41:マトンは臭い?
サーペントのお肉はさくりとした食感でとても食べやすかったです。シュラスコの中では前菜といった立ち位置な気がしますね。
「私は次は豚をお願いいたします」
「俺は……んー……羊肉にしようかな」
「ぬあぁっ! 羊も食べたいです! 両方ください! 五切れずつ!」
「「ご、五切れ…………」」
なぜか辺りがザワリとしました。
食べ過ぎですかね? でもいつもですし?
「皿からあふれるぞ?」
「……三枚ずつで…………いいです……先ずは!」
「ふふっ。ん、先ずは、な。うん」
レオン様がくすくすと楽しそうに笑っています。その笑顔はとても嬉しいのですが、理由が嬉しくありません。
「先ずは羊肉です」
料理長からスライスした羊肉を受け取りました。
顎をしっかりと使って噛まないといけないくらいのパンチの強さ。そして、羊肉の独特の野性的な匂い。人によっては『臭い』と言われるものですが、私はとても好きです。
「マトンですね。しっかりとした噛み応えで美味しいです」
「臭みは平気か?」
「はい。私、好きなんですよね。この獣臭さといいますか、肉臭さといいますか……噛み締めれば噛みしめるほどに滲み出てくる旨味、美味しくないですか?」
「んー。俺は少し苦手だが、シュラスコは思ったよりも食べやすいというくらいかな」
なるほど。レオン様は匂い強めのものは苦手なようです。ただラム肉のほうはわりと好きなようです。
レオン様とお話しつつ、マトンをがぶりっ。玉ねぎと醤油ベースのソースがとても良く合います。
「このソース、とても美味しいですね」
「ん、初めて食べるな」
「奥様が醤油をとても気に入られてましたので――――」
他の料理に使えないかと試行錯誤していましたら、このソースができたそうです。
玉ねぎをしっかり炒めているので、甘みとコクがとても深くなっています。これは何にでも合いそうな気がしますね。
「豚肉です。こちらはバラの部分になります」
脂身が多めのバラ肉は、沢山食べるとどうしても脂身の部分で胃もたれというか、気分が悪くなりがちです。が、シュラスコのように炭火でしっかりと焼き上げたものは、油がしっかりと落ちており、とても食べやすくなっています。
そんな豚バラに、玉ねぎと醤油のソースを絡めてパクリ。
表面はカリッとしているのに、中はジューシーに仕上がっていました。
豚の脂の甘さと醤油はとても相性が良く、何枚でもぺろりと食べてしまえるのでは? と思えるほどでした。
「んんんーっ! おいひいです!」
「俺にも一枚」
「はいっ!」
レオン様が、お肉の追加を頼むと、料理長が笑顔で返事をしていました。
レオン様、本当に食に興味がなかったらしく、最近は興味津々に食べているので、料理長が本当に嬉しそうです。





