9:お肉の確保が最優先。
薄暗い中、バチィッと目が覚めました。
――――また!
夜ご飯のあと、レオン様は屋敷の方の執務をするとのことで執務室に向かわれました。
私は、主寝室のソファに座り、本を読んだりしつつレオン様が来られるのを待っていたのですが、起きたら、ベッドの上。
隣にはこちらを向いてすやすやと眠る、ダークアッシュヘアーのレオン様。
またもや寝落ちしていました。
やってしまったものは仕方ない。起きましょう!
私室の横にある衣装部屋に向かい、白シャツ、白ベスト、白ズボンなどを身に着け、膝下までのブーツを履き、しっかりと髪の毛を縛ったら、ハンティングピンクの狩猟服を羽織りまた。
腰にロープやナイフ、剣を下げたら準備万端。
「さて、行ってまいりますわね」
「おおおお奥様!?」
後ろで侍女がなにか狼狽している気がしますが、まぁ止められないのでいいでしょう。
颯爽と朝の狩りに出かけようと玄関を出たところで、大慌ての執事が追いかけてきました。シャツとズボン、ジャケットは羽織っていますが、髪がボサボサです。彼も起きたばかりかしら?
「奥様! 早朝からどちらに行かれるのですか!?」
「狩りだけど? 侍女に伝えていたでしょう」
「……はい? え、本当に狩りに? 一人で?」
一人で行ったら駄目だったのかしら?
執事が、レオン様を呼んでくるからここで待っていて欲しい、と必死に言い募るものだから、仕方なしに頷き、玄関でレオン様をお待ちしました。
許可を取らねばならなかったのなら、昨日のうちにいただけばよかったですね。わざわざ眠っているのを起こすのに気が引けていましたのに。
段々と朝日が昇りだしましたねぇ、朝の狩りは中止かしら? と空を眺めていましたら、寝間着の上からガウンを羽織ったレオン様が慌てて走ってきました。
「クラウディア! 家出をしようとしていると聞いたが!」
――――何故!?
何故に、そうなるのですか。ただ日課の狩りを再開しようと思っただけですのに。
そうお伝えすると、レオン様がキョトンとされました。
「何故、狩りを?」
「ええ、昨晩レオン様が屋敷の奥のことは私に任せると仰いましたよね?」
「……言ったが………………日課? 狩り? すまないが、順序立てて話してくれ」
昨晩、屋敷の運営を任せていただける事になりましたので、とりあえずお肉の確保が優先度一位ですし、日課を再開すべきと判断したのです。
辺境伯領は、まだまだ地形を把握していないので、先日の狩り場付近から探索を始めようかと思っていました。
「…………肉の確保が優先度一位……とりあえず、私も同行する。着替えてくる」
レオン様がそう言い残し、走って屋敷の中に戻って行かれました。
つまり、狩りに行って良いということですよね?
たぶん準備はそんなにかかりませんが、時間が惜しいです。
先に行っていても、いいですよね?
――――ね?