2:訓練。
なんだかんだと、辺境伯との結婚式も初夜も無事に終わりました。たぶん。
派手な結婚式は断固拒否でしたので、敷地内にある教会でレオン様と彼の側近たちのみで行いました。概ね元々の予定通りです。
初夜は……まぁ、翌日の夕方までベッドから起き上がれなくなるとは思いも寄りませんでしたが、割愛します。
「――――本当に、その格好で訓練についてくるのか?」
「もちろんですわ!」
「…………好きにしなさい」
上半身を仰け反らせるように胸を張り、腰に手を当てて答えると、レオン様は大きな溜息とともに、同行を認めてくださいました。
ここ辺境は隣国との境目がとても大きな山になっており、その山には獰猛な野生動物や、都会では見ることのない伝説のような生き物――いわゆる魔獣などです――が普通にいるのだそう。
辺境伯の持つ私設騎士団は、それらの討伐任務を請け負っています。
そして、辺境伯自らもその討伐に参加していること、野営地などでは討伐した生き物たちを食していることから『狩猟民族』という蔑称が囁かれているのだとか。
――――野営地で食べるなど、当たり前ですのにね?
今回、騎士団でも見習いの方々が日帰りで討伐任務に当たるとのことで、同行をお願いいたしました。
辺境伯家の執事は、結婚してまだ三日目ですが……と苦々しい顔をしていますが、レオン様が是と言ったので諦めた模様です。
いつもの狩猟スタイルである狩猟服と弓、ショートソードを身に着け、意気揚々と隊列の先頭にいるレオン様の隣を歩きました。
いえね? 本当は最後尾で良いと言ったのですが、辺境伯夫人が殿は駄目だと。何が何でもお護りします、と見習い騎士たちに言われたのですが、見習い騎士たちは少年と呼べる程度の年齢。
…………普通に私の方が引率感があるのですが?
辺境伯の屋敷を出て二時間。
途中一度の休憩を挟み、国境である山の麓に到着しました。
見習い騎士たちは……なんだか既にヘロヘロになっていますが、大丈夫でしょうか?
「……クラウディアの方が体力があるのか」
レオン様が怪訝な顔でこちらを見つめて来られました。その視線とセリフはどういう意味なのでしょうか?
「こちらの話だ。気にするな」
「はぁ」
麓で一度休憩をしたあと、レオン様が見習い騎士たちに何やら指示を出していました。
レオン様と同じく引率としてついてきていた老齢の騎士様と若手の騎士様いわく、今からは山の麓近くにある狩猟場で、各自狩りをするのだとか。ここには小型程度の野生動物しかいないそうです。
「では、獲物を三頭得るまでは戻ってくるなよ! 散開!」
「「ハッ!」」
レオン様が一際大きな声で狩猟開始の合図を出されました。一番に戻ったものには、報酬があるそうです。これに乗り遅れてはいけないと慌てて駆け出します。
「あっ――――? ちょ、夫人――――」
後ろから呼ばれたような気もしますが、まぁ、追いかけて来ないので大したことではないのでしょう。
場が荒らされる前に三頭狩らねば!