48:牛タンづくし。
レオン様に抱きしめられながらキスをしていましたら、お腹がドギュルルルとあり得ない鳴き声を出しました。
なぜにこのタイミングで鳴るのでしょうか……。
レオン様にブフッと吹き出されてしまいました。
「クラウディアの腹は本当に、いい音を出すな」
「すみません」
「ん? 可愛くて好きだが?」
キョトンとしたお顔で首を傾げられました。レオン様のその反応のほうが可愛いんですが!?
とりあえず、レオン様はお着替えされるとのことで、私は厨房に戻りました。
「おかえりなさいませ。奥さ…………何かありました? 頬が赤いような?」
「気のせいです!」
「……はぁ」
料理長は怪訝な顔ではあるものの、それ以上は聞いていませんでした。
夕食の出来を確認し、食堂に戻りました。
「今日は牛タンづくしの夕食です!」
「ん。昼に言っていたな」
ニコッと笑ってくださったレオン様に、ニコッと微笑み返して、二人で頬を染めて、二人でまた笑って。
こういった言葉のないコミュニケーションをしていると、心がぽかぽかとしてきます。
それぞれで想い合い、すれ違い、小さな喧嘩、仲直り。こういったことを繰り返しているのって、すごく恋人のようです。
すでに結婚をしてはいますが。
いま、私たちはお互いに恋をしあっているのでしょうね。
「お待たせいたしました」
サラダには薄切りのタンをサッと炙ったものを入れて、シーザーサラダドレッシングをかけています。
「ん? これが牛の舌?」
「はい! 少しコリッとしていて私は好きなのですが、レオン様はいかがですか?」
「美味くてびっくりしている。見た目も全然わからないな。色は少しくすんでいて味が想像できなかったが、さっぱりとしているのに深みのある不思議な味だ」
レオン様がもりもりとサラダを食べています。
これは、幸先の良い始まりですね。
サラダの次は、厚切りステーキです。
いつもはハーフコース程度ですが、今日はサラダ、ステーキ、シチューの三コースにしました。
温めた鉄板の上に乗せられた牛タンステーキが、ジュワジュワと美味しそうな音を立てています。
ニセンチほどの厚切りにし、表面に格子状の切り目を入れています。強火で表面をしっかりと焼き、玉ねぎとレモンとペッパーで作ったステーキソースを掛けています。
「なんだ……これは…………食べる前から口の中がよだれで大変なことになっているんだが!?」
「このソース、いい匂いですよね!」
「レモンの酸味もだが、焼ける匂いが、どの肉の部位とも違う……」
レオン様が牛タンステーキをジッと見ています。
「さぁ、食べましょう?」
カトラリーを持ち上げると、レオン様がコクコクとうなずきながら、慌ててカトラリーを握っていました。
きっと、切ってびっくり、口に入れてびっくりになるはずです!





