39:髪の長さ。
浴後、侍女を急かしつつ髪を乾かして貰っていました。
「短くしようかしら?」
「――――駄目だ」
「きゃっ!?」
急に男性の声がしてびっくりして振り返ると、レオン様がいました。
浴直後は、すっぴんなうえに髪もわりとボサボサで、バスローブをだらっと肩に掛けているだけですから、流石の私でも羞恥心を覚えてしまいます。
バスローブの胸元をそっとただしていましたら、レオン様がぐいぐいと近付いて来られます。
――――近い近い!
「時間が掛かってもいいから、髪はしっかりと乾かして出てきなさい」
真剣なお顔でそれだけ言うと、颯爽と出ていかれました。
「え…………何だったのでしょうか?」
「あれじゃないですか? 奥様が夜のメニューを聞いて、私たちを急かすと予想されたのでは? もしくは、びしょ濡れで出てくると思ったとかですかね?」
「貴女、本当に言うようになったわね…………」
「奥様の教育の賜物です」
本当に良い侍女を得ました。たぶん。
こういったふうに、しっかりと意見を述べてもらう機会というのは、地位によってどんどんと難しくなってくると、お父様がよく言っていました。
大切にしたい人材ですね。
しっかりと髪を乾かし食堂に向かうと、レオン様が脚を組んで本を読みながら待たれていました。お待たせしたことを謝ると、柔らかく微笑み返されました。
「いや、俺こそさっきはすまなかったな。シュラスコと聞いたクラウディアが暴走しそうな気がして……」
レオン様の野性の勘が凄いです。
暴走はしかけていました。否定できなさ過ぎて認めざるを得ません。
「髪を短く――――」
「似合いそうだが、なしだ」
やはり短い髪というのは貴族には嫌われるものですからね、と思っていましたら、レオン様が妙にソワッとした雰囲気を出されました。ちょっと頬が赤いような?
「…………夜、クラウディアの髪を撫でるのが好きだから、長いままがいい」
「っ!?」
天然のタラシがいます!
恐ろしいほどに、天然です!
頬を染めて照れくさそうに微笑むレオン様の可愛いさといったら……心臓が止まりそうなほどです。
「いつまでも伸ばし続けます!」
「いや、そこまで激しくはいいが……ふっ、はははっ。ん、ありがとう」
何でしょう、こういう会話、とても楽しいですね。
「さ、食事にしようか」
「はいっ!」
――――シュラスコシュラスコ!
えー、またまた短編投稿してます。
『感情を食う悪魔がいて、好物が羞恥や怒りなんだけど、自分が恋をしたことに気が付かず相手の羞恥や怒りを他人が引き出すのを食いながらイライラする話』
というお題をいただき、妄想膨らんだ笛路の暴走で←
スキマ時間に読める程度の長さなので、よかったら読んでみてくらさいヽ(=´▽`=)ノ





