28:カラアゲを学ぶ
コカトリスをある程度部位に分け終えたあとは、モモ肉をカラアゲにするために骨から身を剥がします。
料理長にまたもや手慣れすぎている、とかなんとか訝しまれながら、作業を進めました。
「先ずはフォークをまんべんなく刺して、身に小さな穴を開けていきます」
「切り込みじゃなくて?」
「はい。切り込みですと食感が悪くなるそうです」
フォークでブスブスと刺していきます。フォークの先端からコカトリスの肉のプリップリとした弾力が伝わってきます。
この妙な感触、ちょっと楽しいです。
「次に切り分けますが、大きさは五センチ角程度で、小さくしすぎるとジューシーさが損なわれてしまうそうです」
「へぇ、そうなのね」
たしかに、チキンをグリルするときも、小さいものはパサパサになりやすくはあるものね。
皮面を下にし、少し大きめじゃないかしら? と思う程度に切り分けました。料理長いわく、それでいいのだそう。
次に下味。
東の国出身の方から定期的に仕入れているという『醤油』が、唐揚げの下味に役立つそう。
その他には、砂糖、塩、おろしニンニク、おろしショウガ。それとは別に小麦粉とコーンスターチ、なのだそう。
「思ったより、シンプルな調味料ね。その『醤油』以外は」
「カラアゲの凄いところは、ここに好みのスパイスなどを増やしても美味しくなるところなんですよ」
「へぇ! 面白いわね」
料理長は、そこにマヨネーズとブラックペッパーと白ワインを足すのが好きなのだそう。今回は基礎の味付けと、料理長のおすすめの二種類を作ることにしました。
冒険するのなら、基礎をしっかり学んでからが信条なので。
鶏肉に調味料類をしっかりと揉み込みます。手で優しく優しく揉むのが大切なのだそう。
次に小麦粉を振りかけ、さらに良く揉みます。これは、お肉に下味をしっかりと封じ込める役割なのだそう。
最後に、揚げる直前にコーンスターチをまぶすのだそうです。
「直ぐに揚げなくても大丈夫なの?」
「はい。しばらく置いておいた方が味が染みてより美味しくなるのだそうです。ただ、コーンスターチだけは揚げる直前に、だそうです」
「んんんっ! もう、今から楽しみだわ」
お昼にはまだ早いので、揚げるのはオアズケだそうです。
どうせなら、レオン様が戻られる時に合わせて揚げたてを一緒に食べたいですからね。
他の部位で出来る料理をシェフと一緒に考えたり、下準備したりして時間を潰すことにしました。
次話、お昼に!





