25:涙目のレオン様。
一瞬涙目のように見えたレオン様。
瞳は既に乾いています。でも、唇は尖ったままですね。
お顔をチラチラ覗いているのですが、彼はツンと前を向いたまま。妙にソワソワしてしまいます。
「レオン様?」
「…………なんだ?」
とっても低い声。
本当なら怖がらないといけないのでしょうが、唇を尖らせたままのレオン様は、ちっとも怖くありません。心臓の脈動が少しだけ速くなっていますが、これはきっとトキメキのほう。
「レオン様」
レオン様の前に立ちふさがり、ジッとお顔を見つめました。彼はビクリと肩を揺らしつつも立ち止まってくださいます。
基本的に凄く優しい人なのですよね。
一歩二歩と近づき、少しだけ背伸び。
ちゆ、と重なる唇。
それは柔らかくて一瞬の触れ合い。
「っ――――!?」
「ふふっ。好きです」
初めて自分から口付けをしました。なんというか、妙に勇気のいる行動でしたのね。物凄く頬が熱いです。
ふとレオン様を見ると、顔は言わずもがな耳まで真っ赤にされていました。
「君は…………………………本当に……人を惑わすな……」
レオン様の右手がこちらに向かってスッと伸びてきました。
その手が首の後ろにあてがわれると、レオン様のほうにクイッと引かれました。そして、耳元に顔を寄せらると、耳殻にヌルりとした感触。
「ひゃんっ!?」
「今は我慢するが、これだけ煽ったんだ。夜は覚悟しておきなさい」
「ひゃい……」
――――あら? あららら?
好きだなぁと思った気持ちを表明しただけなのですが、またもや煽り判定をくらってしまいました。レオン様の煽り判定の基準がわからないです。
気も漫ろで下山し、馬を走らせました。
気性穏やかな白馬のアレクは、指示があまりなくともしっかりと走ってくれます。おかげで落馬などもすることなく無事に屋敷に戻れました。
「アレク…………ありがとう。貴方いい子ね」
鼻筋をスリスリと撫でると、アレクが嬉しそうに目を細めているのがわかります。癒やされますね。
狩ったコカトリスはレオン様が厨房に持って行ってくださるとのことだったので、おまかせしました。
ファイアーラットは騎士団で処理するそうです。特に採れる素材などはなく、ただ焼却処分とのことでした。
――――さて。
いつまでもアレクを撫でて現実逃避していたいですが、着替えねばなりませんね。
お腹も空きましたし。
朝食をしっかり食べて、夜のために体力補強しておきましょう。





