27:コカトリスの目玉焼き。
食パンの上にベーコンを敷き、その上にコカトリスの目玉焼きを乗せています。
一口目は白身だけ。ブリッブリとした弾力があるのに、口の中でとろけます。
次にぷっくらと半球に盛り上がった黄身に、がぶりと噛み付きました。
ドロリと濃厚でいて、なんとも言えないほのかな甘みのある黄身が、口の中を満たします。
コカトリス卵は、大きいものの見た目は鶏の卵と一切変わりませんでした。そして、味は格段にコカトリス卵の方が美味しく感じます。
「んん、んんんっ!」
「フッ……美味しかったようだな」
濃厚で甘い黄身とカリカリの塩っぱいベーコン。それが同時に口の中で混ざり合い、幸せな朝食の味になっています。
「はいっ!」
確信しました。
コカトリスの卵は、スクランブルエッグなどにするよりも、シンプルに素材で勝負する目玉焼きの方が向いています。
調味料など一切付けず、ベーコンの塩味のみで十分でした。
玄関でレオン様をお見送りして、素早く厨房に移動します。
コカトリス料理を相談するためです。
個人的には、『カラアゲ』が気になっていますが――――。
「――――できますよ? 東国のチキンフリッターに近いものですよね?」
「っ! そう! え? 出来るの!?」
「はい。以前に他国の使節団をお迎えした際に、東国出身の方がいまして」
「教えて! 作り方、私にも教えてちょうだいっっっ」
シェフの両手をがっしりと握り、ズイッと近付きながらお願いしましたら、「ひゃいっ、もちゅろんです」と真っ赤な顔で頷かれました。
大丈夫? 風邪かしら?
「ち……がいます。とりあえず、エプロンを付けて手洗いをしましょうか」
「ええ、そうね」
コカトリスは羽をむしり、内臓を取り出すところまでは処理し終えていました。
先ずは各部位に分解するそうです。
太腿の付け根から切り落とし、モモ身を。
腕部分を落とし、手羽元と手羽先に。
胸肉、ささみと分解していくのは、鶏とほぼ一緒でした。
「…………手際がいいですね」
「一番最初に、捌いたのは鶏でしたもの」
「ちなみに、おいくつの頃で?」
「ええっと……十、だったかしらねぇ?」
たしかお父様が家にいない日を狙って、我が家の料理長を軽く脅しつつ教えてもらったのよね。
んふふ、今日は懐かしいことを良く思い出す日ですわね。





