67:オムレツと破顔。
竜のお肉に舌鼓を打ち、ハフーッとひと息ついてから、オムレツをパクリ。
「ふんんむ? んーっ!」
「ん? どうした?」
焼いているときにはわからなかった、まるでシルクのような舌触り。お肉と一緒で口の中で蕩けるのです。
大きいものだから大味だとかいうことはなく、濃厚かつ最高品質と言っていいほどの卵の味がします。
シンプルに塩コショウだけだったことと、竜肉の油を使ったことで相乗効果を生んでいました。
「っ、レオン様!」
「ん?」
「美味しいです!」
「んはっ、ははははっ。よかったな」
レオン様が楽しそうに笑いながら、頭を撫でてくださいました。そして労いの言葉も。それは私が言いたかった言葉でもありました。
巨大な魔獣、しかも竜種などの翼を持った相手との戦いは、本当に命がけです。それは遠くから見ていてもわかりました。
連れてきてくださって、参加させてくださって、本当にありがたかったのです。
レオン様たちがいてくださるから、この国の民たちは安心して生きていられるのです。
「レオン様、ありがとうございます」
「ん」
レオン様が破顔され、そっとお顔を寄せて来られましたが、次の瞬間にハッとされたような表情になり、フィッとそっぽを向かれてしまいました。
キスが来ると思っていたのになぜ? となっていましたが、ここはラングス帝国軍の本部テント。
周りを見渡せば、ニヤニヤとした本部の方々。
――――にゅあぁぁぁ!
完全に、二人だけの空気を作ってしまっていました。
少し離れたところにいたゼルファー様が肩を震わせて笑われていました。
完全にやらかしました。
炊き出しを二回ほどおかわりしたあと、順次仮眠を取り、お肉の番と解体を進めることになりました。
張り切って順番決めに参加しようとしていたのですが、『それは部下の役目だから!』と押し切られる形になり、朝までしっかりと休むようにと、お肉大好きメイツでもある支援部隊の面々に言われてしまいました。
ゼルファー様の勧めもあり、テント奥の敷布のある場所で横にさせてもらえることになったのですが、なぜがレオン様もついてこられました。
「流石に一人にはさせられないからな。ほら、膝に頭を乗せなさい」
どういうわけか、レオン様の膝枕で眠ることに。
レオン様はというと、座ったまま眠るそうです。
赤竜が死んだ今、隠れていた動物や魔獣が出てくるかもしれないので、出撃に備えるために、横にはならないとのことでした。
「あ……、ですよね」
私のせいで、レオン様の行動に制限をかけてしまっているなと、少しだけ後悔をしていましたら、ペチンとおでこを叩かれてしまいました。
「顔に出ているぞ。俺が連れてきたかった。気にするな」
「っ、はい」
レオン様は、どこまでもイケメンです。
優しくて、かっこよくて、強くて。
「しっかり寝ておけ。明日も竜肉で料理三昧だぞ?」
「はい。レオン様」
「ん?」
「おやすみなさい。愛してます」
「――――っ!?」
なんだかテントの中がざわざわとしていますが、色んな不安が吹き飛んだおかげか、ぐっすりと眠ってしまいました。





