64:出てきたものは……。
「「部位」」
今度はレオン様とゼルファー様の声が重なりました。
仲良しですね。と言うと、なぜかお二人とも眉間にシワを寄せてしまわれました。
「これは、竜に一枚しかない『逆鱗』というものだ」
あ、辞典で見ました。
そこに触れると竜が怒り狂うなどの謂れがあるようです。
「他の鱗のように赤くないのですね」
色が違うとだけ書かれていたので、てっきり少しだけ違うのかと思っていました。
まさかこんなにも色が違うとは。
「竜によって色が違うから、細かな色は記載されていなかったんだろうな」
「そうなのですね」
元々、お肉のことばかり気にして調べていたので、見損ねるなどして、気付かなかった可能性もありそうです。
ゼルファー様とレオン様とお話している間にも、支援部隊の面々はしっかりと職務を全うしてくれていました。
レオン様が斬り落としてくださった部位を小分けにし、持ってきていた布とロープで包んだり、炊き出しの準備をしたりと手早く動いてくれていました。
ゼルファー様に再度お礼を言い、隊の皆の下へと向かいました。
「待たせてごめんなさいね」
「「隊長!」」
数人が見て見てと腕を引っ張って来ます。
どうしたのかと思いましたら、竜のお腹から卵が出て来ました。
私の腰辺りまである、燃えるような赤色の卵。
「ゼルファー様、レオン様!」
慌ててお二人をお呼びしました。
卵はどうしたらいいのでしょうか?
「む? 腹の中から出て来たのか?」
「はい」
「どうされますか?」
「ん……新鮮な内に食べてしまえ」
ゼルファー様が神妙な面持ちなので、何かあるのかと思い、レオン様も私も少し緊張したのですが、出た答えは『食べてしまえ』でした。
――――竜の卵を?
どうやら、お腹の中にあったことと、大きさ的に、『食材』の扱いとのことでした。
バカでかい鶏の卵といった認識でいいと言われ、ちょっとだけヨダレが出かけたのは内緒です。
「育てたりはしないのですか?」
「以前、育てて手懐けようとした国が半壊してな……まぁ、処分一択だ」
ならば、存分に卵料理として堪能していいということですね?
新たな食材のおかげで、更にワクワクが止まらなくなりそうです。
赤竜のお肉を仕分けしつつ、炊き出しのメニューが段々と見えてきました。
竜の骨と尻尾のお肉でテールスープ、腕肉のステーキ、竜の卵のオムレツが良さそうです。





