76:王都。そして、リーツマン伯爵家。
王都へはレオン様たちのスピードに合わせることにしました。荷物は実家にわりと置いてきたので、着替えなどは最低限の数で大丈夫のはずです。
お父様が処分している可能性もワンチャンありますので、そのときはシバき倒す所存です。
レオン様が短期決戦を望まれたので、できる限り長時間移動をすることにしました。
馬車二台での移動にはなりますが、侍女なしで執事と四名の騎士たちが同行になりましたので、二泊三日という強行軍です。
「大丈夫か?」
食事休憩の際にはレオン様が心配そうに聞いてくださいます。きっと私がストレッチをしたり、おしりを撫でていたせいでしょう。
馬に乗るのは慣れているのですが、馬車にはあまり慣れておらず、どうしても腰とおしりが怠くなってしまいます。
ヴァルネファーの屋敷から持ってきていたロールサンドや燻製肉を頬張りつつ、大丈夫ですよと言う気持ちを乗せて頷きました。
ロールサンドに挟まれた竜ハムや、竜ミートボールが美味しすぎて、咀嚼に大忙しなのです。
「ぷはっ。ふぅ。美味しいですね」
ちょっとだけ残念なのは、竜ジャーキーが自分で作れなかったこと。
料理長に任せていれば間違いはないのですが、携わりたかったですし、摘まみ食いもしたかったです。
あと、熟成肉作りもしたかったです。
帰領予定時にはまだ熟成中なので、食べれはするのですが……。
かといって、レオン様をお一人だけ向かわせたくもありませんし、お父様をツンツンしたいですし。
とても悩ましいタイミングでした。
ほぼ仮眠と馬を休めるためだけのような宿泊は、その意図の通り泥のように眠ってしまい、『お泊り旅行』みたいな感覚はゼロでした。
ただ、その甲斐あってか、三日目のお昼には我が実家に到着しました。
レオン様たちはお父様に挨拶をしてから、道中に必死にまとめていた報告書と目録と竜の素材を持って、王城へと向かわれるそうです。
「ただいま戻りました」
「おかえりなさいませ」
屋敷の扉をノックすると、執事が出てきました。
「お父様は?」
「一昨日から執務室にこもられています。お嬢様のお帰りはお伝えしております」
「そう、わかったわ。レオン様、こちらです」
執事には騎士たちを部屋に案内するよう伝え、私とレオン様はお父様の執務室へと向かいました。





