68:レオンとゼルファー。
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膝の上でスヤスヤと眠るクラウディアの髪を撫でる。この娘の攻撃力が半端ない問題はどうにもならないのだろうな、と諦めつつ。
「フッ。本当に変わったな」
「私がですか?」
「それ以外に誰がいる」
ゼルファー殿下が仮設の執務机で報告書を書きながら小さな声で話しかけてきた。
元々ここは殿下の仮眠場所なので、執務机が近い。
貸してもらったことに感謝を述べていると、またもやフッと笑われてしまった。どうやら俺は見ただけで分かるくらいに、丸くなったらしい。
腹をそっと撫でていると、違うと言われた。
「いや、わかってますよ」
体型は変わってはいない。たぶん。
ただ、最近の食事は本当に満足感が凄い。
満腹ではなく、満足。満ち足りているのだ。
「心から護りたいと思えるものが出来ると、人は強くなれるのでしょうね」
「んむ」
赤竜との戦いで違和感を覚えた。
研ぎ澄まされているようでいて、凪いでいるようでいて、まるで世界がゆっくりと動いているような感覚だった。
未だにその感覚は残っている。
クラウディアの柔らかな髪を手櫛で研いでいると、もぞりと動いて寝返りを打った。
起こしてしまったかと思ったが、口をもにゅもにゅとさせて微笑んでいたので夢でも見ているのだろう。
「子どもの予定は?」
「……まだです」
クラウディアは欲しいともなんとも言わないので、俺の『まだ二人で過ごしたい』というわがままを優先させてもらっているが。
「フッ。もう一段、跳ねるぞ」
「はい?」
「子どもは……いいぞ」
ニヤリと笑う殿下。
たしか一昨年に御子息が生まれていたが。
「妻がまた妊娠してな。何が何でも世界を平和にしたくなる。それとともに、絶対に死ねない、とな」
なるほど、だからこそ赤竜討伐の支援要請を早めに出したのか。いつもは国境を確実に越えると分かった辺りからしか連絡が来ないが、今回はまだまだラングス国内だった。
「おめでとうございます」
「うむ。今回は本当に助かった」
「いえ、お互い様です」
ボソリボソリと殿下と話を続けた。
国王が国民にひた隠しにしている魔獣の脅威。だが、魔獣の素材は欲しい。
ヴァルネファー軍のみでしか対処できなかった様々な問題は、殿下が手を差し伸べてくださったことで解決できたうえに、状況が好転した。
ラングス帝国の介入によって、国王はヴァルネファー軍に裏切られるのは痛手だと気付いたのか、ある程度の権限を認めた。
こういった国間の支援は俺の一存で決めていいのが、一番助かっている。
「まだ、アレに忠誠が?」
国王は……まぁ、クソだろうな。
表は好々爺。裏は金と権力と欲まみれ。
だが、まあ、国自体は好きだし、クラウディアがいる。
「ん? 枷だったのか?」
「いえ、リーツマン伯爵は……なんというか………………そういう思考や諸々の外側を歩かれている方なので……ええ」
「お前が言葉を濁すとは、いったいどんなヤツだ」
お義父上は――――。
またまた短編投げてます(*ノω・*)テヘ
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