47:レオン様が可愛い。
◇◇◇◇◇
夕方と言うには少し早い時間に、レオン様が戻られたと報告がありました。
料理長にあとの作業を任せ、急いで玄関に走ります。
侍女が後ろから何やら言っていますが、とにかく急ぎます。玄関でお出迎えしたいのです。
そして、謝りたいのです。
「っ――――!?」
大急ぎで玄関にたどり着き、レオン様の目の前で急停止しましたら、腰をグイッと抱かれました。そして、間髪入れずにブチュッの濃厚なキスをされてしまいました。
おかげで、お伝えしようと思っていた言葉が脳内から飛んでしまいました。
「クラウディア」
「ふぁい?」
「部屋で話したいが、時間は大丈夫か?」
「え、はい。大丈夫ですが――――」
強引ではないものの、有無を言わせない眼力と力強さでエスコートされてしまい、あれよあれよという間に、レオン様の私室へと誘われてしまいました。
「えっと……?」
レオン様のお部屋の真ん中で、レオン様にぎゅむむむむっと抱きしめられています。
ちょっと苦しくて、ちょっとよく意味がわからなくて、ちょっと嬉しい。そんな気分です。
「クラウディア」
「はい?」
「愛している」
「え、ありがとうございます」
「…………うん」
あら? 抱きしめる力が少し強くなったような?
「こういう聞き方は狡いとわかっているが…………どうしても聞きたい」
「へ?」
「クラウディアは、俺のことを少しは愛しているのだろうか?」
「えっ……その…………はい」
泣きそうなお顔のレオン様を見上げつつ、質問に答えたのですが、言い淀んでしまったせいか、あまり納得はされていないようなお顔です。
眉間にシワが寄っており、なんとなくショボーンとしていらっしゃいます。
「あのっ――――あれ?」
「ん?」
少しはというか、かなり好きなのですが……と言おうとして、そういえば自分から気持ちを伝えたことがなかったような気がしてきました。
そして、今日のお昼からレオン様の反応に妙な焦りが見えている理由は、私がちゃんとお伝えしていないせいなのでは?
レオン様に『愛している』と言われて、本当にホッとしたとともに、嬉しくて仕方ない気持ちになったことを思い出しました。
「レオン様のこと、凄く凄く凄く好きです」
「っ!」
レオン様のお口がもにゅもにゅと波打ち、頬にぽぅっと赤みが差しました。
「レオン様、愛しています」
「っ、ん。俺もだ」
「お昼は……ごめんなさい」
「ん。俺も子どものように拗ねてすまなかった」
やっぱり拗ねていたのですね。
大元は私のせいなのですが、ちょっと可愛いなと思ってしまいました。
ぎゅむむむむっと更に抱きしめられて、この苦しさは嬉しい苦しさだなと感じるとともに、愛しさが溢れ出してきます。
「レオン様」
「ん?」
「もうちょっとだけ、このまま抱きしめててください」
「ぬぐぐぐっ…………それは、尊すぎるぞ」
レオン様が何故か呻り出しました。
良くわかりませんが、なんだか可愛いです。





