20:レオン、ちょっと逃げる
✾ ✾ ✾ ✾ ✾
「う……デザート………………食べ……たかった………………うぅっ……狩り…………ふぁ……ラット…………こかとり……食べ……」
朝方、隣で寝ていたクラウディアがうなされ始めた。顔が苦々しいものになり、ボソボソと何かを呟いている。
デザート食べたかったのか……すまないことをしたな。
狩りか。結局、あのあとは一回しか一緒に行けなかったな。
「こし…………いた……い…………」
「ク……クラウディア?」
「うぅぅ…………れおん……さまが……………………ぎゅうにく…………」
腰は…………その……すまない、慣れてくれ。
俺が牛肉!? いや、たぶん何か話の流れがあるのだろう。
「クラウディア?」
「…………んんぅ…………もちょ…………ねたい……」
まだ寝たいと言うし、そうさせてやりたいとも思っていたので、使用人たちには起きるまでそっとしておくよう伝えた。
屋敷を出る直前、もう一度クラウディアの寝顔を見てから騎士団の建物に向かった。
団長室に入ると、副団長が驚いた顔をしてこっちを見ている。何か付いているのだろうか? ヒゲはちゃんと剃ったが?
「新妻とイチャコラしたいから、しばらくは遅めの出勤にすると言ってなかったか?」
「ん。その…………ベッドで疲れ果てて寝ているから、そっとしておこうかと」
「……」
幼い頃から顔見知りでもある副団長――ケヴィンが本気で引いた顔をした。「本気でありえない。我慢しろよ」と言われたが、我慢はしているんだ。ただ、こう……クラウディアの煽りは、全ての思考回路を放棄させる強さがある。
「お前がべた惚れしているのは理解した」
「……こんなことになるとは思っていなかったんだよ」
「だろうな。俺もだよ」
ケヴィンにフッと鼻で笑われてしまった。
「姫様が裏から手を回していたせいで、恋人も婚約者も出来ず、そのまま独り身で過ごすのかと思っていたが……どうやって見つけてきたんだ?」
ケヴィンに契約結婚したとは話したが、どういう経緯かまでは話していなかった。話してもいいかとは思うが、クラウディアの人となりを知ってから契約の内容を明かしたいとも思う。
それは何故か。
それは、きっと、クラウディアのことを好きになってしまったから。
伯爵とやり取りする中で、伯爵のことも気に入ってしまっているから…………奇妙な人物としてだが。





