23:コカトリスと断末魔。
草陰からニョロニョロ、少し太めの蛇が舌をシュルルっと出し入れしながら、ニョロニョロ。蛇は普通、地を這っていますが、この蛇は三十センチほどの高さから顔を出しニョロニョロ。
しかも草陰に隠れている方の胴体が上下に動いているようで頭は少し振り回され気味です。
完全にコカトリスですね。
コカトリスは、鳥側と蛇側のそれぞれが個別で思考回路を持っていると本に書かれていましたし、レオン様もそう仰っていましたが、わりと蛇側が損してますね?
とてもとても小さな声でレオン様に呼び止められました。レオン様がゆっくりと剣を抜かれます。
昨晩、話し合いました。
コカトリスの場合は、先ずレオン様が近づき蛇の頭を落とす、同時にコカトリスの頭部もしくは胸部を私が射抜く。
蛇側を攻撃されると、コカトリスというかほぼ鶏?は勢いよく逃げるそうです。
では鶏側の頭を落とせばいいのでは? と思うでしょうが、そうすると蛇側の毒が体全体に巡ってしまうのだとか。そしてコカトリスというか鶏の胴体を蛇側が操作できるようにはなるのだとか、ただ動きは緩慢なのだそう。
討伐は格段に簡単になるそうですが、食べられません。
大切なので2回言いましょう。
食べられないのです!!
なんという損失、なんという冒涜!
レオン様がコカトリスに向かってタタタと走り出します。
私は矢を番え、弦をギリリと引き、待ちます。
レオン様の剣が下段に構えられました。斬り上げて蛇の首を落とすようです。
レオン様の身体がゆらりと動きました。
――――いま!
放たれた矢が空気を切り裂きながらレオン様の横を通り過ぎ、草陰の中に吸い込まれて行きました。
同時にグギョェェェェと謎の雄叫び。
……まさかレオン様に当たってませんよね?
「ん。完璧だな」
――――ホッ。レオン様には当たってませんでした。
「出来そうだとは思ったが、草むらに隠れている胴体の場所を把握できるのだな」
それは勿論、図鑑から報告書、解体調理の本までしっかりと読み込みましたからね!
「…………あと、私は怪我してもあのような断末魔の叫びはしない」
レオン様が唇を尖らせてそう訴えてこられました。
ちょっといじけてますね? 可愛いですが、一応謝っておきましょう。
その後も順調にコカトリスを発見しては、二人協力しあって仕留めていきました。
独りで狩りをしていた頃にはなかった連携動作、視線や指差しのみでの会話、全てが楽しくて仕方がありません。
もっと、レオン様と一緒にいたい、そう思うようになりました。





