35:魔の食べ物
バターがじわりと焦げていく芳ばしさと、溶け出てきたチーズのなんとも言えない匂いが入り混じり、私の口腔内は大洪水です。
頑張って鼻呼吸を続けています。
両面をしっかりと焼き上げましたら、半分に切ってお皿に移します。
フライパンを軽く拭いて、半熟目玉焼きを二つ焼き上げましたら、それぞれのホットサンドの上に乗せ、瓶に入れて持ってきていたオランデーズソースをかけたら完成。
フォークとナイフで切り分けて、ハフハフしながら食べるのです!
「まさか、屋外で本格的に調理するとは……」
「んむ? ふぁい? んぐ……何か言われました?」
「いや……うん。美味いよ」
「はい!」
程よく焦げたバターとパン、とろけるチーズ、深みのあるハム、ぷるトロの卵、それらを包み込むオランデーズソース。なんという完璧な組み合わせ。
頬が落ちるとはこのことか!と言いたいくらいです。
「ん? 肉は鶏ハムか?」
「ふぁひ! ふぉふぁほりふへふ!」
「………………うん。コカトリスか。美味いな」
コカトリスの胸肉はハムにお願いしていました。味が濃くしっかりとした歯ごたえのあるコカトリスならば、絶対にハムに適していると思っていましたが、やはり最高の味でした。
魔物であるコカトリス。
そのコカトリスを使った料理はまさに『魔の食べ物』です。
鶏ハム作りは本当に面倒なのですが、料理長は「リエーブル・ア・ラ・ロワイヤルに比べたら、全ての料理が楽だと思えますよ」と遠い目をしていました。
新年が明けてから、すこし纏まったお休みをあげたい気分です。
――――あ。
「そういえば、もう暫くすると社交シーズンですが、レオン様のご予定は?」
「そうだな……毎年は陛下に命令されて新年の祝賀会のみ参加していたが、今年はお義父上に挨拶をしに行きたいと思っている」
陛下や王女殿下との因縁や、王都貴族たちとの相性の悪さは、使用人たちからふわりとは聞いていましたが、レオン様本人からハッキリと聞いたことはありませんでした。
この際なので、しっかりと聞いておきたいです。
知らないままで王都に行き、レオン様にご迷惑をおかけしたくはありませんし。
「王女殿下から多大な被害を受けているような話がありましたが、詳しくお聞かせ願えますか?」
「っ、ハッキリと言うな……ん、話さないととは思っていたが……うん…………」
レオン様が食事を終わらせてからにしようと言われたので、急いで二枚目のホットサンドを作り、ハフハフと頬張りました。
「二枚目もガッツリ作るとは…………ふはははっ」
レオン様が良くわからないツボにはまって、焼いている間ずっと笑っていました。
ちょっと嫌な話題を出してしまったかと思いましたが、特に気にされることもなく楽しそうに笑われていたので良かったです。
先日からインフルちゃんで投稿をお休みしていましたが、昨晩から連載開始しております。
またお付き合いよろしくお願いいたしますヽ(=´▽`=)ノ
あ、タイトルいただいた短編も投稿しましたので、よろしければそちらも|彡サッ←





