69:朝食を作って紛らわせたい。
◇◇◇◇◇
「お義父上は――――」
ふと目を覚ますと、レオン様とゼルファー様が声を落としてお話ししているのが聞こえてきました。
聞いてはいけないと思いつつも、続きが気になってしまいます。レオン様はお父様が何で収入を得ているのか知っているのでしょうか。
「なんというか…………凄いお人なんですよね」
――――ええ?
「クラウディア、詳細は自分で本人に聞きなさい」
レオン様によしよしと頭を撫でられてしまいました。
起きていると気づいていたのですかと聞くと、寝息の仕方が違うからすぐわかると言われてしまいました。
騎士って凄いです。そんなことも分かるのですね。
もう一度おやすみなさいを言い目を瞑りました。
なんとなく、書斎で書き物をしているお父様の姿を思い浮かべながら。
朝日が出る前の、少し肌寒い時間に目が覚めました。
夜中に一度起きた以外はずっと寝ていたようです。
「ん、おはよう」
「おはようございます」
ずっとレオン様の膝枕で寝てしまっていたのかと思いましたが、レオン様が苦笑いしつつ、違うと言われました。
案の定、夜中に何度か魔獣が現れ、その討伐に向かったのだとか。
そして一時間程前に戻られたそうです。
「クラウディアはなかなか起きないからな」
クスクスと笑うレオン様に頬を撫でられました。
朝日はまだ出ていないのに、なんだか眩しいです。
「わた、わたくしっ、朝食の準備に向かいますねっ」
レオン様の膝から飛び起きて、髪を結びながら外の炊き出し場に小走りで向かいました。
「隊長、おはようございます」
「おはよう。交代するわね」
「まだ休まれてて良かったのに」
隊の子たちからそう言われて、ちょっとだけ頬が熱くなってしまいました。
薄暗闇なので見えてないといいのですが。
「いいの。作りたいものがあってね」
戦闘は終わったとはいえ、戦場でお花畑な思考になるわけにはいきません。気を紛らわせるためにも、豪華な朝食を作って忙しくしていたいのです。
卵はまだまだ残っていたので大量のスクランブルエッグを作りました。
隊の一人にはポテトサラダをお願いし、私はドラゴン肉のももブロックに下味つけ。
一キロを六個も用意しましたが、食べ切れるのか、ちょっとだけ不安ではありますが、隊の子たちが絶対に大丈夫だと言うので、信じることにしました。
肉の表面におろしニンニクと塩こしょうを刷り込み、片面五分ほど焼きます。きれいな焼色が付いたら、側面である四面を二分ほど焼いたら、ホイルと布でしっかりと包み、三十分寝かせます。
「さ、どんどん焼くわよ」
「「はいっ」」
レオン様がなんだか眩しくて、キスしたくなった、なんて秘密にしていたいので、ごまかすためにも忙しくしていたいのです。





