55:休憩と食事。
休憩場所に到着し、数人がかりでフォレストボアの解体をはじめました。
鳥を捌ける支援部隊員の数人には、そちらを。手際が良く力の有り余っている隊員にはかまど作りと焚き火の準備を任せました。
鳥肉は野菜と一緒にスープにしましょう。
フォレストボアのお腹を切り裂いていると、まだ捌くことにてなれていない隊員たちが真っ青な顔になっていました。
「確かに、グロテスクでしょう。ですが、私たち人間は、大なり小なり、命を頂いて生きているのです。普段は強制も強要もしませんが、今回は例外です。目を逸らさず、しっかりと見なさい」
「「は、はいっ」」
とても厳しいことを言ってしまいましたが、支援部隊とはいえ今から赤竜退治に参加するのです。今以上に壮絶なものを見てしまうかもしれません。
その時に気絶しては、生命に関わる何かを引き起こしてしまうかもしれません。それは、自分かもしれないし、仲間に対してかもしれない。そんなことは、許しません。
「吐いてもいいです。でも、意識は失わないように!」
「「はいっ!」」
急いで内臓を掻き出し、地面に掘らせた穴に入れます。
普段は何かしらに活用するのですが、今は緊急時。諦めも必要です。
頭部、手足を落し、それも穴へ。
スライスできる部位は全てスライスし、にんにくと生姜のすりおろし、醤油、砂糖、白ワインをまぜで作った液に入れて軽く揉みます。
あとはフライパンで液ごと焼くだけ。
時短ポークジンジャーの出来上がりです。
「皆さーん、出来ましたよー」
「「おおー!」」
思い思いに過ごされていた戦闘部隊の面々が、いそいそと立ち上がり、盛り付けたお皿を取りに来られました。
いい匂いがしていて気になっていたと言っていただき、ホッとしました。
「沢山ありますので、おかわりもしてくださいね」
「はっ、はいぃぃ!」
ひとりひとりに声掛けしつつお渡ししていたのですが、なぜか皆さんビクリとしつつも笑顔で立ち去っていかれます。
先に受け取った方たちからは、美味しいとのお声が聞こえてきて、少しだけピリッとしていた空気が一時的にではあるものの、明るくなりました。
「ん、うまい」
近くで食べていたレオン様も、皆さんのそういった様子を見ながら微笑まれていたので、きっと良い方向の気の抜け方だったのでしょう。
「クラウディアたちも、ちゃんと食べておけよ?」
「はい!」
レオン様の隣に座りポークジンジャーを食べていると、なぜか騎士団の全員がこちらを見てニヤニヤとしていました。
おや?と思いつつレオン様を見ると、レオン様はプイとそっぽを向いています。
――――何が?





