31:混乱極まれり。
「はぁ…………」
「レオン様?」
主寝室でレオン様と仲睦まじくしたあと、直ぐに眠るのも惜しく思い、なんとなくでお話をしていました。
ピロートークの認識に齟齬があるというお話になり、大きな溜め息を吐かれてしまいました。
「ん……どうにも、君との間にある溝が埋められない気がする」
「え?」
「………………ん」
深刻なお声でそう言われてしまい、ドキリとしました。
レオン様がしばらく口を噤まれたので、ギュッと目を瞑りました。なんだかとても怖くて、続きを聞きたくなかったんです。
「クラウディア――――」
名前を呼ばれても、目を瞑り続けました。
「クラウディア、聞いてくれ」
優しく頭を撫でられました。レオン様の手が頬に滑り、顎に添えられます。聞いてくれと言われたら、流石に無視をしてはいけない気がします。でも聞くのが怖い。だって、レオン様に…………あっ。
ぐるぐると考えていたら、レオン様の唇が私のそれと重なっていました。熱くて、苦しくて、このまま食べられてしまうんじゃ?というくらいに、激しく。
「ん………………はぅ……くるし…………」
「クラウディア」
「っ、ふぁい」
怒らせてしまったのかと思うほどに激しく力任せなキスだったのに、身体に力が入りません。
完全にぼぉっとしてしまっていました。
「愛してる」
「……ぇ」
そんな時に聞こえた言葉で、さらに混乱が極まります。レオン様が言った言葉の意味が、良く分かりませんでした。
「…………ん。嫌われてはないと、思っていたが……迷惑な想いだったか………………ん、すまない」
――――え!?
レオン様がベッドを出ていかれそうになったので、慌てて手首を握りました。
「おわっ!」
急に引き止めたものだから、バランスを崩してドサリと倒れ込まれ、気づけばレオン様に押し倒されたような形になっていました。
見慣れているはずの、レオン様のお顔や身体がキラキラとして見えます。なんですかこれ。
顔が熱いです。私、何かの病気かもしれません。
「ケガは?」
「っ!」
レオン様の声を聞いただけで、心臓が締め付けられるほどに痛いです。
「…………私、病気になりました」
「は!? え? どこかケガしたのか! 直ぐに医者を呼ぶ」
「……やだ…………一人にしないで……」
怖くてポロポロと涙が出ます。
レオン様がとてつもなく慌てていらっしゃいますが、今の私には説明が出来なくて、ただ心臓がとても苦しくて、縋り付いてわんわんと泣いてしまいました。
「っ…………う……」
「落ち着いたか?」
「づ、うぅぅ」
「あぁっ、泣くな。ほら、深呼吸をしなさい」
「ぶぁい…………っ……」
この日、わけも分からず泣きまくり、レオン様が言ってくださった言葉に返事もしないままに泣き疲れて眠ってしまいました。





