42:ドラゴンのお肉。
シュラスコパーティーは折り返し地点。
「んー、コカトリスのお肉は、思ったよりも普通ですね」
「そうだな。少しぱさついた感じもするな」
「牛のお肉は完璧ですね」
噛めば噛むほどに凝縮した旨味が口の中に溢れます。口から鼻へと香ばしさが抜けてゆき、息をするのが惜しいような気にさえなります。ステーキとはまた違った味わいです。
今回焼かれていたものの中では一番好きかもしれません。
「んんっ……はぁぁぁ…………何度食べても美味しいです」
そういえば、牛タンは焼かないのでしょうか?
シュラスコと牛タンは完璧なまでの組み合わせだと思うのですが。
そう言うと、レオン様も料理長もきょとんとしていました。そもそも『牛タン』というのが何なのかわからないようでした。
「牛の、舌?」
「はい」
「舌を、食べるのか?」
「はい!」
レオン様の眉間にぎゅむむむむっとシワが寄りました。
料理長にはサッと視線を逸らされてしまいました。
――――あらぁ?
「もしや、食べられたことがない?」
「ない」
「美味しいのに」
「いや、部位が売られているのは見たことあるのだが…………見た目が…………」
「確かに、ちょっとグロテスクではありますよね」
「あ、あぁ……うん」
レオン様の目と表情が『ちょっとどころじゃないが!?』とハッキリと言っていますが、無視しておきます。
皮を剥ぎスライスしたものなら食べやすいかと思います。
厚切りで焼くのもおすすめですし、シチューにしても美味しいのですが。
食べたことがないのならば……確かにちょっと勇気がいるのかもしれませんね。
「クラウディアは、本当に何でも食べているな」
「そうですかね? 魔獣はこちらで初めて食べましたよ」
「確かに。クラウディアが食べたことないものか…………そういえば、こちらに来た時に竜を気にしていたな?」
「っ! ドラゴンのお肉っ!」
つい、ガタリと立ち上がってしまいました。
レオン様が目を丸くして驚いています。やってしまいました。先程からちょっと引かれ気味のような気がします。
「なるほど……………………………………仕留めるか」
ぼそりとレオン様がそう呟いた瞬間の目は、完全に狩人のそれでした。
この感じは竜種が飛来したら、確実に仕留めそうなのですが、私は同行できるのでしょうか?
おねだりしてみようか、悩ましいです。





