が入ってくる。


「はい、みんな静かに。大事なお知らせがあります」


「来週、修学旅行を実施します。行き先は——富士山。そして、各グループのトップ成績者がグループリーダーです」


舞がにやりと笑う。「つまり——リーダーは結人ってことね」


「え、オレ!?」と戸惑う結人。


皆の顔を見渡すと——雪が小さく頷いた。


(あなたなら大丈夫)


彼の心が落ち着く。


「……うん、やってみるよ」


***


《次回予告:富士山修学旅行編スタート!新たな絆、秘密の瞬間、そして思わぬサプライズが待っている——》



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