50:寝る前のいちゃいちゃ。
夕食を終え、お風呂にも入り、主寝室のソファでレオン様と二人でダラッと座っています。
「食べすぎた」
「私もです」
二人とも完全脱力な体勢です。
こんな姿を見せてもいいと思えるのって、なんだか不思議な感じですね。
しばらくするとレオン様はさらにダラッとなり、私の膝にそっと頭を乗せて来られました。
お風呂に入り、セットされていたダークアッシュの髪がふわふわと揺れていたので、ついつい触りたくなり、よしよしと撫でていると、レオン様がジッと見つめて来ます。
「どうされました?」
「ん……幸せだなと思ってな」
「ふふっ。私もですよ」
ふわふわの髪の毛に指を通しながら、レオン様の頭を撫でていると、レオン様が気持ちよさそうに目をつぶられました。
気を許してくださっているのだなと思うと、心と体がむずむずとしてきます。
薄くて凛々しい唇から目が離せません。
この気持ちに名前はあるのでしょうか?
「レオン様……」
「ん?」
「キスをしてもいいでしょうか?」
「っ!?」
レオン様が目で追えないレベルの動きで起き上がりました。
そして、気づけばレオン様の膝の上に座り、レオン様を跨いでいます。
いつの間に?
「きゃっ!?」
グイッと腰を引き寄せられ、レオン様の首に抱きつくような体勢になってしまいました。
「ん!」
レオン様が唇を突き出して来ています。あと、眼力が凄まじいです。
間抜けなお顔なのに愛おしいなと思うのは、なぜなのでしょうね?
「ふふっ。あははっ!」
「なぜ笑う」
「あははははは! レオン様、可愛いです!」
こういうのを、『可愛いが過ぎる』というのだとか、見習い騎士の子から借りた小説に書いてありました。
魔物辞典ばかり読んでいると知られて、恋愛小説も読んだほうがいい!と数人に無理やり押し付けられたので、ちらっと読んでいたのですが、思ったよりよい知識を得られました。
どうやら、この国でいちばん有名だとかなんとかの覆面作家さんなのだそうで――――。
「まて。本の貸し借りをしているのか!?」
「いえ。借りているだけですよ」
「いや…………うん。とりあえず、キスをしろ」
「命令!?」
「んぁー、してください?」
「っ、あはははは!」
レオン様がなぜか百面相をするものだから、おかしくておかしくて。ついつい笑ってしまいます。
「はい。…………あの? 目を瞑っていただけますか?」
「い・や・だ!」
物凄くスタッカートを効かせて断られてしまいました。
ちょっと恥ずかしいですが、ジッと瞳を見つめながら唇を触れ合わせると、レオン様の瞳がギラついた猛禽類のような鋭さから、柔らかな草食獣になりました。
「んっ……」
「もう一回」
「はい」
破顔するレオン様におねだりされてしまい、また唇を重ねました。
今日はなんだか抱き合ってキスばかりしています。





