63:どこの部位なのか。
右腕を落としたレオン様が何やら合図をしたかと思うと、同じように左腕も一閃で落としてしまいました。
「まぐれじゃないのですね。ということは皆も――――」
「「出来ませんっ」」
やっぱり、出来ないそうです。
脚、尻尾、頭、次々とレオン様が落としていきます。
赤竜と戦っていた時に何度も感じていた、ズズンとした地響きは、今は違う意味で怖いなと思いました。
「ふぅ。あとは胴体だな」
心臓や肝臓などは生薬になるそうで、ラングス帝国軍が欲しいとのことでした。
「譲ってもいいか?」
「もちろんです!」
確かに美味しい部位ではありますが、薬が優先です。
支援部隊たちと手の空いている戦闘部隊の面々に皮を剥ぐように指示していると、今度は鱗はいるかと確認されました。
「鱗、ですか?」
「ああ。宝石や防具に加工できるので、王族に献上はするが、ある程度は自分たちで使っても良い」
「まぁ! 防具ですか……チェストプレートなどに良さそうですね!」
「…………チェストプレートか」
「ブフッ」
急に後ろから吹き出すような声が聞こえ、振り向くとゼルファー様が肩を震わせていました。
「宝石を贈りたいと、ハッキリ言わないからそうなるんだろう」
「っ! うるさいですよ」
「うはははは! ほんと、お前は変わったな」
ゼルファー様が笑いながら赤竜の頭の方に近付かれ、歯や角の採取などをしていたラングスの騎士に何かを指示されていました。
こちらに戻ってくるゼルファー様の腕には、人の頭程度の平たい円盤のようなものが抱えられていました。
エメラルド色に輝いているのですが、どの部分なのでしょうか?
「ほら、持っていけ」
「よろしいのですか?」
「今回は肉だけでいい、とかアホなことを言いだすやつの妻のためにな」
「「……」」
どうしましょう。
ゼルファー様がちょっと勘違いしている気がします。『お肉だけ』を見ているのは、私なのですが。
どうやらお肉も食べたいが、他の素材は遠慮していると思われていたそうです。
「竜の素材は、宝飾品としてもかなり優秀だからな」
「まぁ! そうなのですね」
「もしや……本気で肉だけを見ていたのか…………?」
「「はい」」
あら、声が重なりましたね。なんて微笑み合っていましたら、ゼルファー様が結婚祝いだから持っていけと苦笑いされながらレオン様に渡していました。
「ありがとうございます」
「ありがとう存じます」
ゼルファー様の懐の深さと優しさで、心がとても温かになりました。
――――ところで、どの部位なのでしょうか?
またまた短編で投げてます。(現実世界恋愛)
3分くらいでサクッと読めまするヽ(=´▽`=)ノ





