5:レオンは恋をした。
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嫁入りしてきたクラウディア。
リーツマン伯爵と契約し、結婚することになったのだが、伯爵から訳アリの娘だと言われた。
それから、契約の内容はクラウディアにはバレないようにとも。
まぁ、言われたというか、手紙でのやり取りのみだったのだが。
クラウディアの詳細は、直接会って確認してほしいと言葉を濁されていたので、様々なことを想定したし、きちんと覚悟もしていた。
正直、どんな問題がある娘でも構わないとも思っていた。
何かしらの大きな怪我や病気があろうとも。頭がすこぶる弱かろうと、悪女だろうと。
本当に、なんでも良かったんだ。
辺境が力を持ちすぎないようにしたい王侯貴族からの圧力。
王女殿下からの面倒なアプローチ。
社交シーズンに王都に出れば『狩猟民族』と揶揄される。
それなのに、我が家の資産に目をくらませて、娘を差し出そうとしてくる者ばかり。
裏の思惑が透けて見える気持ち悪い笑顔をした貴族たち、断固拒否でゴミを見るような視線を送ってくる若い令嬢たち。
どれもこれもが面倒になっていたころに転がってきた、契約結婚の話だった。
俺は迷いなくそれに飛びついていた。
クラウディアは、期待を裏切るほどに、美しかった。
そして、とにかく予想と違う方向に変だった。
――――面白い。
本気で『狩猟民族』に嫁入りしたいと思い、ここに来たそうだ。騙した父親はいつかシバキ倒してやる!とか息巻いていた。結構に野蛮な娘だった。
この娘となら、楽しく過ごせそうだと思った。
初夜は……思いのほか、昂ぶってしまった。
どこまでも野性的で、肉肉言っているのに、そっち方面は初心。
「……しまったな」
出逢って二日目で妙にハマっている。
ベッドですうすうと柔らかな寝息を立てて眠るクラウディアは、妙に幼く見える。
乱れた前髪を揃えてやると、擽ったそうにして寝返りを打った。
――――かわいい。
愛は、これから育んでいこう。
恋は、いましている気がする。