24:射手としてのクラウディア
なんやかんやで、コカトリスを六羽ゲットしました。
ホクホクです。
レオン様と楽しく狩りができたこともですが、帰ったらコカトリスの丸焼き……いえ、フワサクのフリッター……あ、スパイシーなバッファローチキンも…………東の国にあるというカラアゲはレシピがまだ解明されていないのですよね…………あぁ、悩ましいです。
血抜きしたコカトリス三羽を担いでルンルンと下山しようとしていましたら、レオン様にドンと押し退けられました。
「クラウディア!」
「キャッ」
ザシュッと何かを切り裂く音と、舞う血飛沫。
レオン様の足元には真っ赤な被毛の野うさぎくらいある生物……ファイアーラット?
そっとコカトリスを下ろし、弓を構えました。
「怪我はない、なっ――――?」
心配そうにこちらを振り返ったレオン様。そんな彼の頬スレスレを、私の放った矢が掠めていきます。髪の毛にちょこっと当たってしまったかも?
「――――んで、は?」
「はい?」
レオン様が何かを言おうとした瞬間に、ピギュッとした断末魔が聞こえました。チラッと赤いものが見えたので射ましたが、正解だったようです。
矢が飛んでいった方を振り向いたレオン様が、キョトンとした顔で私を見つめてきます。
「ファイアーラット?」
「はい」
「もう一匹いた?」
「ですね」
「ドコ?」
「チラッと見えました」
「ん」
何故かカタコトですが、どうされたのでしょうか?
もしや!?
「レオン様に矢が当たってしまいましたか!? すすすすみません!」
「いや、当たってない………………クラウディアは熟練の射手のようだが……いつから弓を使っているんだ?」
――――いつから?
ええと、いつからだったでしょうか?
猪ハンバーグを食べたのが七歳の秋の終わりで、鹿のローストを食べたのがその翌月でしたね。
たしか、その後の春の誕生日に、お父様を脅しまくって弓を買って貰いました。
「うふふ、懐かしいです。八歳の時に誕生日プレゼントとして頂いてから随分と経ちました」
「プレゼントで弓? 八歳? 十二年……なるほど」
レオン様が何かを納得されています。
そして、二人で討伐したファイアーラットの脚にロープを結びつけつつ、ちらりと私を見ました。
「妙に腕が逞しいし、腹筋も割れているな……と思っていたが、なるほど」
――――逞しい!?
「レオン様っ!」
「っ……」
久しぶりに大きな声を出してしまいました。
まだ狩り場にいますのに。
「淑女に『逞しい』などといった言葉を使ってはいけません!」
「ぅ、あ、すまない――――」
「私は嬉しいですが!」
「………………………………嬉しいのかよ……」
レオン様が何故かガクリと両肩を落として、ファイアーラットを引き摺りながら歩き始めました。
慌てて追いかけましたら、レオン様は唇を尖らせ何故かちょっとだけ涙目です。
目にゴミでも入ったのでしょうか?





