目覚め
「私…」
どれくらい眠っていたのだろう
伊織はベッドから起き上がろうとしてそういえばと思い起こす。
「拘束されてるんだった」
はあ。と溜息をつく。やらかした。完全にやらかした。と。
「伊織さんー、お加減はどうですかー?」
ガチャと部屋の鍵をあけて、モニター越しに起きたのがわかってきたのか
はたまた、たまたま巡回の時間だったのか看護師さんが覗いてきた。
「最悪な気分です」
「まあそうでしょうねー」
「あのこれっていつとれるんですか?」
「そうねー。主治医の先生の許可次第ですねー。ちなみに今日はもう金曜日の19時なので伊織さんの主治医の先生が来るのは月曜日ですー」
語尾を伸ばすのが特徴的な女性の看護師さんだった。
「もうすぐとれますよー。ふぁいとですー。では私はこれでー。また20時頃巡回にうかがいますねー」
どうやら巡回の時間だったようだ。
ガチャと鍵をかけて看護師は行ってしまった。
律にはもう逢えないな。
全ては妄想だった。
夢でもなく。
そして夢を自由に操れるなんて事も誇大妄想。
また睡眠不足になって誇大妄想になれば逢えるかなと
不謹慎な事を考える。
「律に叱られそうだ」
ふふっと伊織は笑みが溢れた。