73:経験則に基づいて。
馬車にお肉や諸々の荷物を詰め込んでいる間に、待機してくれていた元騎士たちも撤退の準備をしていました。
焼いたお肉は騎士団本部に戻ってから食べるそうです。
行きは馬車に乗ってきましたが、帰りは馬車には赤竜のお肉がぎっしり。
皆でわりと急ぎめで帰ります。
見習いばかりで構成されている支援部隊は、行きと同様に戦闘部隊からはちょっと遅れ気味。
ただ、途中途中の村などに竜肉を分けながらだったので、どうにか置いて行かれずに済みました。
「――――今日明日はしっかりと休んでくれ。解散!」
「「はいっ」」
騎士団本部には夕方少し手前に到着しました。
戦闘部隊は解散ですが、私たち支援部隊はもうひと仕事あります。
先ずは、騎士団本部の貯蔵庫に竜肉を保管します。
団員全員がお腹いっぱい食べて、三日保つくらいの量です。あまりありすぎても、腐らせてしまうだけですので。
そして、屋敷の貯蔵庫にもそれと同じ程度の量を運び込みましたが、それには理由があります。
先ずは、先程のワイルドな骨付きグリルを竜肉ですること、あとは普段の食事に使うこと。そして、熟成肉を作ること。
ただ、それだけでは大量のお肉は消費できません。なので、ドラゴンジャーキーを作ってみようと思っているのです。
支援部隊も解散し、少しだけサロンで休憩。
「私は取り敢えず眠るが、クラウディアはどうする?」
「そうですね……料理長に指示して明日の朝食を決めてから寝室に向かおうかと」
「ん。わかった」
レオン様はほとんど眠られていなかったので、流石にそろそろ頭が働かなくなってきた、とのことでした。
執務も食事もせず、とにかく眠りたいそうです。
レオン様が眠られるまでお側にいようかと悩みはしたのですが、明日の朝は遠征で得られなかった野菜的な栄養あるものをしっかりと食べていただきたいので、そちらを優先することにしました。
厨房に行くと、料理長が無事を喜んでくれました。それとともに、竜肉も。
明日のお昼からは竜肉でいろんなことをしたいのですが、今の目的はソレではありません。
美味しくて身体にいいものを頼みたいのです。
「ゴロゴロお野菜と竜ハムのサラダにしましょう」
「竜ハムですか……」
作り方は、鶏ハムの作り方と一緒でいいはずです。なんとなく、なーんとなく、いける気がするのです。
「……勘、ですかね?」
「経験則に基づく、勘です!」
料理長に苦笑いされてしまいましたが、竜ハムは作ってもらえそうです。





