夢でまた会えたのなら
「律、私ね。がんばらないって決めたの。
だって存在してること自体もうがんばっているから」
くすっと伊織は笑って誰にともなく
いや律に対して投げかける。もう逢えないとは思っているが。
「これ以上がんばったら壊れちゃうでしょ?
みんな言ってくれるんだ。生きてるだけでえらいって」
「そうだな。伊織はえらいよ」
律は微笑みながら伊織の頭を撫でる。
「もう逢えないと思ってた」
「俺はいつでもお前の傍にいるよ」
でもね私、律とお別れしなきゃ。いつまでも頼ってるわけにはいかないでしょ?」
「俺はかまわないが」
「私が困るの!現実と向き合わなくちゃ。だからね、ばいばい!
またねなんて言ってあげないんだから」
「そうか、俺はお前の拠り所になれていたか?」
伊織は満面の笑みを浮かべて
「当然!」
右手の人差し指と中指二本の指をたてた。
律、キミは私の妄想だったかもしれないけど
私はキミに救われた。
私の病気は一生治らない、薬を飲み続けないといけないって主治医から言われてるけど私はがんばって生きていくよ。
生きる事ぐらいはがんばらないとね。
それから本音を言うとキミとずっと一緒にいたい。
キミに甘えたい。
キミの声を聴いていたい。
でも私は現実世界を生きていかないといけない。
だからーーーー
ありがとう、さようなら
律が大好きだったよ。